PROSTITUTION
〜黒き翼〜
PROSTITUTION 売春
報酬を得ることを目的として
不特定の相手(好きでもない男)
と性交すること。
「大佐っ………」
オレは、その姿を確認して動くことができなかった。
逃げ出すことも、何もできずにその場に立ち尽くしている。
ロイの表情は険しかった。怒りのオーラがアルフォンス同様見えるようでオレは、極刑を受ける
重罪人のように2人の審判を待つ。
アルフォンスの顔もロイの顔もどちらとも瞳を合わすことはできない。
2人の行動を只待つしかできなかった。
「エドワード ―― 」
重く押し殺したように低く声が響くと、同時に衝撃が走った。
思い切りオレは胸倉を掴まれ、左の頬を拳で殴られた。殴られた身体が、ずっさーと地面へ
と、転がっていく。
あ、口の中切れた…と、オレは醒めた感覚で思っていた。
抵抗などする気もなかったから。
急に殴られたことを怒る気もなかった。だって、全てオレが悪いのだから。
地面に這いつくばっている身体を引き起こされ容赦ない拳がオレの身体を襲う。
殴られるたびに、オレの身体は地面を這っていく。情けない。
「くっ……」
顔を殴られ、腹を殴られ、それでもオレは抵抗しない。
だって、殴られて当たり前の行為、過ちをオレはやってしまったから。
容赦なくロイからの鉄拳はオレの鳩尾に入ってしまう。げぇーっと身を2つに折りながら
倒れていく。
「うっ…はぁ、はぁーげぇっ…うっ」
その倒れる間際に、オレの瞳から生理的な涙が流れてしまう。
そして、オレの瞳はロイの怒りと、悲しみの表情を映し出していく。ロイの顔が今にも
泣きだしそうだ。どうして、アンタがそんな顔するんだよ。
泣かないで、悲しまないで、苦しまないで。
オレが悪いのだから、とロイの苦悩に満ちた瞳に投げかける。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
ロイからも苦しそうな息遣いが、この街に響き渡る。
一方的に殴られている兄と殴り続ける大佐の姿に余りの事で呆然と立ち尽くす
アルフォンスがいた。
彼の意識が、やっと何が、どうなってしまったのか急に理解するように慌てて止めに入る。
「た、大佐―、もう、やめて下さい!」
そう言われている時、ロイはオレの胸倉を掴み上げて右の拳を振り上げているところだった。
その拳をアルフォンスが鎧の手で止めに入っていたのだが。
それに、やっと気づいたように振り上げていた右の拳を下ろしオレの身体を地面へと
突き放した。
「に、兄さん……」
オレに駆け寄ってくるアルフォンスの鎧の手をオレは、振り払う。
優しさは、いらないから。
その態度に、驚くアルフォンスはその場に立ち尽くしてしまう。どうしたらいいのだろうか。
オレもロイも、アルフォンスも、地面に瞳を落とすしかなかった。
静まり返った世界に、地面に落ちた書類の紙が風に煽られてバサバサと音を立てる。
その重要書類が、オレの思考をさらなるどん底へと導いてしまう。事実を突き立てるように。
こんな書類の為に、オレは身を穢してしまった。
沈黙の中、地鳴りを思わせるような押し殺した声が聞こえるが、オレに対しての言葉ではない。
もう、口も聞いてくれないだろう。
そう思いながらクラクラする頭を声がする方へ向ける。
「アルフォンス、借りるぞ…!」
「大佐…?えっ…」
それ以上の言葉はここにはなかった。アルフォンスが静止する間もない勢いで、オレの身体を
触れるのも、嫌がるように掴み。
そして、轢きずるようにどこかへと連れられていく。もう、オレにはどうする事もできない。
後に、残るのは…。
アルフォンスがオレの名と、ロイの名を呼び続けるのみ。
どこをどう連れられたのかわからない。
そして、聞くこともできない。オレ達は何も言葉を交わすことなく行き場のない気持ちを
抱いている。
口の中が切れて、鉄の味がする。あちら、こちら身体がギシギシと悲鳴を上げている。
だけど、救われることがある。
あの将軍との情事の痛みを少し、ほんの少しだけ忘れさせてくれる。
そして、あてもなく轢きづられた先は。
安宿!?
