TAKE OUT!から始まる恋。
act.9











シーツの白さが印象的だった。そこに眠る人は頑なに人を拒むように丸く真っ白なシーツに隠れていた。
アルフォンスは帰り道この憤りの原因を考えていた。自分のことではない。兄のこと。
兄の今朝の表情。
兄の瞳に残る憂い。
兄のほのかに朱色に色づく頬。
そして、ある人の名を出すたびに表情はくるくると変わる。
何かを大切に思う表情。
何かを、誰かを思う表情。
それはまるで恋。


そんな兄を見てしまった。
だけど思われた人は、意外にも冷静だった。弄んで終わったような感じ。
兄の思いは、ここで断たれたのか。
と、それよりこの思いは禁忌の想い。
自分はどうするべきなのか。現実は絵空事通りではなかった。
だけど僕らは重い枷を背負っている。だから、想いぐらいは好きにさせてやりたかった。
好きにしたかった。
だから僕はあの大佐に怒りを感じているのだ。


「飲みすぎたと伝えてくれ、だって兄さん」
結局兄の真意は計ることはできない。複雑に絡み合った感情は今後どう作用するかわからない。わかってしまうなら自分らは人体練成などという禁忌を犯したりしなかっただろう、とアルフォンスは切実に考えた。
唯、この憤りだけが残るだけ。帰り道、黙々と考えた。それで、一つだけ結論を出した。それはアルフォンス自身は、この件にもう関わらないことだ。
アルフォンスはエドワードではない。また、エドワードもアルフォンスではない。
―――
ベッドから顔を出さずに彼は静かに聴いていた。だけど見えない表情がアルフォンスを余計に心配させた。
そして見えないにも関わらず、哀愁を感じる。それは兄弟だからわかる微妙な気配から。
あの男、ロイ・マスタングという奴に魂は震え怒りさえ感じる。
荒ぶる気を感じてかエドワードはベッドの中からくぐもった声でアルフォンスにひと言。
「昨日心配かけて悪かったな…」
と、何もかも終わったみたいな言い方をした。
それが余計にアルフォンスの感情を刺激させた。想いぐらい自由に飛ばせばいいのに。
だからなのか、アルフォンスは冷たく言い放った。
「高い授業料払ったね。兄さん…」
彼にしてみれば、慰めたつもりかもしれない。しかし、本人には弟から咎められたようなものだった。
言葉は短いけどきつい。
それに何ら反論することなくエドワードは深い眠りへと入っていた。


あの日からもう数週間が経とうとしていた。
その間、エドワードはロイを避け続けていた。そして、あれ以来悪い事も学んだようだ。
「ちょっとやめなよ! 未成年なんだから」
「いいじゃん。ちょっとだけさ…」
と、エドワードが悪戯っぽく酒を飲むようになってしまった。そんな多量ではない。ほんの舐める程度。
アルコール度数の低い物をちょっぴり夜飲む。
アルフォンスに気付かれないようにしていたが、夜が来ない彼に深夜の隠密行動はばれてしまう。
そして、呆れるアルフォンスといつもの言い合いが始まる。
けれども、何の拍子にこうなったのか。
エドワードが、ほろ酔い気分になってある時、口を滑らしてしまった。その時の彼はアルフォンスを見ていなかった。
どこか遠い目で闇を見つめながら。
「アル、こうして飲んでいるとあの日を思い出すんだ」
「あの日?」
もう忘れてしまったあの日。
忘れるはずのない日。
ロイ・マスタングに抱かれた日。
「何でだろうな…。あの腕が心地よかった
――
エドワードの瞳は潤んでいた。目元を桜色に染め上げてあの男を想っていた。
そんな恋する少女のような瞳を見せられてアルフォンスは、あの男はあのまま終わったのだろうかと考える。
人とはたった一夜だけ過ごした相手の事を簡単に忘れることはできるのだろう。
それも相手は良く知る金色の少年。抱かれた彼は忘れていない。しっかり胸に刻み込まれている。
では、その相手は…。


お互いが逃げていた。
そして、お互いが相手の出方を待っていたのかも知れない。交わることのなかった彼ら。
だけど必然的に出会う嵌めになる。
仕事柄仕方のないことだ。
いつもより数段不機嫌な顔でエドワードは司令部の扉を叩いた。












はぁ〜すみません。
まじ、一体何ヶ月ぶりの更新なのかしら?
それでも話はまったく進んでません(汗) とにかくエドはロイに落とされたね。
次回動く予定? だけど、更新は期待せずに待って下さい。待ってくれだなんて…。
すみません。あつかましくて。

桜 美由紀 2006/3/12




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