月の子 エピソード W 



「 ロイ・マスタング 本日、叩かれる日!?」











「マスタング准将!久しぶりだね。最近もっぱらの噂だよ」
「はあ…将軍。その話は」
「いやいや喜ばしいことではないかね!はぁ、はははぁ
―――!」

偶然に司令部の廊下で、出会ってしまったルクソール将軍に背中をバシバシと叩かれてしまった。
まあ、ご挨拶程度にだが。
将軍は私の出方をにこにこと待っている。
それが、面白いのだろう。こういう立場に結構立たされているが、今のところうまくかわしているつもりだ。
しかし、この将軍はやばいかも。

「とうとう君が年貢を納めたとね。で、どうだね。新婚生活は、はぁ、はは
――!」

またか…この手の話を最近何度となく振られてしまう。
確かにその事は事実なのだ。
そして、その後の会話が必ずこうなるのだ。

「是非、君の眼鏡に叶った相手を私にも見せて欲しいものだよ!いやぁ―、若いねぇ、君もぉ。何でも15も年が離れているそうらしいね。それに絶世の美女というじゃないかね!会って見たいものだね。はぁ、ははは
―――!」

将軍は、自慢の髭を撫でながらにこやかに笑顔を向けている。
彼の笑顔を見ながら、ははは…と笑ってごまかすロイの姿は早くこの場を逃げたいと瞳が横に向いてる。

「はあ、将軍の耳にまで話が…極秘なもので。なるべく身近な者だけに、と思っておりましたが。それでもお褒め頂きありがとうございます」

頼むからそんなに大声で話さないでくれよ、と心で思いつつも、ロイは作り笑いを忘れずにいる。
確かに、この将軍は人当たりが良く部下達にも大変慕われ名将と言われる人である。
その上、軍司令部でロイの事をかっている幹部の1人であり、ロイもこの将軍の人柄に惚れ慕っている。が、1つ悩みがある。
地声がでかいのだ!これに、みな頭を抱えている。

「近々、ホームパーティーを催すのだが、どうだね。一緒に連れて来ては。その方が、一石二鳥というものだよ。あれこれ、顔を出さずに済むし…」
「はあーありがたいお話でありますが。身体の具合が悪くてなかなか、外出する事ができないのですよ。それに人見知りが、は、激しくて…(こりゃー、うそだ!)」
「おや
――!?噂では、もう子供ができとる、らしいと聞いているが!それでかね?はははー、君も若いねぇ!」


た、たのむ声を声のトーンを下げてくれ
―――
それに何て、こった…!


ちらほらと入籍をした、と幹部連中には少しずつ話をしていたが、まさか「妊娠の話」は、私はしていないぞ!
ロイの頭では、只今首謀者を突き止めるべくフル回転している。
その間も、この地声のでかさに何事だとその場にいた軍人達が、ちらりと視線をよこしてくる。
しかし、将軍の姿とロイの様子を見て一様に、くすりと含み笑いをして2人の動向をにやにやと楽しそうに見ている。
はあー、バレバレだな。見世物ではないというのに。そろそろ潮時なのだろうか…。
ロイの胸中は複雑である。

「はあ、はははー!マスタング君、色々大変だろうけど頑張んなさい!期待しとるよ」
「は、ありがとうございます」

またもやバシバシと背中を叩かれ彼が通り過ぎるのを見送った。
そして、後に残るのはクスクスと笑いを堪えている奴らばかりだ。
色々大変にしてくれたのは、アンタだろうと突っ込みたくなるのだが、この天然な将軍には頭が上がらない。
何せ、隠し事ができないで有名な人だから。その地声が大きい所為で。




*          *          *




「う、う〜んー!?」

リビングのソファーでエドワードの身体を胸に抱きしめながら本日の出来事をロイは思い出していた。
そろそろ、5ヶ月目に入りそうなエドワードは、ロイの胸にゆったりと身体を預けて本をペラペラと読んでいる。
だが、頭上で唸る声にぷくっ、と頬を膨らませて見上げる。