ぐらつく視界の所為で余り、周りが見えない。
だけど、小さな小窓の中にいた男とロイが何か交渉している。
今のオレには内容まではよくわからないが。普通の宿とここは、違うようだ。
何か、雰囲気が、空気が違う。
いくつもある扉の向こうから、何やら音を立てて鳴いている。卑猥な奇声が微かに聴こえる。
オレは、思わず両手で耳を塞いでしまった。
この嬌声は、あの将軍に嫌々出されていた自分の淫らな声だ。
嫌だぁ――― !
そう、まるで売春宿のようなこの場所。
ぞくりとした。背筋が凍りついた。
どうして、こんな場所にロイはオレを連れて来たのだろう。
オレは、恐る恐るロイの顔を見上げた。
だが、オレと目を合わさないようにロイは、腕を強引に引っ張って用意された部屋の鍵を
ガチャリと開ける。
「あっ…」
僅かばかりの悲鳴がオレの口から漏れる。オレは部屋に押し込められ備え付けられている
ベッドへドサリ、と乱暴に投げ出されてしまった。
ロイは後ろ手で扉の鍵をかけ、投げ出されたオレの元にジリジリと歩みよってくる。
オレは今、自分の置かれている状況がわからない。
わかりたくなかった、オレは。
おずおずとロイに視線を移すと、ぎゅっと握り締められた拳。
血が滲む程、噛み締められた唇。
今にも、泣きそうに歪められ怒りを露にした顔。
そして、オレは震えていた。
無言のまま、ロイの手がオレのシャツにかかる。その動作にオレは、何故か怯えてしまった。
だからなのか、ロイの手が一旦とまるが、オレにはロイの手が震えているように感じた。
でも、次の瞬間。
バリバリと激しく音を立てて、破かれていく。
ロイの行動にオレは驚き、反射的にロイの手を拒絶し声を出してしまう。
「いゃ―ぁ…、ヤダ――!」
オレに拒絶も、反抗も許されるはずなどなかったのに。
オレは本当に傲慢な人間だ。呆れるてしまう。
殴られたダメージで力なく暴れるオレの両手をぐっと力を込めてベッドへ縫い付けられる。
悲鳴を上げるオレの頬をロイの平手で何度も叩かれる。逃れようとすると、ロイの逞しい
手が髪の毛をひっつかんで引き摺り起こし、また激しく頬を叩く。
それでも、ロイの瞳からは涙が零れそうにオレには見えていた。謝ったら許してもらえる
なんて、甘いものではない。
そんな事は、十分わかっていたから。「ごめん」の言葉も、「許して」の言葉も、言えない。
肌蹴られたオレの身体を凝視したロイの口からは、恐ろしい言葉が。
「何故だ ― !奴には許したのだろう。なのに、君は、 ―― 」
身体が強張り、震える。そう、確かに将軍にはこの身体の全てを許してしまった。
自分から、脚を開いたのに。
それなのに、ロイに怯えてオレの口からは悲鳴が漏れる。あぁ――、もう…。
乱暴に、ロイの手が震えながらオレのジッパーを下ろし、無理やりジーパンと下着を一緒に
剥いでベッド下へと投げ落とす。
「いや、いやー、ヤダー。た、頼む…から…、やめ……」
震えながら内股に力を込めて脚を閉じようとするけれども。
両膝を掴まれ、強引に押し開かれる。見られたくなかった、その場所は。
数時間前迄、あのホテル(売春宿)で将軍に散々弄ばれ奴の欲望の精液をしっかり飲み込んだ
後孔からは…。
白濁した液体が、厭らしく流れ落ちていたから。
ロイの手がオレの汚れた後孔に触れるのがわかる。そして、そこからすくい取るように
オレの視線に、ロイが白濁した液体に汚れた手を見せる。
目を背けようとしたけど、ロイの手がオレの髪を痛いほど掴み阻止して言う。
「どうしてだ――!ここに、受け入れたのだろう。ほら、見るんだ!」
「うっ…、おぇ― っ、げほ、げほ…」
ロイの汚れた手にあの将軍の手を、あの情事を思い出し胸の中から腹の中から気持ちの
悪いものが、外へ流れ出す。
オレは、激しく嘔吐してしまった。
そんな情けない姿のオレに、容赦なくロイの哀しみのこもった言葉が続けられる。
「何故、何故、奴の所へなんかに行ってしまうのだ――!」
「はぁ、はぁ…ひっく…、ひっく…」
