愛すること、愛されること。(29)
「最近、身体の調子も良いようだね」
「――ぁぅ、ん…」
エドワードを背後から抱きしめて、長襦袢を結んでいる腰紐に手を掛けてスルスルと解いている左手。既に待ちきれずに右手は裾を肌蹴させて、白い内股に侵入してしっとりと濡れる秘所を優しく嬲っていた。
「良かった。こうして君の身体を抱くことも出来るしね」
腰紐が解かれた長襦袢はスルリと肩から落ちていき、恍惚と艶を見せ始めた肌を晒した。そこへチュッと音を鳴らしながらロイは啄ばんでいる。右手の指はぬめる淫口を出入りしている。その淫らに水音を奏でる場所はその指に吸い付くように絡んでいた。
「ぅん、ぁ――ロイ、そこぉ……」
大きく広げられた両太腿からサラリと肌触りの良い長襦袢が滑り落ちた。内生地が朱色に染められていて、寝具の白さと対照的でロイの目を愉しませてくれる。左手が少し膨らみを持った胸を柔らかく揉んで、エドワードに新しい感度を教える。ピンク色に色付いた芽を舌先で転がしてやると、身体を痺れさせてのたうち回るエドワードは妖艶で美しい。
ふたなりの身体は妊娠を切っ掛けに少しずつ、女体化していた。その証が赤子に与えるための母乳を出す乳房だ。そこは胎児の成長と一緒にゆっくりと膨らんでいた。そんな身体を怪異とは、ロイはちっとも思わなかった。生命の神秘とばかりにエドワードの身体を今迄以上に優しく抱きしめ、そして抱いた。
くちゅくちゅと二本の指を抽出される場所からは溢れんばかりの愛液が滴り落ちていた。妊娠すると女の蜜壷はよく濡れると遊び仲間から聴いたことがあるが、まさにその通りだ。
それ以前にエドワードの蜜壷は名器と言えるのだが――。
妊娠初期と流産の危機があった為にロイとエドワードは繋がることを許されなかったが、やっと主治医のヒューズから許可が下りた。それからというものロイはエドワードの身体とお腹の子供に負担にならない程度に性交に溺れた。
お互いの心を通わせてからの性交は初夜のように燃え、格別の思いで二人は身体を繋ぎ合わせたのだ。
「エド、ちゃんとこっちも可愛がってあげるよ」
「…ぁぅん」
ピンク色に腫れ上がった可愛らしい男根に女性器から漏れた愛液を補って、扱いていけばエドワードから歓喜の声がひっきりなしに漏れた。
「ヒッィ…ぅん、ぁ…イク」
感度が鋭いその場所はあっけなくロイの手の中にキラキラと輝く透明な液を吐き出した。胸を忙しく上下し、だらりと気だるく首を傾けたエドワードの身体をロイはゆっくりとクッションを敷き詰めたベッドヘッドに預けた。エドワードが恍惚とした表情でぼんやりと濡れた琥珀色の瞳を開けると、ロイが物欲しそうな眼を向けてエドワードの身体に跨り、膝立ちになっていた。それをぺろりと口唇を赤い舌で舐め、凄艶な瞳で見上げると舞い降りてくるようにロイがその濡れた口唇を貪ってきた。
「ん、はぁ…ぁッ、旦那様――してやるよ…」
口唇を外すのももどかしいが、荒い吐息を弾ませてロイの意図していることをエドワードが上目遣いで声に出した。それをロイは照れくさそうに笑うと、欲情し天井を向いている男根をエドワードの顔に近づけた。エドワードは気だるそうに両腕をロイの腰に回して、男の肌を味わうように撫でた。それから聳え立つ男根に顔を近づけ、ゆっくりと舌で下から上へと巧みに舐め上げた。脊髄がゾッとするほど過敏にロイは感度を上げられた。何度も焦らすようにエドワードは丹念に舐め干してから、そっと左手で張り詰めた男根を支えながら亀頭を口に含んだ。強大な一物に苦しさを感じたが、それでも愛する男のモノを丁寧に舌と口唇を遣って官能を盛り上げた。逞しい腰を緩やかに動かして、エドワードの口淫を味わうロイは彼の小さな金色の髪に指先を絡め、更に引き寄せた。
「――ぅ、ん…エドワード、上手だね。凄く良いよ」
返事の代わりにエドワードはチュッと音を立てて一番感じる場所に接吻した。それだけで、昇天しそうな勢いだ。
さすが、エドワードは男の感じる部分を心得ていた。それは知らぬ間に性的調教をされた体技であるが、今はそれを愛している男の為だけに奉仕したいと思っている。
これ以上、エドワードの口淫に酔うと後が持たない。ロイは苦笑いしながら、エドワードの淫らに舐めずる唇から張り詰めた男根を引き抜いた。
「エド、今度はこっちの口を味合わせてくれ…」
そういうと、先程まで丹念に濡らしていた場所を再び犯し始めた。待ち侘びていたように、秘所は簡単にぬめる内部の襞がピクピクと震えている。
