月の子 エピソード T 



「2ヵ月目。僕達、自宅で見ちゃいました!」











「君は、無理しなくていいのだよ…」
「大丈夫だよ。ちょっと今日は気分がいいから、どうぞ…」

まだ、あどけなさが残る笑顔をこちらに向けてくれる。まるで太陽のような微笑だ。
一瞬にして心を奪われてしまった。何て、可愛らしい人だ。

「///…あ、ありがとうございます」



長い蜂蜜色の髪を耳にかけた人が、コーヒーを淹れてリビングに運んできた。
遠目でも、その人の美貌は際立っている。
だが、近くでその容姿を見たら。
もっと驚いてしまった。
緩やかに長い蜂蜜色の金髪。白い陶磁器のような肌。すらりと伸びた身体。
綺麗な容貌、その顔には大きな琥珀色の瞳。
稀にみる美人だ。



ロイ・マスタング准将の自宅で軍議についてレクチャーをしていた部下の2人は、准将宅にて出会った人から瞳を離せないでいる。



その人はどうも体調があまり芳しくないようだ。准将は、それを気にかけているように見える。確かに傍目にも儚げな人だと思う。何やら影があるような、ないような。
謎である。気になって仕方がない。
休日にどうしても、軍議の事で教えを請いたい事があり、無理を承知で准将宅に伺ってしまったのである。
しかし、この件に関しては上官のお目付け役であるホークアイ大尉に直訴と了承を受けている。
が、しかし了承してもらったが、1つだけ条件を出された。
それは「宅内での、准将に対するプライバシーは絶対に口外しない事!」と、いうことだった。
そんな常識ぐらい我々にもわかる。誰が他人のそれも上官のプライバシー等に口を出そうか。
そりゃー、気になることは色々あるけれども消炭に自らなりたくないから。
自分の命は大切だ。


が、実際に訪れてみれば気になる事が山のようにあり。これは、別の意味で誘惑されている。


先程、コーヒーを淹れてくれた人は、どういう関係なのか。
一緒に住んでいるのであろうか、と色々詮索してしまう。結局気になる事は金髪の人の存在だ。
准将は未だに未婚を通しているはずだが、そして今の所、結婚する予定も婚約する予定も噂に聞いたことがない。
しかし、現実には…。
今、ここにその対象らしき人物が目の前にいるのだ。
准将の女好きの噂は知っている。
だが、本命がわからない。
女性に人気があり、自分から誘わずとも相手が選り取り見取りでやってくる事も。
その中に本命がいるのかさえ、不明だが。とにかく、お持てになられる。


少し、気になる事は。
直属の部下達が、最近色んな噂話をしていたのを耳にした事だ。
長い髪の金髪の美人がどうのこうの、と彼らが周りの事も気にせず必死に
考えている姿を目にしていたが、まさか!
は、ははは
――。これは、これは、一番乗り!やったぞ!特ダネを手に入れた
と、内心喜んだ2人だったが。
ふと、ホークアイ大尉のにこやかに微笑みを浮かべる冷たい表情が目の前に
ちらついた。
が、聞くなとは、言われていない。
話すなと言われた、だけだ。
そうなのだ。単刀直入に聞いてしまえ。何か質問はないか君達、と准将は先程
言っておられたからな。その質問と我々の質問が違うことなどお構いなしさ。
2人は顔を見合わせごくりと唾を飲み込んで。


「あ、あの〜う、先程の女性は准将の婚約者の方ですか?」


気持ちとは裏腹に、恐々小声で聞いてみると。
その問いに、准将は微妙な笑みを零しただけで。


「軍議内容についてだが…」


しまった、すかされた。失敗に終わったのか。


「あっ、はい…」


がっくりと肩の力が抜けてしまった。仕方なく彼女の事が気になりつつも、仕事内容に入る。
准将宅のリビングで軍議について話し合われたが、そこは一般家庭よりも
随分広い。自分達の応接セットのある場所から少々離れた窓際に気になる人は
いた。高級なカウチにくつろいで、その人は読書をしていた。風に揺られる長い金髪が眩しい。
気になって仕方がない。だが、今は准将に教えを請っている最中で…。
暫しの長い時間が過ぎる。


