月の子 エピソード X 



「赤ちゃんの名前辞典…の巻。」











この間、ロイの親しい部下達がこの家に乱入してきた。
覚悟はしていた事だったから、遅かれ早かれ事なきを得た。その際に部下達が結婚祝い?と、評して色々な贈り物を持ってきたのだが。


1つ謎の物体が、ここにある。


「なぁーこれなんだろうな。ロイ」


物体は茶封筒に密封して入れられている。
重く、固い。
一体何なのだ
――― ! んっ…音が聞こえる?
ロイとエドワード、そしてアルフォンスも不思議そうに見ている。
贈られた品々は大抵外側だけで中身が想像つく。だが、これだけはわからない。
贈り物にしては、可愛らしくない包装なのである。
それで非常にひっかかる。
謎の物体。
何かよからぬ物を想像してしまう外見である。
軍司令部内や一般人からの通報でこの手の物体をよく取り扱うのでロイは、非常に警戒している。



そもそも贈った主が、あの「歩く百科事典ヴァトー・ファルマン少尉」である。
では内容物は辞典では、とエドワードは考えて見た。
いやいや、軍内部で取り替えられた可能性も想定されるとロイは真剣な顔をしている。
ロイの見解では「爆弾物」ではないだろうかと。
オイオイ、そりゃーねぇーだろうと、エドワードとアルフォンスは呆れていたが、用心するに限ると、ロイは必死だ。


「アルフォンス! いいかい。君はエドを守れ! いいな、できるだけこの物体から離れるように」
「准将、はい! 了解しました!兄さん、いいね。こっちに…」


意外と乗り気なアルフォンスに呆れながらもエドワードは、背中を押されて物陰へ避難させられる。


「普通の品物じゃねぇーのかよ! その品物。おおげさじゃないか」


ひょっこり顔を出すエドワードを制止するようにアルフォンスが身体でガードする。そして、左右の確認をしている。


「兄さん! ちゃんと隠れて危険だよ! 准将こちらはOKです」
「いや、奴のことだから。まさかそんなヘマはしないと思うが用心のためだ」


ロイはエドワードに練成してもらった鉄板で身体をガードするように慎重に包装を開けて品物を検分する。


「ん、んんん…、これは
――!?」


検分人から不可思議な声が漏れエドワードはロイから幾分離れた物陰からひょっこり顔をだして訊いてみる。


「何どうだった?」


しばらくの沈黙が走るが、ロイの身体が僅かに震えているように見えた。


「くくく…アイツらしいな」
「ロイ〜?」


物陰からトコトコと出ようとするエドワードの身体をアルフォンスが護衛している。
周囲をキョロキョロと警戒しながら、彼をロイの元へ誘導する姿にエドワーは半分呆れている。


「兄さん!気をつけて、敵はまだ近くにいるかもしれないよ!」


アルフォンス君。
君、絶対何か勘違いしているよ。兄ちゃんはお前の今の姿を見て涙がでそうだよ。育て方間違ったかなー?


「何だったんだよ!ロイー」


手元で黙々とその物体をロイは熱心に検分している。
否、違う。読んでいた。
座っているロイの上から何だろう、と物体を覗いて見ると。
それは…。


「ん、う〜ん。「赤ちゃんの名前辞典」なんだぁー!やっぱり辞典じゃないか!ロイ、人騒がせだなぁ」
「ああ、すまなかったな。あっ! アルフォンス君、警戒態勢解除してくれたまえ!」
「了解しました!」


シュタッと警戒態勢を解くアルフォンスの姿にエドワードは頭を抱える。
オイ、アルー。まじでやってたのか…。おまえーなぁ!
エドワードから困ったように、はははと、空笑いがでる。


「なかなか、良いプレゼントだよ。これは! ほら、こんな名前はどうだい」


どれどれと、ロイの周りに集まり辞典に載っている名前を色々と見てみる。


「あ、めずらしいー!こんな、名前もありなんですねー」


アルフォンスまでも首を突っ込んできて辞典に載っている様々な名前を物珍しそうに読んでいる。
3人とも、ファルマン准尉から贈られた品に釘付けになっていた。
「赤ちゃん」ができたことを喜んでいるうちに、バタバタと色んな事があり、実を言うとまだ、準備うんぬんはまったく進んでなかったのである。


「そうだな。こりゃーいい。気が利くじゃないか!私の部下は、ははは…」
「ロイ、あのなぁ!さっきまで爆弾物処理班ごっこしてたんじゃなかった、け…」


冷たい視線をロイに向けるが、ロイは頭を掻きながらごまかしている。


「エド、何か希望の名前をもう考えているかい?」


ロイに肩を抱かれながら、ペラペラと辞典をめくっている。
色んな名前が、この辞典には記載されていてどれがいいのやら、と悩んでしまう。


「ん〜、あのなー。まだ、決めてないけど。どっちでも、使える名前がいい」


彼の言葉には、深い思いが込められていた。
エドワードには両方の性があった。だけど名前は男性名で固定されている。
それについて、複雑な思いが沢山あったのだろう。だから、どちらでも使える名前をと思ったのだろう。答えは必ず1つでなくても良い、という思いが密かに込められているようだ。


「どっちでも? 男の子でも、女の子でも通用する名前と、言うことかい?」
「うん! そう、それー! どっちが産まれるか、わかんないしね」
「僕も賛成だよ! それー!」
「そうだな、私もそう思っていた。ゆっくり考えようエド」
「うんーそうだな」


分厚い名前辞典をパラパラとめくりながらエドワードのお腹をそっと撫でながらロイは、その子にそっと言葉をかける。


「君は、とっても大切に愛されているんだよ」
「ん、何!? ロイ…」
「何でもないよ」


くすりと笑いながら言うと、エドワードの黄金の頭を大きな手で抱き寄せそっと天使へキスを贈る。
それに気恥ずかしそうにモゴモゴしていると。


「Σ あっ
―――/// 」


そう、ここにはしっかりアルフォンスがいるのであった。しまった、とアルフォンスに視線がいってしまう2人。
だが、肝心の彼は。


「兄さん、准将! 周囲に敵はいません! 大丈夫です。続けて下さい!」
「ア、アルフォンス…!?」


彼らの背後を守るようにキョロキョロと周囲を見回してごまかしている。
いや、遊ばれている?


「アル
―― …」


にやりと、アルフォンスは2人に振り返るのだった。




アルフォンスの警備日記。

第一報告「准将も兄さんも、僕が傍にいる時は、ちょっと気をつかって欲しいです!」
第二報告「僕も、兄さんのお腹に触れてみたいです」
理由。兄弟だから、ちょっと照れてしまって今迄触ったことがありません。 
以上です!












加筆修正致しまして再アップ♪
拍手に掲載していた当初。結構反響が良かったようです!アルフォンス様 炸裂です!


桜 美由紀 2006/2/11





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