約束は秘密のうちに結ばれた。
                        The promise was concluded in secret.


■□■第四章□■□



「此処に掛けなさい」
ロイが濡れた衣服を着替え終わった頃に、エドワードがふらふらと壁伝いにやって来た。まだ、内股に異物が混入しているようなぎこちない歩き方だ。
エドワードの衣服は着られる状態ではなかったので、ロイが代わりに白いバスローブを用意していた。彼にはサイズが大きいそれは益々彼を小さく見せた。
顔を俯かせているので表情は読めないが、ロイの問い掛けにこくりと金色の小さな頭が下がった。借りてきた猫のように彼はちょこんと指示されたソファーに腰を下した。
「落ち着いたかね…」
驚かせないように、慎重に湯気がたつカップを彼の前に差し出した。彼の気持ちが少しでも落ち着くようにと、ロイは香ばしい匂いがする珈琲を淹れて待っていた。この香りで、あの青臭く独特な匂いを思い出さなくて良いようにと配慮してのことだ。
エドワードがおずおずと顔を上げてカップを受け取ろうとして、大きなバスローブの袖から左手首が出てきた。蒼痣にまみれた手が露になると、エドワードは自嘲するような薄ら笑いを浮かべてその手を隠しながらカップを受け取った。
その何気ない小さな動きがロイの心を傷めた。
沈黙が支配する部屋でエドワードが珈琲を小さく啜った。こくりと喉元が上下する様子をロイは横目で見ていた。
さて、これからどうしたら良いものやらと思い煩っていた。この部屋で彼を休ませるにしても、ロイ自身の理性が抑えられるかどうか心配なのだ。
それほど、今のエドワードは激しい性交で艶やかに華が咲き綻んでいるのだ。その疲労した表情が悩ましく凄艶で、解かれた金色の濡れた長髪を耳に掛けるという些細な仕草でもドキッとロイの胸を高鳴らせた。
これも両性具有する彼の性情の所為なのだろうか、とエドワードの身体を繁々と見つめていた。しかし、ハッと己の邪な心に気づき視線を床に移した。それから、純粋な心で彼を安心させる為に口を開いた。
「アルフォンスには連絡しておいたよ。今日は此処でゆっくり身体を休めなさい」
「………」
エドワードは俯いて、カップの中をまんじりと凝視していた。まるで暗闇の中で何かを見つけ出すように。でも、何も見つからない。落胆する吐息が吐き出された。
「――何て、言ってた…」
散々悲鳴を上げすぎた声は掠れていた。何度か咳払いを繰り返して漸く声になった。エドワードの短い言葉の真意は、彼がどういう嘘をついたか知りたかったのだ。まさか正直に「お兄さんは不特定多数の男達に犯されました」と言うはずはないだろうと信じてはいたが。
ロイもエドワードの言いたいことは、凝縮させた言葉でもよくわかった。
「その辺の狼藉者たちと喧嘩して、私の部屋で保護していると、言っておいたよ」
苦笑いを浮かべながら、ロイは答えた。それを聞いたエドワードは考え込んでいるようだ。そして、暫くしてから、だるい口を開いた。
「……そう。――迷惑掛けて悪かったな。帰る」
左手に持っていたカップをテーブルに戻して、よろよろと立ち上がろうとする彼にロイは焦った。
今の状態の彼を帰したら、本当に彼はそこらの狼藉者達の慰み者になりうる。彼は自分がどれだけ人を惹き付け、惑わせる存在なのか知らないのだ。今回の件で身を持って知ったはずだと思ったが、彼の強がりな性格がそうさせるのだろう。
「待ちなさい! 今の状態のまま君を帰すわけにはいかない」
口調を強くしてロイは彼を止めに入ったが、エドワードはムッとした表情を露にしてロイに言い返した。睨むように見上げてきた瞳は今にも涙の湖を作りそうだった。
「帰るって、言ってんだろう!」
益々反抗的な態度なるエドワードにロイはため息を漏らした。こうまで、意地を張られるとどうしようもないのだ。それでも、譲れないものがある。
「どこに帰るというのだ。そんな身体で帰っては、かえって男達を刺激するのだよ。君はもっと自分を知りなさい!」
