愛すること、愛されること。(13)












快楽に夢中になり吐く息が途切れる。それをどうにか整えてエドワードの右肩に額を合わせた。のしかかった薄い胸も忙しなく上下している。
熱を帯びた肌はほんのり薄桃色に染まる。それと同様に忌々しい傷跡も紅をさしたように赤く色づいていた。
ロイは性欲を吐き出した余韻を彼の身体と自分に残しながら、虚ろな視線を漂わせているエドワードに語りかけた。
――エド、海外出張でこの家を数週間空ける…」
短い息を忙しなく吐く彼から返事はない。否、返す事ができなかった。
寝室に熱い吐息が衣擦れの音と混じっている。やっと一度目の精を身の内に吐き出された瞬間だった。まだ、彼の男根はエドワードの蜜壷に挿入されたままだ。
さすがに精を吐き出した後、形は力を失っていた。だが、蜜壷はその存在を記憶している。
「ハァ、ハァ…あっん」
辛うじて身体に掛かる長襦袢の裾が足に絡んでいた。ロイは邪魔くさそうに白い太腿に絡みつく布地を払う。
大きく開かれた内股が視覚に入る。たっぷりと身の内に吐き出され濡れた秘所から淫汁が溢れ出して美しい模様を描く長襦袢に染みを作っていた。実に淫らな情景だ。
エドワードは冷たい空気を肌に感じた。その箇所に視線を感じ、はっと羞恥心を掻きたてられた。
「ヤダッ…! 見るな!」
「エド、私が留守の間、絶対にこの身体を他人に許してはいけないよ」
赤く腫れあがりながらもしっかり男根を咥え込む秘所。そこをぬるぬると彼の無骨で長い指が名残惜しそうに触れる。
「アッ、そんなこと誰がさせるかよ…。触んな」
「それじゃ、私を忘れないように」
「ヤッ、あぅんっ
――
声にならない悲鳴が彼の口唇から迸った。
ロイは器用に男根を挿入したまま彼の身体をぐっと起こした。必然的にエドワードの身体とロイの身体は抱きついた状態のまま結合している。
だが、エドワードの身体は快楽に酔い痴れ弛緩していた。ロイが支えていないとベッドにそのまま倒れてしまいそうだ。
「エド、そんなに良かったのかね」
体内にある男根が存在を示し始める。それを微弱に感じながら快楽に身を任せる。吐く息が、また切なく淫らな声色に変わっていく。
返事は返ってこない。その代わり、逞しい背におずおずと両腕で掴り首を小さくコクコクと下げた。
ロイは彼の身体を片腕で抱いた。そして背後のクッションに逞しい背を凭れ掛けた。エドワードは自らの尻を突き出して彼を跨る形になってしまう。
そして、徐々に頭角を現すロイの欲情を身の内に感じた。
「私を忘れないように、私の形を思い出してごらん。そう、ゆっくりと」
「あぅん…ヤダッ、そんな恥ずかしい。なっ、動いて」
「ダメだよ。もっと大きくしてくれないと」
言われるままにロイの熱く隆々とした一物を思い出そうとする。ロイは身体を彼に密接したまま腰を使おうとしない。
代わりに汗ばむ彼の恍惚とした額、頬、口唇に優しくキスをしていく。羽のように軽く啄ばむようなキスだ。目尻に涙を溜めながら強請るが許してくれない。ゆっくりと秘所は彼の柔らかい男根に吸い付き襞を静かに使って収縮させていく。
「ああ
――いいよ。忘れてはダメだよ! 私の存在を…愛しているから」
「んっ、はぁ、はぁ。うっん…」
半開きな口唇にそっと自らの口唇を重ねる。密着した胸の隙間からツンと立ち上がり桜色の乳首を指の腹を使って捏ねくる。


たった数週間、エドワードに会えない事が堪らなく辛かったのだ。本当は彼を一緒にこの長旅に同行させたかったのだが、周囲は厳しかった。
その上厄介な事にロイの婚約者という女性が勝手に付いてくるという始末。まったく寝耳に水だ。ロイ自身その女性に会ったのは、ほんの数回というのに。
実に不本意だ。
口さがない使用人達が面白おかしくエドワードの耳に入れたに違いない。今日、この部屋に呼ばれた彼の表情は沈痛なものだった。それを無理に明るく振舞う彼は悲哀に満ちていた。