「奴には良くて、私には、駄目なのか!エドワード…」
違う、違う、そんなんじゃないだ、とオレの声にならない言葉が揺れる脳内で繰り返す。
それだけは違うと、どうしてもロイに伝えなければ。
「ち…、ちがう。ロ、ロイが…いっ、嫌じゃ…ない」
オレは、渾身の力を込めて言葉を伝えようとするけれど、掠れてうまく言葉が出せない。
瞳からは涙が溢れだし、顔の傷に沁みて痛い。
だけど、ロイの顔はもっと痛そうだった。こんな顔をさせたいのではないのに。
「じゃー!なぜ、君は…」
そう言うなり、ロイは蒼色の軍服をバサリと脱ぎ捨てオレに覆いかぶさり、そこまでは
オレのぐらつく視界でビデオのコマ送りみたいに映像として見ていたが。
次の瞬間、オレの後孔と内臓に物凄い激痛が走った。
「ヒィ―――ッ!」
身体の芯を一気に貫く激痛に声が上がる。オレの身体の内側と外側がめちゃくちゃな感覚。
内臓を抉られる感覚。
身体を真っ2つに切り裂かれたような感覚。オレはこんな感覚に踊らされてしまう、そして
オレの口からは絶叫がほとばしる。
ロイの荒々しい息遣いと、ギシギシと安ベッドが軋む音が部屋に響く。
オレからは、叫び声のみ。あまりの衝撃に半分気が遠くなってくる。
すると、荒々しく掠れた声を絞り出すようにしてロイが言うのが、意識の向こうから
聴こえてくる。
「目をあけろ!」
「うっ…、ヒィ―!はぁ、いっ、あぁ――」
「目を開けるんだ!私を見ろ、ちゃんと―私を見るんだ!今、君の中に入るのは私、だ」
オレは懸命に目を開けようとするけど、内臓と後孔を荒々しく突いていく感覚に意識が
薄れそうになる。
それでも、これはロイにこんな事をさせるのは、オレの所為だからと。
息も絶え々になりながらオレはようやく瞳を開けると、そこにはロイの苦痛に歪んだ顔があった。
ロイの両手がしっかりと腿をつかんで、激しく乱暴に腰を動かし続ける。律動する腰に
身を委ねるように、オレの機械鎧の左脚も一緒にカチャカチャと揺れる。
「あ、ぁ――、いっ…ヤダっ…」
「見るんだ!私を、エドワード。奴は良かったのか、どうやられた、こうか―」
押し殺したように低い声で残酷な言葉を、オレの耳元で囁かれる。
フルフルと力なく頭を横に振るが、それが気に入らないらしく頬を叩かれる。
「いっ…、やぁ―、ち、ちがう…。そ、そんなんじゃ」
「どうして――!」
腰の動きが、いっそう残酷に強まる。もう、下半身の感覚が麻痺して半ば呆然とオレは
されるがままになっている。胸にくっつくぐらいに持ち上げられた両脚。
そして、押し開かれねじ曲げられている脚のつけ根が砕けてしまいそうだ。
オレは、かすれた哀願の声を漏らす。
「ロ、ロイー、いっ、痛い、痛い。や、やめて…」
「エドワード、私にひと言、言ってくれれば、それなのに―」
「ひっく、いっ、たい。ロイに迷惑、かけ、たくなかった、だから…」
「く、こんなに君のことを愛しているのに ― !なぜ、奴なんかの手に」
「つっ、ご、ごめん。ロイ、ごめん…」
決して謝ったから許されるものではないとわかっているけど。オレの口からは
その言葉しか出てこない。
ロイの口から、食い縛った歯のあいだから絞り出すような低い声が出される。
まるで、自分を責め立てるような声。
更なる怒りの矛先に激しく突き上げるように腰を叩きつける。
オレは好きな人とセックスしているはずなのに、いや暴行かもしれないけど。それなのに
身体は何も反応してくれない。
快楽を感じてくれない。あの将軍に犯られた時と同じように。
そう、感じていたけれど…。
だけど、何かがうごめいている。快楽は感じないけど、しびれるような感覚がうまれている。
その感覚に怯えるようにオレは、ロイの背に助けを求めるように激しくしがみついた。
「ロイ、ロイ…。何、これー…こ、こわい」
「エド…?」
あの将軍に抱かれていた時はこんな感覚はなかったのに、これは何だろう。
オレは翻弄されながらも別の恐怖を感じる。海の向こうからおしよせてくる波のように