その言葉に一瞬、エドワードの身体が凍結した。「貴方の身体にはもう一つの性があるのよ。男の子でもあり、女の子でもあるの。いいこと、男の人に絶対隙を見せてはいけませんよ」と、母親が口を酸っぱくして注意していたことを思い出した。それなのに、男達の研究対象になり身体を良いように犯されていた。
エドワードの中で愚かな自分を責める声が聴こえた。
「煩い! もうオレに構うなぁ…」
悔し紛れに、その辺にあった書籍を掴みロイに向かって投げ付けた。図星をつかれて、尚更腹立たしいのだ。ロイも彼の気持ちはよくわかっているが、こればかりはどうすることも出来ないのだ。彼の身体に受けた淫猥な事実はすぐに消せるものではないのだ。
「右腕を痛めているだろう。傷の手当てをしてあげよう。大人しく言う事を聞きなさい!」
右腕の機械鎧の調子が良くないことをロイは知っていた。それも気になる事の一つでもあった。
駄々を捏ねる子供のように、地団駄を踏む彼の身体に触れようと手を伸ばせば撥ね返される。それの繰り返しだ。始めの方は彼の気が済むまで付き合うつもりだった。
が、しかし――エドワードの口から聞きたくない暴言が吐き出された。
「もう、何もかも嫌だ。もう、こんな身体嫌だ。いらない!」
その言葉を聞いて、ロイの中で何かが大きく崩れた。こんな彼の姿だけは見たくなかったのだ。
例え、慮外な出来事に心身ともに傷つけられたとしても、彼らは己の失くした身体を求めて辛苦な旅を続けていたはずだ。最近になって、扉の向こうにアルフォンスの身体を見つけて喜んでいた。これで、一歩前進したと瞳を輝かせていた。どんなに困難な出くわしても彼の瞳は前を向いていた。
それなのに――。
パンッと乾いた音。ロイの右手が反射的にエドワードの頬を叩いていた。彼の口唇は真一文字に結ばれ、烈火の如く怒っている。エドワードは始めてロイの顔を正面から凝視した。
「……大佐!?」
きょとん、とした顔でロイを見上げていた。どうして、自分は彼から叩かれるのか意味がわからない。
「そんなにいらない身体ならば私がもらおう!」
意想外な言葉にエドワードは面食らった。その刹那、力強い腕で強引に身体をベッドに投げ飛ばされた。一体何が起こったのかわからないエドワードは左腕で上体を起こそうとしたが、ロイの身体が圧し掛かってきた。
「嫌だ! 大佐っ、やめぇ…ろよ」
エドワードの非難めいた声は無視され、ロイの口唇で塞がれた。
突然のことで、エドワードは身を固くした。それから、漸く意識を繋ぎ合わせて、エドワードは手足をバタつかせて足掻いた。唯一、動く左腕が抗うためにロイの胸やら背中を叩いていた。だが、彼の体力はもはや空前の灯火、敢え無くロイの手によってしっかりベッドに縫い止められた。
はあ、はあと解放されたエドワードの口唇から荒い息が吐き出された。生理的な涙がぽろぽろと零れてきた。一日に二度までもこんな目に遭うとは思ってもいなかった。
それに相手が――ロイであるという事に驚きを隠せない。
「大佐!? どうして…」
生理的に流れていた涙は本格的に悲痛の涙となった。犯されるという恐怖から身体は再度戦慄き、抗おうと必死になっていた。研究室で抵抗した以上に暴れた身体はゼエゼエと胸を上下させて、抵抗の度合いを示した。そんな哀れな子羊を目の前にしてもロイは微動だにせず、冷ややかで真剣な瞳がエドワードを見ていた。
「何故、抗うのだ。この身体はいらないのだろう。ならば、私の好きにさせてもらうのみだ」
エドワードはフルフルと金糸の髪を振り乱して拒絶するが、ロイの手は止らなかった。ゆっくりとバスローブの前合わせから手を差し込み、緊張して尖っている小さな乳首を撫で回した。口唇が彼の耳朶を甘噛みし、うなじ、首筋へと滑っていく。骨ばった鎖骨にさしかかって、チュッと音を鳴らして吸い付いてきた。指の腹で、撫で回していた桜色の乳首に今度は口唇で優しく触れ、舌を使い舐めて啄ばんだ。
「ん、ぅ…アッ、ヤダ、大佐…こんなのヤダ」