「…エド、挿入しても良いかね?」
単刀直入に訊けば、嫌々と首を振りながらもエドワードの奥底に潜む淫らな性感はグズグスと痺れながら奥を満たしてくれるモノを待っていた。
内股を恥ずかしげに擦り合わせるエドワードにふわりと笑みを見せて、内股を惜し気もなく大きく自分にしっかりと見えるように開かせた。
「――ぁ、あ…ヤダぁ、そんな見るな」
「いつ見ても、エドの此処は淡いピンク色をして可愛いよ」
チュッと態と音を立て、吸い付くように興奮し充血した秘所に接吻すると、エドワードは腰を揺らした。
少し膨らみを帯びた下腹部に負担にならないように、身体を横に寝かしたエドワードの背後から、同じくロイも横向きになった。そして、エドワードの醜い傷痕が残る左太腿をすくい取って上げさせ、ゆっくりと張り詰めた男根を濡れた秘所に挿入した。右手はまだ幼い胸を揉み扱き、その弾力性を味わった。
「ぁ あ、ゆっくり挿れてぇ、お願いだ…からッ――」
「大丈夫だよ。エドワード、身体の力を抜いて感覚に身を任せなさい」
「ぅぁ、んぅ、ぁ あぁ……」
高級なベッドのスプリングが律動を伝えて、揺れる。その揺れを借りて、ロイはもっと腰を突き動かした。抱え上げているエドワードの左脚を大きく広げさせて膣内部の絞まりを堪能した。
「エド、愛しているよ」
官能的な刺激に気も漫ろなエドワードだが、ロイが耳元で囁く声だけははっきりと聴こえた。喘ぎ声を漏らしながら、エドワードはギュッと真っ白なシーツを握り締めて瞑目した。
「……うん、オレも好き」
荒い息を弾ませて、金色の長い髪をシーツの上で振り乱しながら伝えたい言の葉を素直に口にするエドワードに、ロイの男根は痺れるように感じた。
「ぁ あ、んぅ――何で、大きくなってんだよぉ」
ゆるゆると腰を動かしながら、ロイは彼の乱れた金髪を梳いた。火照ったエドワードの顔が現れると、その頬や額にキスの雨を散らした。
「君がとても嬉しいことを言ってくれるからだよ。もう我慢の限界かもしれん。エド、イッても良いかい?」
そう耳打ち際で囁くロイの声に余裕はなかった。熱く吐き出される吐息で彼が絶頂に近い事を知ると、エドワードはキュッと膣口を絞った。
「――エド…」
熱い襞がロイの男根をきつく絞り上げると、ロイの背が身震いした。それを抑えるように掻き抱くようにエドワードを抱きしめ、彼の屹立したモノをもヒシッと握り締めた。二人は喘ぎ声を上げながら絶頂に身体を痺れさせた。
――エドワードの膣口から温かい液体がこぽっと卑猥な音を立て溢れてきた。それを指に絡めて、再度彼の中に塗り込めた。先程、やっと精を吐き出したロイの男根はエドワードの臀部辺りで大人しくなっていたが、徐々に力を取り戻そうとしていた。
真っ白なシーツに突っ伏しているエドワードは荒い息をまだ弾ませていた。絶頂を味わった彼の身体は困憊していた。それでも敏感な身体は理性を反して、ぶるりと震えて応えようとしていた。
「ぅう、ん――もうダメッだって。ロイ、放せよぉ」
背後の男を上目遣いで睨み上げると、ロイは眉根を下げて困った顔をしていた。名残惜しいと顔にありありと書かれているのだ。
けれども無理は禁物のエドワードの身体だ。
「ついすまん。仕方がない。今日は此れまでとしよう。腹の子も疲れただろうしね」
エドワードより一回り以上も年が上の男とは思えないほどの絶倫ぶりに、流石のエドワードもぐったりとしてしまう。
だけど、彼にこうして抱かれることは嫌ではなかった。
見世物小屋で身体を売り物として、性欲に溺れるだけの秘戯を勝手に身につけても、こんな満ち足りた房事を味わったことはなかった。それに自分から抱かれることを望んだこともなかった。
ロイだからこそ――彼は身体を許しているのだ。
大きな手の平が緩やかに膨らむ下腹を愛しげに撫でると、エドワードはくすぐったそうに笑い出した。彼の笑顔はとても愛らしく目に入れても痛くない。
「ぁ あぁん、くすぐったいよ!」
「こらこら、笑うな。私は真剣に遣っているのだよ」
濡れたタオルで自分が汚した場所を拭い清め始めたロイの手がエドワードの官能をくすぐるのだ。これ以上は身体の負担になるとエドワードもわかっているので自重しているが、臀部で徐々に腫れあがる男根を拭われた場所が淫乱に口をピクピクさせている。
そんな自分の性情を心の奥底で卑しいと蔑んだ。そんな卑劣な想いをエドワードはそっと隠した。そして、気を取り直して倦怠な身体をゆっくりと起こした。旦那様に吉報を伝えなくてはならないのだ。