何かがうごめいている―オレの内部で。何かがうねりを上げるように身を起こし始める。
こわい。
だが、みるみるうちにその感覚はオレを侵食していく。そして、その感覚に気付いてしまった
身体は一気に昇り詰めようとする。
オレはロイの背に爪をたてるようにしがみつく。自分の意識とは別に勝手に腰が、うねり始めて
いる。気が遠くなる。
「ロイ…、ロイ…助けて…」
「くっ…、今頃助けを呼ぶのか、君は―」
「ち、ちがう…。そうじゃない―。怖い、変…。身体が変…。堕ちるロイ助けてぇ―」
「エド――?」
「あ、ああああ――!ロイ、ロイ…」
「感じているのか?」
「――、堕ちる…。あっ、ああああ…」
オレはすごい半端じゃない声を張り上げてそのまま気が遠くなってしまった。自分がその後
どうなったのかもわからない。只、ロイの背に腰に激しくしがみついていた。オレの頬を冷たい
水が流れ堕ちていく。
それだけは、感じた。
* * *
頬に濡れた感触を感じてオレは、ふっと意識を取り戻した。オレはしばらく、よく事情がまだ
飲み込めていなかった。あれからどうなったのか。この身体が変になってからがわからない。
身体を動かそうとするけれども、どこもかしこも動こうとしない。だけど、感じる事はできた。
左手を指を一本、一本しっかり絡められているのがわかる。誰の指、手だろう。
視線を薄汚れた天井からゆっくりと映すと。今迄漠然としか映し出されていなかった瞳に
ぱっと入ってくる。
まっすぐな黒髪が…。
ロイの後頭部が目に飛び込む。ここに、いたんだ…。もう、いないかと思っていた。
捨てられたと思っていたから。それで当たり前だと思っていたオレは、それだけの事をこの人に
やってしまったから。
オレは、ロイに声をかける事もできずに握り締められている指にそっと力を込める。
身体中がズキズキと痛み、動かすことができない。だから、その指だけに感覚や神経を集中する。
と、オレの込める力に応えてくれるようにロイの手が握り返してくれる。
その手の熱さが、温かさが、力が…。
オレに涙を流させる。
「ひっく…、く、――」
声がかすれていた。そんな声のままオレは嗚咽を漏らした。
どんよりと湿気ったこの部屋にオレの涙声だけが、呼応する。しばらくの間、そうしていると。
「あやまらないぞ…。私は…」
ロイの低い声がはっきりと聞こえる。その時、オレはロイが口を、きいてくれただけでも
それで良かったと思った。
謝って欲しいとも思っていない。許しくれとも言えないから。
それでも、拒絶されていないだけ良かった。まだ、指は絡められたままだったから。
「ひっく…、うん。それで、いいから…。ごめん…」
ロイはぐっとエドワードの腕を引き寄せて裸の身体をきつく胸に抱きしめる。今の自分の
表情がオレに見られないように震える黄金の頭を胸に押し付ける。
「私は、あやまらないからな!」
「うん、うん、うん…」
オレはロイの肌蹴た胸を涙で濡らしていく。涙声で何度も、それでいいからとロイに言い続ける。
だけど、これだけはわかって欲しかったから。
「でも――、さっき見たいに身体が…変に、か、感じたのは、ロイ、だけだから…」
「―― …」
「ほ、ホント…、だから。それだけ、は。信じて…、くれー」
掠れる声を絞り上げながらロイに伝える。
あの将軍に抱かれていた時には感じることはなかった。ロイだから、あんな風に乱れて
しまった事を。全身が痺れてしまったように痛覚以外は、まだ感覚が戻っていなかったけど
あの堕ちるような感覚をオレに与えてくれたのはロイだけだということ。
これは、まぎれもない真実。
ぎこちなくオレの頭を押さえつけていたロイの手に優しさが戻る。そっと労わるように髪を
撫でる。それから、その手がオレの顎に指をかけて優しくゆっくりと上に向かせる。
オレの瞳からは涙の雫がポロポロと零れる。隠すことができない。重力にしたがって堕ちる。
ロイの黒曜石みたいな瞳がオレを見つめながら、口唇がかさなってくる。顔を斜めに交差させて