ロイが上目遣いでエドワードを見上げた。彼は小刻みに震えながら悲愴な表情を露にして訴えた。
「これじゃあ、奴らと一緒だ! 大佐も奴らも一緒…。大佐だけにはこんなことされたくない」
そう彼とは対等の立場でいたいのだ。時に背中を預け合うそんな関係でいたかった。それでもエドワードの胸にはまったく正反対の感情も湧いていた。だが、今はその感情の意味はわかっていない。
突如、ロイの表情が怒気を孕んだものに変わった。まだ、濡れそぼったエドワードの髪を鷲掴みにして視線を合わせた。
「奴らと一緒ではない! あれは暴力だ。私は……君を――」
そこまで言って、ロイは口唇をグッと噛み締めた。その先の言葉を伝えてはならない。
愛しているから我が身を卑下する君に憤りを感じるのだ。
愛しているからその身体に欲情するのだ。
愛しているから傍にいたい。そして、守りたい。
この想いを遠い未来、君に伝えたい。知って欲しいのだ。だが、今はその時ではない。ロイはグッと熱い想いを飲み込んだ。それでも、抑えられないものがあった。それは男としての欲。
半裸に近いエドワードの身体は、あの研究室での情交で性的な魅力を引き出された。それは健康的な成人男性としては、ほっとけないものである。
少しずつ、憤怒していた感情が静まってきたが、もう遅いのだ。ロイは欲情を抑えることが出来なかった。性欲に溺れた青年のように、ロイの男根は固く大きくなっていた。こんな形で彼を抱くのは不本意だが、もう止められなかった。そして、止めようと思わなかった。
ロイの手はするりと内股に伸びた。その手を排除する為に、エドワードは泣きながら訴え続けたが、軽くあしらわれた。いつの間にか、辛酸を嘗めるような表情に変わっていたロイは喚き続ける口唇に口づける。今度は、彼が怯えないように優しく啄ばむように。
こんな風にしか、自分の気持ちを伝える術を知らない自分に悔しさを感じていた。伝えたいという想いと彼を思慕する想いが、ロイの中で葛藤していた。
ロイのしなやかな体躯がエドワードの両脚を割り広げた。バスローブの紐を器用に片手で解いて、彼の身体を全裸に剥いた。彼の口腔にゆっくりと舌を挿入し、頃合を見てから舌を絡ませた。
「……ふっ、ぅ――」
彼は涙を流しながら、荒く息継ぎをしていた。ポコポコとエドワードの拳がロイの胸を叩いた。しかし、段々とその力は失われた。ゆっくりと気持ちを伝えるようにロイが彼の口腔を愛撫していたからだ。
人の気持ちとは態度でわかる。研究室でエンヴィーに口腔を貪られていたのとは違う。違いを少しずつ感じて、エドワードは身体の力を抜いた。そして、ロイの口唇に翻弄される自分に気づくのだ。
「んっ!? どうしたのだね。もう抵抗はしないのか…」
漸く、口唇を離したロイが真摯な瞳で語りかけてきた。荒い息を弾ませるエドワードの頬に優しく接吻した。それを甘んじるエドワードに可愛さが湧き立つ。
「――違うから…。エンヴィーがしたのと違う」
ロイは目を細めて笑った。少しは自分の気持ちが伝わっているように思えたからだ。ロイの大きな手の平がエドワードの男性性器を覆った。ビクッとエドワードの身体が反応した。そこはまだ、快楽の兆しを見せていなかったが、柔らかく握り扱き始めるとゆっくりと首をもたげてきた。散々、奴らに良いように嬲られたが、誰もエドワードの性感体に官能を導く者はいなかった。
それだけにエドワードは奇妙な不安を感じていた。どうして、こんなことをするのだろうと。自分は男達が性欲を吐き出す為の器のはずと。そんな不安を抱える彼を知ってロイは優しく諭すように言った。
「あんなのは単なる暴力だ。SEXではない! 私が君の身体を愛してやろう。ちゃんと君が感じられるように愛してやろう」
伏せ目がちにエドワードは顔を背けた。ロイの言葉にどう返答したら良いかわからないのだ。
だけど、一つだけ理解したことがある。それは、彼が自分のことを屈服したいが為にこの身体を抱いているのではない、ということ。
まだ、オレは大佐の隣にいる? 同じものを目指して、肩を並べている?
