舞い降りた天使 Ⅱ
2人だけの空間になると、ロイは昨日からの熱い思いをエドワードにぶつけるように
玄関口で彼をしっかりと自分の胸へと抱きしめる。
強く。
「会いたかったよ。エドワード」
「く、苦しいよー。ロイ…」
ファーストネームで呼ばれたことでロイの心は甘く痺れる。今すぐにでも愛しいエドワードを
感じたくてたまらない。そこで、執務室でエドワードに悪戯していた事を思い出す。
あの時の続きを。ロイはそっと耳元へ唇を滑らしていく。
「あっ、そんなヤダー。耳はや、めろよって…」
エドワードの弱い耳尻を何度も甘噛みする。そして、白い滑らかな首筋をゆっくりと吸い上げ
時間をかけて辿りついた彼の柔らかい唇をロイのもので啄ばみ始める。
それに、応えるように恥かしげにエドワードも少しずつ自分から唇を開きロイを誘っていく。
それは、深く口付けをしたかったために待っていたから。
ずっと――。
ロイの舌が彼の口腔を少しずつ満たしていく。そして、エドワードの舌を絡めとっていく。
2人の口付けは離れることを知らないように何度も、何度も角度を変えながら続けられる。
エドワードの生身の左腕が、何か掴むものを探すようにロイの背へと回される。
どこかに摑まっていないと倒れそうで、怖かったから。
ロイの背に、肩にと、しっかり摑まり離さない。ついには、交わす唇の合間から
エドワードの苦しげな声が漏れ始める。
「あ、ふっ…、もう~」
そんな彼の様子に気付きながらもロイは、まだまだ味わい足りない唇を一時解放する。
エドワードの高揚した表情をゆっくりと覗き込む。
そう言えば、昨日はこんなに傍で彼の顔をしっかり見ていなかったと。
すごく会いたかった顔なのにと、ロイは優しい眼差しで確認するように彼を見つめる。
エドワードもそれは、同じ思いだった。ロイは両手で彼の小さな顔を優しく包み込んでいく。
「エド、顔をよく見せておくれ」
「う、~ん。ただいま、ロイ」
ロイは彼の澄んだ黄金の瞳をじっと満足げに見つめる。それから、今度は長い指先で
彼の唇に触れる。この口唇は自分だけのものだと示すように。
彼の長い指は滑るように唇から首筋へ、それから胸へと降りていく。そして、衣服の上から
エドワードの可愛らしい乳首を挟みそっと、引っ張る。ロイの両腕は、彼の細いがしなやかに
鍛えられた腰を掴みロイの熱く高ぶった物を摺り寄せ、再びエドワードの口唇を奪う。
今度は最初から強く激しく口腔を犯し、舌を絡める。エドワードはいつにない激しい口付けと
愛撫に翻弄される。やっと口唇が、解放されたかと思ったら今度は、腰の上を撫で上げられ
はじめ、エドワードはロイの肩口に顔を伏せてしまう。
「あっ、ロイ…。もう、ダメ、ここじゃ、ヤダ…」
彼の肩口で切なそうに鳴くエドワードに、それでも愛撫を続けながら。
「君が今すぐ欲しい。駄目かい?もう、私は我慢できないよ。いつも君は、私を待たせてばかり
いるからね…」
恥かしさと、ロイから与えられる快楽で彼の肩口から顔を上げる事ができないエドワードと、
その快楽を更に与え続けるロイ。2人の官能的な欲望は抑えることができない。
「はっ、あー。オレもロイが…、欲しい。でも、ここじゃー、あっ」
エドワードから素直に自分を欲しがる言葉を聞いてロイは満足する。彼は、愛撫し続けていた
手を急に止め、その止めた手でエドワードの膝裏と背中へと回し彼の体を横抱きに抱える。
急な浮遊感を覚えたエドワードは、びっくりして両腕でロイの肩を掴むしかなく思わず
彼を見上げる。
「ちょっとー、恥かしいじゃんかよ!やめろよ…」
「ん、今、降ろしてもいいのかね。自分で寝室まで歩けるかい?」
ロイは悪戯に笑っている。にやついたロイの顔を見て、エドワードは真っ赤になって
また、ロイの胸に顔を埋めるしかなかった。そして、小さな声で。
「お、お願いします…」
「今日は、素直だね。エド、久しぶりだからかな?」
「 ―― (怒) 」
ロイが楽しそうに自分をからかうので、むすっと彼の胸で黙っているエドワード。
だが、そんな態度でさえロイにとっては嬉しいのだ。
ロイは、エドワードを寝室へと運びベッドにゆっくりと横たえさせる。エドワードは恥かしさに