肩に掛かっているだけのおざなりな紅色の長襦袢に金色の髪が乱れる。扇情的な情景に視覚まで欲情してしまう。
収縮を繰り返すうちにその部分は濡れていく。それと同時に淫らな水音を奏でる。力を徐々に取り戻す男根に食いつき、粘りつく肉のさざめきが二人を快感に誘っていった。
「あっ、あっ…ねぇ、もうお願いだから…」
固く閉じていた瞳が開けられ、ぼんやりとロイの顔を瞳に映し出している。その瞳は月光の光のようだ。物憂いげに開かれた桜色に濡れた口唇。
股間を大きく広げ、成長した強靭な男根を咥え、その隙間から白濁した雫を滴らせていた。ともすれば、一気に欲望を吐き出しそうな名器にロイは喉を鳴らす。じっくり時間を掛けてこの快楽を味わいたかったのだ。暫くの間、会えないのだから。


そう思う反面、彼の心にはある憤りが芽生えていた。
ぐっと欲情を抑えながらロイは彼を困らせた。
それは嫉妬心と自分の抗えないジレンマからだ。


「エド、私のいない合間にハボックになびいてはいけないよ」
ゆっくり腰を使いながら焦らす。スプリングの反動をうまく使って彼は微妙な揺れを彼の蜜壷に与える。その振動を利用して彼の透明な雫をたらたらと垂らす屹立したものを揉みしごく。
たちまち溢れ出す快感の渦にエドワードの口が小さな悲鳴を上げて喘ぎ出す。
「あんっんっ、そんなこと…ない」
――そうかね。最近とくに仲が良いみたいだね。ダメだよ」
ロイのしなやかな胸に頬を当て、首は左右に振られた。ロイの身体を跨って大きく開いた両脚はピリピリと引き攣っていた。
彼の逞しい男根は蜜壷を出たり入ったりぐちゅぐちゅと淫ら水音を出している。中を男根で擦られる度、エドワードの口唇から堪らず喘ぎ声が漏れていた。
弓なりに反る背中から両手ですすっと腰まで撫で下りていく。それから二つに割れた柔らかい尻をぐっと左右に開く。おかげで秘所は蹂躪に男根を奥にめり込ませていく。
「いっ、あぅぅんっ…」
「エドワード、もっと私を求めてくれ。君の為ならば私は何でもしよう。何でも与えてやる! もっと欲してくれ」
その想いを告げるようにロイの腰つきは強靭に蜜壷を侵し続けた。
そんな彼の想いもエドワードには伝わらない。彼は瞳に水溜りを作りながら左右に首を振った。
「ん、んっ…。何もいらねぇ! ただ
――
「ただ!? 何だね」
自ら快感を貪るように腰をくねらせる失態を恥らいつつ、彼はロイの右肩に額を摺り合わせた。幾人の男達がこの身体を好いように弄んだ。だが、彼の身体も心もちっとも擦れていない。ロイにいつまでも初夜のような感覚を与えていた。
「あっ、はぁん
――ずっとずっと一緒にいたいだけ。他愛のない話をして。沢山の本を一緒に読んで……その本の話をするんだ。た、だぁ…それだけオレが望むのは…」
エドワードの願い。
涙混じりに語られた彼の素朴な願いだ。
ロイはいたたまれなくなってしまう。
純粋な少年の願望。
その望みは叶えられる事だ。
ロイは感慨に浸りながら、その身体を愛しく抱きしめエドワードを窮みへと解放させた。もちろんロイ自身の熱い想いと精も彼の身体に解き放った。