「どうして……」
ふと胸の内で湧いた言葉が声になった。しかし、ロイは苦笑いを浮かべて、その問いには答えなかった。エドワードはそれ以上追求することは出来なかった。何故ならば、彼の大きな手によって張り詰めた男根が精を吐き出したくて泣いているのだ。蜜という名の涙を――。
その間も剥きだしになった少年の薄い胸に舌を這わせて、愛撫していく。エドワードの口唇から女のように甲高い嬌声が上がる。それを彼に聴かれたくない為に左手の甲で塞いだ。ロイの口唇がにっこりと吊り上る。官能を味わう彼の姿に陶酔しているのだ。ロイの手の中でエドワードの男根は短い断末魔の声を上げて上り詰めて弾けた。それに気を良くしたロイの手は、彼から吐き出されたぬめりのある体液を借りて、もう一つの秘所を探究し始めた。
なるべく彼を怯えさせないように慎重に探る。身悶えする内股の奥深くにそれは眠っていた。そこに気を集中させないように、身体のあちらこちらに啄ばむように接吻しながら辿り着いた。
「ヤダッ……大佐、やめっ!! こんな身体…っ」
ロイの身体を突き放そうと無駄に抗いながら、エドワードは屈強な腕で大腿を裂かれ、彼が嫌悪を抱く秘所を晒された。そこは奴らに暴行を受け、赤く腫れ上がっていた。処女地であるに関らず、強引に捻じ込まれた所為だろう。所々、裂傷があった。
その部分を見て、ロイの顔は苦虫を噛むように歪んだ。そして、躊躇うことなく、その部分に舌を這わせた。ちろちろと裂傷した箇所を清めるように優しく舐めていく。
「――っ、痛ィ……大佐、そんなところ…舐めるなよ。アンタが穢れる…」
エドワードの左腕が必死にロイの黒髪を掴み、その場所から引き離そうともがいたが、彼は丹念にヒクヒクと痙攣を起こし、官能の雫をとろとろと流す秘所を舐めた。エドワードが一際、高い声を上げて背筋を攣って震えた。
エドワードの瞳から涙か止め処もなく零れていた。ロイにはその涙か純真無な真珠のように見えた。あれだけ、奴らに穢されても彼の心と身体は初々しかった。それだけが、ロイには救いのようだった。
全てをあの場で目撃してしまったのだから――。欲にまみれた男達が穢れた男根を彼の蜜壷に挿入し、快楽に酔い痴れて腰を激しく振り、欲を吐き出す瞬間を見てしまった。
「君は穢れてなどいない!」
艶美な色を出して仰け反る彼にロイは厳しい口調で言い放つ。それが彼の救いの言葉になれば良いのだが。
「……うっ…、んっ」
蜜液に溢れた秘所にロイの指がゆっくりと忍び込んで、奥深くへと二本の指を挿入させて中を解した。熱い膣は濡れた音を鳴らして収縮を繰り返し、ロイの指に襞を絡ませていく。己の身体が勝手に快感を追っていくのが耐えられないエドワードはロイの胸に頬を寄せて、嗚咽を漏らして泣いていた。
「鋼の、自分の身体を愛しなさい」
確かに彼にとってこの身体は奇態なものかもしれない。無用な欠陥品であり、稀有な存在として好奇な目で見られて、今日のような事態に陥ることもある。だが、彼を慕う者はこの身体を含めた彼の全てを愛しているのだ。それをわかって欲しくてロイは彼にこの言葉を贈ったのだ。
朦朧としている頭で理解するには難しいのはわかっていても――。
ロイは熱くなった身体に巻きつくシャツを荒々しく脱ぎ、素肌で彼の肌のぬくもりを確かめた。もしかしたら、これが最初で最後の一夜になるかもしれないのだ。
ならば――と想い。
