ピョッたまご!?






(5)
仮眠室をベッドに備え付けられたカーテン一枚で仕切られている。
壁を背に男達は並べられていた。ごくりと喉仏は上下し、両耳は一言一句聞き漏らさないように待機中である。
仕切られた中の様子が気になって気になって仕方がない。
素肌を叩く、乾いた音が耳に届いてからは尚のこと。
「痛い! 叩くなよ。オレ、叱られるようなことしてない!」
と、エドワードの悲鳴と苦情の叫び声。
アルフォンスとホークアイはそれを物ともせず、エドワードを虐待しているように思われる。薄いカーテン越しに暴れるエドワードを押さえつける影が映し出されていた。
「いぃぃ…一体、何事なのだ?」
ロイは声を潜めて左右に尋ねるが、誰一人その答えを出せるものはいない。
騒がしく叱りつける声にはあのホークアイの声も混ざっている。それは一際厳しい物言いだった。
「さあ!」
彼女が先を急かす声に壁際で立たされている彼らも条件反射で身体を硬直させてしまう。
「「こ、怖いぃぃぃー」」
緊迫した時間がどのぐらい続いただろう。
当初の目的。彼らを司令室に連行する役目もロイはすっかり忘れてしまっていた。
唯、唯――エドワードの変態ぶりと異常な言動に驚かされていた。
そして……どのぐらい経過したのだろうか。
あれだけ騒然としていた隔離部屋がピタッと静まり返ったのだ。


あろうことか、アルフォンスは実兄の二つに割れた尻を左右に開いていた。
そして――ホークアイは鳶色の瞳孔を一杯に開いていた。
形良い口唇はグッと何かを飲み込むように固まっている。とんでもない荒行を遣ってくれたアルフォンスはじっくりと丸秘部分を凝視。
その頬は赤く高揚していた。
肝心なエドワードはシーツに顔を押し付けられ、表情はうかがい知れない。
が、くぐもった声を吐き続けている。
「痛い! 早く退けよ! アルのバカー尻を叩くな!」
彼にはこの格好を恥ずかしいと思う感情はないのだろうか。
それともあられもない姿にされたことによって、極度の興奮状態に陥って判別のしようもなくなったのだろうか。
恥辱を味わっているようには感じられない。
女性であるホークアイでさえ目を覆わんばかりの所見であるのに。
けれども彼女もアルフォンス同様食い入るように丸秘部分を見てしまった。
「――こ、これは…!!」
声を詰まらせて漸く声を出したところで我に返って、アルフォンスの顔を咄嗟に平手打ちしてしまった。
「痛いですよぉー」
尻から手を外し、叩かれた頬を押さえるアルフォンスをキツイ眼差しが糾弾していた。
「な、な……んてことなの! アルフォンス君、あなたは触っちゃダメよ!」
「そんなぁーでもこうしなくちゃわかんないでしょう?」
事の重大性を理解しているのかどうか定かではない。間延びした声にさらにホークアイの平手が彼に命中した。
「ヒィィー痛いですよぉ。――でも中尉これって女の子になってますよね?」
口唇を尖らせてアルフォンスは好奇心満々の瞳で笑いかけてきた。
「「なっ? 何だってぇぇぇ?」」
壁際で立たされている男達がざわつき始めた。
けれどもそんなことに構っている余裕はホークアイにはなかった。
もう一度確認せねば、これは何かの間違いなのか?
彼女はアルフォンスを押しやり自らの手でもう一度上に向いた尻を左右に開いた。
「痛いぃぃぃって! 中尉、退いてくれよぉぉぉ」
馬乗りにされているエドワードは相当苦しいらしい。けれども尻を開かれる行為を嫌がっているようには見えない。
何か引っかかるが、そんなことを気遣う余裕はない。
しかし――これが意外に盲点であった。そのことに彼らが気づいたときは既に時遅し。
まじまじとホークアイは内部を観察。そこにはどう見ても女性器が形成されていた。
穴があるのだ。
穴。
男性であるのにもう一つ、穴があるのだ。
スッと顔を上げて、真剣な眼差しでアルフォンスを睨んだ。
「エドワード君は男の子だったはずよね」
ドスの利いた低音でゆっくりと質問すると、アルフォンスはにっこりと笑い返した。
「勿論ですよ」
「――じゃあ、これは何なのよ。明らかに膣だわ! 女性にしかないはずの膣だわ!」
もう恥じもへったくれもなかった。
医学的名称をホークアイは恥らうことなく大声で喚いていた。
女性となると目の色を変える壁際の男達のこと等、すっかり忘れて破廉恥極まりない会話が飛び交う。
惚けているのか、アルフォンスはにっこり満面の笑顔。
「やっぱりそうですよね。ほらー僕、女性経験乏しくて。女の子にあそこ見せて何て言えないし、幼馴染のウィンリィに言ったらスパナで殴られから」
「ア、アルフォンス君〜そんなことより私にはさっぱりわからないわ!」
何食わぬ顔でアルフォンスは更に笑っていた。
「医学書に女性器が載っていたけど、実際は色んな形があると書かれているから僕では判別ができないので、中尉ちゃんと見てやって下さいね。間違いないでしょう?」
彼の落ち着いた言動に眩暈がする。
又もや彼らは視線を局部に下ろし、広げていた尻を更に左右に大きく広げて二人は内部を診た。
エドワードは息苦しさに唸り声を上げていた。
恐らく何をされているのか、判別できない状況にあるようだ。
薄紅色のふっくらとした花弁が二枚。ピクピクと震えている。そこをホークアイの指がゆっくりと開いた。
食い入るようにアルフォンスは覗いていた。
それを初めは注意していたが、今は二人で未知の世界を探索している。
「紛れもなく膣だわ。それもちゃんと成熟している。この部分だけ見たら女性であると言わざる終えない。卵巣や子宮の状態までは観察できけれども…」
幼稚な性器ではない。もう立派な女性器である。
二人は念入りに診断を始めた。
「ちゃんと入るかな? 僕が試した方が良いかな」
「そ、そうね。挿入できないと意味がないわ!」
「じゃ、僕が試しにとッ――イタッ」
膝立ちになってアルフォンスは自分のズボンのチャックを下げようとしていた。
そこでハタッと現実世界に戻ってきたホークアイが鉄拳で殴りつけた。
「アルフォンス君、何をしているの! 近親相姦になるじゃない!」
殴られた頭を抑え、涙目になって苦笑いしていた。
「じ、冗談ですよ。もう〜」
ホークアイは顔を真っ赤にさせて怒っていた。
「今は冗談が通じない状態です! それより詳しく経緯を説明なさい」
「ぇぇっとですね。僕らの一族、ホーエンハイム家は代々跡取りを残すために長男が両性化するんです」
「「はあぁぁぁぁぁぁ〜〜〜?」」
ホークアイを含めたその他全員が震撼した。
勿論、二人の会話は一言一句壁際で待機している男達の耳にも届いていたのだ。





つづく