「何、うなってんだよ!ロイ」
「あ、あぁーすまない。大した事ではないのだよ。ちょっとな、司令部で…」

珍しく慌てるロイの姿に、エドワードは小首を傾ける。
しかし、これはロイにとって悩める問題である。自分ひとりで解決できる訳もない。それに、これにはエドワードの協力が…、と悶々と思い悩んでいる。
だが、絶対に彼は良しとは言わないだろうし、私も余り気が進まないし、と。

「パーティーか、お披露目か、はぁ
―――↓」
「!?」

あーでもない、こーでもない、と1人悩んでいる姿をほけっ、と見上げるエドワードにロイは笑顔でごまかし彼の首筋に唇を寄る。
エドワードの髪から甘い匂いがする。至福のときだ。
甘えるように両腕で身体に抱きつく。
すると、おや……。何やら、エドワードのお腹が少し?

「エド、少し太ったかね?何だか、お腹が…」
―――― //////// !!!」

その言葉に、エドワードの顔が一気にポッと真っ赤に染まり沸騰した。
それと同時にバシバシと、いう鈍い音が部屋に響く。

「あ、いたた…っ、どうしたんだね。エド…」

気がつけば、ロイはエドワードに叩かれた頭を押さえて何事かと片目をつぶっている。そんなに強く叩かれてはいないのだが。
今日は、何でこう叩かれる日なのだろうか、と頭を抱えてしまう。
エドワードに叩かれた理由を一生懸命に聞こうとするが、彼は真っ赤になったまま膨れている。
その表情が可愛らしい。だが、今は機嫌を治して貰わねばならない。

「エド…?そんな、急に叩かなくても」

不貞腐れているのは今の表情ではっきりわかるが、心なしか恥ずかしさを秘めているようにも感じられて。
あ、そうかー!私は、何てデリカシーのないことを…。
叩かれた頭に乗せていた手で顔を覆い隠し、自分の失敗に苦笑いしてしまう。
膨れている彼の顔を横から覗き込んでみると、うっすらと涙が浮かんでいるような。
そんな彼の頬に自分の頬をそっと寄せながら、彼の少し膨らみを帯びたお腹を両手で優しく撫でてやると。ぼそりとエドワードから声が漏れる。

「太ってんじゃない」
「ああ…ごめんよ。エド」
「わかってねぇ! ロイは…」
「ごめんごめん。エドわかっているよ。ちゃんと、子供が成長しているのだね」
「だから太ってんじゃねぇ、からな!」
「ちゃんとエドワードのお腹で大きくなってるんだね」
「話聞け!この無能!」
「む、無能〜と、は。はは…、すまない。君は君のままだ…」
「う、うん〜良かったぁ。一時はどうなるか、と思ってたから。なのに、アンタは」

さっきから何度言ってもコイツは話を聞いていないようだ。
頭の中はエドワードのお腹の膨らみで一杯だ。
自分に、頬擦りをしながら愛しい我が子の存在を確かめるようにロイが嬉しそうにお腹を撫でている。そんな様子を見ていると、怒っているのが馬鹿々しくなってきた。

「ごめん…。叩いて悪かったよ。痛くないか、ロイ」

自分で叩いた頭をなでなでするエドワードのちょっと困った顔に、苦笑いする。
自然と、ロイの心は癒されていく。ゆっくりと育っていく我が子の成長に。

「いいんだよ。それより嬉しいな!」

今日あった出来事など、この喜びで跳んでいってしまったロイだった。
が、しかし本日はよく叩かれたなあ!この私を…。
まっ、いいや。この子とエドワードがいるから。
エドワードが生命を宿すお腹は何て温かいのだろう、とうっとりする。
ロイ・マスタング 33歳。幸せを感じている。












加筆修正致しまして再アップ♪
お腹が大きくなりだしたエドワード。
恥かしいんだよね!受け入れられない部分があるのです。
だって…両性体だからね!←意地だ。
この話に続きがありなのです!エピソード]Uとして。
「パーティー」にエドを連れて行こう♪もちろんロイの奥さんとして。
みんなに見せ付けてやろう!

桜 美由紀 2006/1/10





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