しっかりと彼の肢体を抱きしめた。右腕、左脚が機械鎧の冷たい鋼鉄であるのも気にならない身体。それに、オイルの匂いも気にならないほど彼の身体は甘い香りを漂わせていた。
ロイはその身体を掻き抱いた。己の気持ちを素直に伝えられないことを悔やんで、強く強く抱きしめた。この想いが言葉にしなくても伝わるようにと願いを込めた。
「――大佐ぁ……」
エドワードが快感に身悶えながら、ロイの名を呼んだ。それだけで、ロイの男としての性欲は激しく戦慄くのだ。それを知って欲しくて、エドワードの左手を己のモノに触れさせた。
「エッ!? 何ィ、これって……」
朦朧とした意識の中で、エドワードは成人男性の性欲の象徴を扱いた。始めは抗っていたが、ロイの手がそれを逃さないのだ。熱く、ドクドクと脈打つモノにエドワードは緊張して身体を小さくした。
ロイの表情は段々と余裕を感じられないものに変わっていた。エドワードの中に我が分身を挿入したくて堪らないのだ。もうギリギリの線まで我慢したロイは彼の額や頬に接吻しながら、ベッドサイドに手を伸ばした。
エドワードは彼の愛撫に翻弄されて、何をされているかわからない状態だ。ロイはサイドの引き出しを開けて、何やらゴソゴソと探していた。漸く、目的の物を探し出すとパッケージを歯で開け、片手で内容物を取り出すと手際よく己の腫れ上がった男根に装着させた。
これは彼の身体を気遣ってのことだ。散々、男達の慰み者になっていた彼の身体にこれ以上負担を掛けさせたくなかった。浴室で膣の中に吐き出され白濁した液体を掻き出せずにまごついていたエドワードの姿は憐れだったからだ。女性部分の存在を認められない彼にとってそこは恥辱の象徴だ。そこに触れることは彼の考えを根底から覆さなくてはならない。
快感に緩和した表情をしている彼に深く舌を絡めた。それから、彼の身体が傷つかないように膣口を指の腹で開き、巨大に腫れ上がった男根をあてがった。
「ほら、息を吸って…。そう良い子だ」
「んっ……あっ、痛っ――嫌ぁ…」
繊細な蜜壷にゆっくりと挿入される。ロイも深く深呼吸しながら、強靭な腰が奥を目指して波打つ。慣れることが出来ない感覚にエドワードの口から絶叫が迸る。内臓を圧迫される感覚に身体が勝手に煩悶するのだ。侵入者を拒んで、小刻みに震える彼の身体をロイの口唇が優しく癒していた。
狭い膣はロイの男根にきつく絡み付いていた。今にも食いちぎりそうな勢いだ。さすがのロイも痛みを感じるが、ゆっくりと時間を掛けて解きほぐして濡れてきた襞を蹂躙に味わった。今までに味わったことがない恍惚とした感覚に自然とロイの腰つきも激しさを増していた。
暴れていたエドワードの左腕は今では、しっかりロイの背中に回されていた。閉じることを許されない両脚はぶらぶらと律動に合わせて揺れている。
「――大佐、あっ ぁ…ダメェ…」
もっと深く結合するために腰を高く持ち上げられた。いつしか、エドワードの中は甘い疼きに変化していた。数人の男達の男根に何度となく揺すられていたが、こんな感覚は始めてだ。他人の性器が自分の中でとろけそうな感覚を味わった。
ロイも濡れそぼった狭い箇所を堪能するために抽出を繰り返した。ぐちゅぐちゅと卑猥な水音にロイの官能が高まる。極みまで、後少しというところまで来ていた。
「鋼の、どうだね。感じるだろう」
荒く息を吐きながらロイは確かめるように言ったが、その必要はないぐらいエドワードは乱れていた。
「ぁ あっ、ぅふ――そこダメェ……」