「!? どうしたのだね。寝ていて良いのだよ」
エドワードはマットレスに手を付き裸の半身を起こした。制止しても聞かない彼の身体にロイは長襦袢をふわりと肩に掛けてやると、花が綻ぶような美しい微笑を返して濡れた口唇を開いた。
「ぁ…あのね。――お腹の赤ちゃんが少し動くんだよ」
「!?」
肩肘を突いて、ゆったりと身体を横にしていたロイがいきなり起き上がった。そして、ぺタリと正座を崩して座っているエドワードの下腹部に触れた。
「!? 急にどうしたんだよ」
両腕でエドワードの腰周りに背後から抱き付き、確かめるように何度も下腹部を撫で回した。それをクスクスと笑いながらエドワードは見ていた。
「でもな、ほんのちょっとだけだよ。多分――これが胎動なのかな?」
エドワードは妊娠五ヶ月ちょっと、そろそろ胎動を感じても良い頃合だ。それをこうして実際、自分の耳に報告されるということに欣幸を感じる。ふたなりという稀有な身体なので人並みの嬉しさが、倍以上の感動を引き起こすのだ。
「いいや! それでも大したものだ。で、ヒューズにはちゃんと報告したのか」
「まだ、なんだけど。次の診察日に訊いてみようと思う」
頬を桜色にほんのり染め上げているエドワードにチュッと音を鳴らしてキスをし、緩やかに膨らんでいる下腹部に頬擦りをした。
とてもロイのこんな姿を誰も想像出来ないだろう。数多の女達と浮世を流したロイだが、此処まで女に我が身を許したことも、べったりと甘い抱擁をしたこともない。
何もかもが始めてなのだ。
「さあ、そうとわかったら子供の為に色んな物を揃えなくてならんな! あぁ…腹を冷やしてはいかん」
「!?」
肩から羽織っているだけの長襦袢の袖にエドワードの腕を通させ、情交の最中にどこかにやってしまった帯を急いで探し出し、お腹の膨らみに合わせて前で緩めに結ぶと、彼の身体をゆっくりとベッドに横にした。
一体何が起こったのだろう。エドワードは瞳を白黒させて、大人しく彼の成すがままになっていた。しかし、その行動の一つ一つに温かい愛情をヒシヒシと感じ出したエドワードはふわりと微笑んだ。
羽のように軽い掛け布をふわりと胸の辺りまで上げて、乱れていた長い金髪を梳いた。ロイもその横に潜り込み、肩肘を突いて横になる。そして、ロイの左手が掛け布の上からエドワードの腹を撫でながらその場所に向けて愛しそうに微笑んでいた。
「そうか…そうか…腹が動いたか! さすがマスタング家の跡取りだ」
子供の成長を我が事の様に喜んでいるロイ。
あれほどアームストロング夫人の眼前で、子供が無事に産まれなくても良いと言い切った彼だが、やはり心底には跡取りを願う想いがあったのだろう。そんな彼の無邪気に喜ぶ貌を見ていると、何とか無事に成長している子供がとても愛しかった。
ロイの為にも五体満足で元気な子供が産まれるように願わずにはいられない。
――この時期がエドワードにとって、もっとも穏やかで喜悦に富む生活をしていた。
少しずつ環境の違いにも慣れ、ロイの配慮により彼の仕事関係者の中でも理解のある人物に当たり障りのないように、ロイ・マスタングの妻であると紹介された。それだけでも飛躍的なことだ。
アームストロング夫人の小言さえうまく回避していれば、何とか一人でも屋敷の中に居場所を見つけられるようだ。
これがロイと一緒に休日を過ごすことが出来る稀な日などは、気持ちも穏やかに庭園でランチをし、暖かな日の陽射しを浴びながら子供のことを語り合いながら広大な庭を、二人手を繋いで散策をした。
贅沢なことは言わない――本当にエドワードはこれっぽっちの幸せでこと足りていた。
何時しか、こんな日が永遠に続くとロイもエドワードも思っていた。
本当に幸せだった。
未来の為に――。
子供の為に――。
ロイの為に――と、変わっていくエドワードは輝いていた。
それなのに……あの日、全てが破壊されてしまった。
あの日、あの時――もう後悔しても遅いのだ。これもエドワードの卑猥な過去が呼び寄せてしまったのだから。
続く
甘い蜜月編。どうですか…砂吐くほど甘いかな?
さあ、次から雲行きが怪しくなってきます。
あ、誰かー感想を送れェー…。また干からびそうです。しかし、「愛、愛」もうめちゃ長い長編です。
最近開き直ってとことこ続けてやるぅーと、思っているので是非感想をくれぇーー!
桜 美由紀 2006/10/24