ふと気付くと、その人は准将の傍にやってきて何やら話している。
気になる、気になる…。
我々、2人は聞き耳を立てる。軍議の書類内容など、何処へやら…だ。


「ロイ、コーヒーのおかわりは…」
「いいよ、気にしなくて。それより、少し横になったらどうだい」


准将の手の甲が、そっと首筋に触れる。
いや、いかんですよ!准将
――。俺達の目の前で、官能をくすぐるような行動は謹んでくれー、と内心ドキドキしている。
それに、准将に触れられる彼女の表情がたまらなく美しく穏やかだ。


「少し熱があるようだが…」
「微熱だからそんな対した事じゃないよ」
「いや、駄目だよ。君の身体と、お腹の子に障るから



(へっ…今、何とおっしゃいましたー。准将
――
我々2人眼を見合わせ、そして不覚にも、そのまま声に出してしまった。


「へっ…、お腹の子ですか…」


准将の視線を真っ向に受けてしまった、そうだろうよ…(泣)。


「君達は、何を聞き耳を立てているのだね!仕事をせんか
!」
「はっ…、すみません。しかし、でも、あのー…」


もう、しどろもどろで、パニックである。見たい、聞きたい、知りたい。
この言葉が頭を駆け巡っている。そして、金髪の人から視線を外す事もできない。


「ロイ、そんなに怒んなくてもいいじゃん」


クスクスと笑う表情が、また可憐で可愛らしい人だと、ぽけっと見とれてしまった。
そこに、また雷が落とされて。


「お前達は、どうも仕事に身が入らんようだな!エドは、見せん!」
「はぁー、そんなぁー」
「今、2ヶ月目で大切な身体なのだよ。君達にかまっている場合ではないのだよ」


何ですと
――!もう、お子様がいらっしゃるとは恐れ入った。さすが噂どおり
お手も早かった。
そして、我々が気になって仕方がなかった人の名は「エド」と言うんだ。怒られつつも顔はにっこり笑ってしまった。
名前聞いちゃったと。


「ロイ、はぁー、自分からばらしてどうするかねぇ…」
「君もこんな輩を庇う必要はない!ベッドに大人しく横になりなさい!身体に障る!」


准将は、そう喚いて「エドさん」をこの場から拉致してしまった。
せったく、お近づきになれると思ったのに。うな垂れる2人がここにいる。
それでも思わぬ収穫が手に入ったことでこの2人は、意気揚々としている。何せ直属の部下達があれほど騒ぎ立てている話題の人物の正体を我々が逸早く知っているからだ。それは、もう優越感に浸っている。


そんな優越感も長くは続かなかった。
後日、しっかりホークアイ大尉に銃口を向けられた。我々はどうも2番手のようだ。
さすが、ホークアイ大尉。准将のことなら何でもお見通しという事だったのか。
その彼女に先日の事は一切口外しないと誓約書に一筆書かされてしまった。
彼女の逆鱗に触れると我々もこの職場で仕事ができない。仕方がない…。
だけど、「エドさん」と言う人が2人の間でアイドル的存在になったのは言うまでもない。そして、准将の秘密を我々は握ってしまった。
何かの時にこれは、使わせて頂こう。
もちろんホークアイ大尉に気付かれないようにだ。


「今、2ヶ月目」これが合言葉で、ふふふ…。












やっと、再アップです。
お待たせしました。「拍手」に置いていた物を加筆修正(笑)しました。
その他も少々手を加える予定です。ですが、随分前の作品は手の施しようがないくらいへたれな文章で、書き直すのが大変だ!うまくなりたいものだ!

桜 美由紀 2005/11/25





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