官能を受け入れることを酷く怯える身体は声を上げて、拒否し続けていた。それがわかっているロイは更に腰の動きを激しくして、彼を官能の渦に巻き込んでいかせる。
「ほら、良い子だから……素直にいくと良い」
ギシギシと腰の動きにつられて、ベッドが軋み音を立てる。エドワードは足掻きながら初めて絶頂を感じた。ロイも小さく彼の耳元で呻き声を上げて、欲を吐き出した。
あれだけ強固に抗っていたエドワードはついにロイの手練手管に堕ちた。そのことが悔しいのかそれとも嬉しいのか、エドワードは絶頂を感じたのち、ロイの胸で小さく泣いていた。

ブラインドの向こうから朝陽が顔を出し始めた頃、ロイはベッド脇のソファーで彼の容態を看ていた。

激しく情交を交わした後、エドワードは眠るように気を失った。その緩和した身体を抱きとめてロイも一緒にベッドで眠っていたが、ふと気づけば彼の身体は高熱に苛まれていたのだ。
「鋼の、大丈夫か?」
熱い身体と忙しなく吐き出される吐息に、ロイは眉間を寄せて彼の身体を揺り動かした。何度か呼びかけると、熱に濡れた琥珀色の瞳がぼんやりと開かれた。心配そうにロイが顔を覗いていると、薄っすらと微笑を浮かべて、掠れた声で答えてきた。
「はぁ……っ、腕が痛いんだ。だから――」
応えるのも億劫そうな声。ロイは困り顔で、汗で額に張り付いた金色の前髪を梳いた。
彼はエンヴィーによって受けた機械鎧の不具合を今迄、黙っていたのだろう。意地を張り続けて、良かった例はないのに、とロイは一人ぼやいた。
「わかった。右腕だね。君は眠っていなさい」
口を開く力がない彼は虚ろにこくりと頷いた。少しばかり、素直になった彼にロイも自嘲気味に笑った。自分にも責任があるのだとわかっていたからだ。
動かない右腕の治療をしようと思っていたが、彼をベッドに引きずり込んで無理やり身体の関係を持ってしまったのだ。彼ばかりを責めることは出来ない。性交でいたぶった身体は綺麗に拭ってやったが、肝心な事を忘れていたのだ。
彼の身体をうつ伏せにして、ロイは献身的に痛みがある箇所を手当てした。高熱で朦朧とする彼は大人しくロイに身体を任せていた。こんな姿を目にすると、とても愛らしさを感じる。
うつらうつらと眠っていたエドワードの瞼が震えて、ぼんやりと琥珀色の瞳が現れた。もぞもぞと動く気配にソファーに座って看ていたロイが容態を覗き込んできた。
「どうした? 水が飲みたいのか…」
優しい声色で問い掛ければ、彼はゆっくりと頭を振った。それから、熱で掠れた声で彼に訊いてきた。ロイには彼がまだ夢の中を彷徨っているように見えた。
「……大佐、オレの身体を抱いて後悔してねーの」
「!?」
何を言うかと思えば、そんなことかとロイは笑った。額から落ちたタオルを拾い上げて、冷たく濡らして彼の額に乗せてやると、安堵した吐息が返ってきた。
「してないよ」
エドワードの耳元ではっきりと答えてやった。
告げられない言葉は沢山あるが、これは真実の言葉だ。ロイは熱を孕んだ彼の目元に優しく接吻した。身体がだるい所為か嫌がらない。だけど、その顔は困ったように頬を膨らませていた。ロイはにっこり笑って、彼の頭を撫で回した。
「さあ、また眠ると良い…」
とろんと虚ろな瞳はすぐに閉じられて、スウスウと安らかな寝息が聴こえてきた。漸く、熱が下がろうとしているようだ。ロイも安堵の胸を撫で下ろした。
こうして、長い一日がやっと終わりを告げた。






あーとうとうロイ殿理性に負けていたいけな子供に手を出してしまった。

桜 美由紀 2007/11/25