ほんとうに優しく、そっと口唇を割って舌が入ってくる。
初めてだった。
オレ達は、無言のまましばらくむさぼりあってからそっと唇をはなした。
お互いの口唇は血の味がした。
名残惜しそうに口唇がはなれてから、オレの意識はゆっくりと沈んでいった。身体は、糸の
切れた凧のようにくたりとロイに預けて。
* * *
次に気付いた時には。
心配そうなアルフォンスの顔が目の前に現れていた。アルフォンスからの話では。
ボロボロのオレを抱えて朝方、ロイが宿に帰ってきたそうだ。部屋に案内させた後は
しばらく出て来なくて心配したらしい。
なんとなく、その辺の記憶がおぼろげに蘇ってきた。
そう、オレをベッドに優しく降ろしてから傷の手当てをしてくれた。
虚ろな瞳でその手を見つめていたのを覚えている。ひどくやさしい手だった。
身体はだんだんあの猛烈な恍惚とした麻痺状態が回復してきてズキズキと痛み始めた。でも、
なんだか満たされた気分になっていく。
頬の傷を気遣うように、ロイの手がそっとあてがう。その手に触れようとオレは、自分の左手を
重ねる。ロイの顔が微かな苦笑いを浮かべているのがぼんやりとわかる。
それから、オレの額にそっと触れるだけの口付けをおとしていく。ぼんやりとしているオレの
両目を大きな手で閉じて、耳元でロイは低い音階の音色をオレに呟く。
「エドワード、眠るといい。次に目が醒めた時は何もかもが変わっていて、終わっているはずだ」
「――― …!?」
ロイの手の温もりが、オレの額から脳髄に吸い込まれていく。心地よい温かさを感じる。
オレは、それに浸透するようにズーンと沈んでいったのだ。
「兄さん、大丈夫…!?」
「あ、ああ―――」
「傷、痛む。ひどく殴られたでしょ…」
オレはアルフォンスの視線から逃げるように毛布をたぐりよせながら、くぐもった声で。
「オレが、悪かったから。いいんだよ。心配すんな…」
もっと色々オレに小言を返してくるかと予想していたが、意外にもアルフォンスは落ち着いて
いた。もう、全てが終わってしまったかのように。昨日の晩に起きたことについて何も言わない。
諦めているのか、呆れているのか、それともロイに諭されたのか。
オレの口からは、それを問う事はできない。
「そう、あのね…。大佐から伝言があるんだ」
「えっ…。何、何だって」
「3日後に、昨日手に入れた書類を持って大佐のところに来るように、だって…」
オレが眠りにつく間際に、ロイが言った言葉を思い出した。まるで魔法の呪文のようにオレに
唱えていった言葉。
「 …、わかった」
「そして、もう1つ。「何もかも忘れて眠れ」って。それだけ…。僕は伝えたからね…」
「う、うん。アル、ごめんな…」
「兄さん…。だから、眠って…」
「うん ―― 」
オレは毛布にもぐり込んで、眠りにつく。ロイが言った魔法の呪文を思い出すように。
でも、絶対に忘れてはいけない。
オレが過ちを犯したことを。それによって、悲しませてしまった人がいることを。
3日後、ロイに言われた通りに中央司令部に行くと。
ある噂を耳にした。
「とある将軍が失脚した」と…。
その将軍の名をオレは知っていた。そして顔も。あの将軍だ。もう、この中央司令部には
いないらしい。
失脚の理由は「買春」だ、そうだ。
どこぞの、ご令嬢を「買春」した罪によって失脚。こそこそと司令部内ではその噂で評判だった。
しかし、誰が内部告発をしたのかは謎であった。
だけど、オレにはわかった。
「ロイ・マスタング大佐」ということが。
「PROSTITUION」
黒き翼バージョン。すみません、更新が滞ってしまって(汗)
ロイの激しい憤激をそのまま受け入れるエド。
鬼畜ロイ炸裂なので、ごめんなさいです!「白き翼」とはまったく違うロイを書いてしまった。
どちらのロイをみなさんは選びますか。
絶対に謝らないロイが私的にポイントです。
桜 美由紀 2005/10/27
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