*               *              *


マスタング家の玄関ホール。
ここだけでも優に一部屋ある広さだ。大きな吹き抜けの天井から陽射しを燦々とそそぎ、窓の外から蒼穹の空が見下ろしている。豪華なシャンデリアの煌めき。美しいデザインのレリーフ装飾。壁面には高級絵画がうまく配置されていた。
この屋敷のセンスをまずは玄関ホールで楽しませた。
本日はその空間にピリッと張り詰める空気が漂っていた。
いつも定時にこの場に屋敷の使用人達が勢ぞろいする。それは当主を見送る為。定例のことだ。だが、今日は空気が違う。
暫くの間、当主が屋敷を留守にするのだ。その留守を預かる使用人達は、気を引き締めて当主が出掛ける姿を見送るのだ。
「旦那様、お体に気をつけて下さいませ。遠い海外では私達、使用人はおりませんよ」
「ああ
――わかっているよ。毎度のことだ。そんなに心配してくれるな」
「婚約者のメアリー様に身の回りのお世話を頼んでおりますので…」
アームストロング夫人が述べた言葉にピクッと反応した。冷酷な視線を彼女に向けるがとうの本人は、そ知らぬ顔。
婚約者のメアリーという女性。彼女はアームストロング夫人の遠縁にあたる人物らしい。
今迄、数多の女性を相手にしてきたロイに今度こそと。この屋敷の女主人に相応しい気品と才覚を持ちえた清楚な女性をあつらえた。
ロイが今迄付き合ってきた女性達とはまるで正反対の女性らしい。


使用人達は壁面に二列で並んでいる。皆一様に頭を軽く低頭していた。その中に数時間前までロイと熱い閨を過ごしていたエドワードの姿が最後尾にいた。
なるべく目立たぬようにひっそりと気配を消して。
その隣で使用人の一人、ロゼが小声でエドワードに耳打ちする。
「ねぇ、そのメアリー様と一緒に出発するんだって」
―――
「あ、来たわよ。あの女よ! まぁ…今度は清楚な方ねぇ」
コソコソと独り言のように語られる言葉などエドワードの耳に入っていない。ただ、胸が苦しくてぎゅっと締め付けられそうだった。
切ない。
こんな感情は不必要だ。
吐き気がする。
「ロイ様、さぁ行きましょう。私、この旅行を楽しみにしていましたのよ」
真っ白なパラソルをくるくると回しながら彼女はこの屋敷の玄関ホールに入ってきた。それから、ロイの腕を絡め取った。
清楚という噂だが、実のところ微妙である。
嫌悪感丸出しのロイの表情。
「メアリー嬢、遊びではないのですから、そういう態度は遠慮してもらいたい!」
厳しい言動にその場にいた全ての人間の背筋がぴんっと伸びた。
アームストロング夫人に、はっきりと意向を告げる。先程までの温和な会話ではない。その様は蛇とマングースの戦いのようだ。
「私は婚約者と認めた訳ではない! その事を十分理解してもらいたい」
「わかっております。ですが、今回の仕事に随行させて頂きます。メアリー様、旦那様の事宜しくお願い致しますね」
その場の空気を換えるように夫人がにっこりと蛇のような笑顔を見せた。が、メアリーにはかえって恐怖心を植えつけるようなものだった。
――えっ、ええ…」
間に挟まれ彼女の声は縮み、上擦っていた。
それに構うことなく夫人は己の仕事を淡々とこなしていく。
「旦那様、行ってらっしゃいませ」
夫人が号令を掛けるように声を上げ、深々と頭を下げた。
それに続くように使用人達も同時に「旦那様、行ってらっしゃいませ」と唱和するのであった。
まだ納得のいかない事柄が多く、ロイの表情は固く強張っていた。
しかし、ごねる訳にもいかない。仕方なく横柄な態度で玄関ホールから外へ歩き出した。その後をきまり悪そうな表情でハボックは大きなトランクを持ってついて行く。
エドワードの金色の頭がロイの目に入った。思わず、彼の手を強引に握って連れ出したい衝動に駆られる。にこにこと横を歩いている女より彼の方が多方面にわたって必要不可欠な人物なのに。世の中どうしてこう旨くいかないのだ、とロイは舌打ちしてしまう。
万感を胸に屋敷を後にした。
その後姿をエドワードは遣り切れない辛さをぎゅっと胸元を掴んで耐えていた。




続く

この話の伏線で番外編を書いてます。
荒れる旦那様です! 嫉妬にね。誰に…勿論運転手/笑。にだよ。


桜 美由紀 2006/5/16