枕に顔を埋めたが、その枕の匂いはロイの香りがほのかに残っている。その事で更に、彼の胸は
高鳴りを覚える。
黄金の三つ編をほどく。髪は真っ白なシーツに流れる。清潔な白さと、その黄金色の輝きに、
これから触れても良いのだろうか、とロイは躊躇ってしまう。
そう、貴重な輝く宝石のようだから。
だが、ロイはすばやく彼の服を脱がしにかかる。まるで時間を惜しむように。今すぐにでも彼が、
どこかへ行ってしまいそうだったから。
彼も軍服を手早く脱ぎ2人は、素肌のまま抱き合う。自分の熱を、相手の熱をより感じるために。
先程の続きはまだ、終わっていない。まずは、口唇を犯しそれから、耳尻を噛み彼の快楽を
欲望へと変わらせていく。それに、応えるようにエドワードの唇は声を抑えることができない。
「あっ、いゃ…。そこは、やぁー」
エドワードのか細い声が紡がれていく。その声に更なる愛撫を開始するロイは、彼の乳首を
長い指でつまみ機械鎧との繋ぎ目である傷跡を優しく舐め上げる。傷跡はエドワードにとって
もっとも感じる場所。ひときわ声が、上擦るのを耐えるエドワードの表情はロイだけのもの。
誰にも見せたくない。自分だけの特権である、と示すためにロイは乳首をきつく吸い上げ
所有権である刻印を残していく。
声を抑えるために彼は、生身の左腕で自分の唇を塞いでいるのだが、その腕をロイに優しく
離され腕の柔らかい皮膚へと、ロイの口付けを変わりに貰う。
その行為だけでも、天にも昇る快感だ。そして、徐々に下に下がって行きエドワードの下肢へと
たどり着く。快感の象徴を優しくロイの口腔に含まれ舐め上げられる。その途端激しく彼の
身体は震え上がり、感度の良さをものがたる。
「いゃー、だ。は、ずかしいー、やめ、ロイ…」
自分の下肢にある黒髪の頭をどうにか外そうと手を添えたが、なかなか離してくれずに
感啼を上げる。しかし、その責めは弱まる事を知らず、尚も責め続けられる。余りの快感に
彼の黄金の頭が振り乱れ、長い金髪がシーツに渦をつくる。
「あ…、やぁー。いきそうー、お願いだめ」
「まだ、だよ。エド…、いくときは私と一緒に」
「お、おねがい…。はなして、ロイ」
そう、言うとやっとロイは彼の下肢から口唇を離す。激しい快楽から解放されたエドワード
だったが、今度は後孔へとロイの愛撫の指が伸びてくる。下肢と、後孔とを交互に緩やかに
撫で回され続けた。
エドワードは、行き場のない激しい官能の波に身を任せるしかない。その間も、ずっとロイの
熱い下肢の高ぶりを感じながら。
彼の後孔を丹念に愛撫しつつ、エドワードの内股。誰も見られることのない場所に
所有の刻印を刻み込んでいく。
彼の脚はガタガタと震えている。機械鎧である左脚からもカチャカチャと啼き始めている。
ロイにとっては、それが合図のように。
「もう、入れても平気かい。エド…」
優しく内股を割り自分の身体をエドワードの胸へと密着させる。
彼の貌を見るために正面から。彼の何も考えられないぐらい高揚した表情は、とても扇情的で。
また、薄っすらと開かれる口唇にロイは興奮するから。
「あ、うん…。そっと…、して」
ロイはエドワードの膝裏を自分の肩へと抱える。それから、優しく彼の口唇に啄ばむだけの
口付けをする。エドワードにとって、凶器かもしれない灼熱の棒をゆっくりと突き刺していく。
できるだけエドワードに負担をかけないようにゆっくりと。
が、いくら後孔をほぐしているとはいえ、本来受け入れる場所ではないので、どうしても
彼から、くぐもった声が漏れてしまう。
「あ、いっ…、痛いー、うっ」
「すまない。もうちょっと我慢してくれ。エド…」
少しでも痛みが和らぐようにロイは、優しくエドワードの黄金の頭を撫でる。
そして、彼の下肢へと手を伸ばし包み込むように愛撫する。自分のやっている行為は、
エドワードには負担だろう。
だが、彼と1つになりたい、そして身体も共有したいと心底思うから。
ロイは年甲斐もなく、この少年に興奮してしまうのだ。
「あ、はぁー。入って、る。い、いぃ――」
エドワードの口から甘い声が漏れだす。その声色だけでも十分な刺激をロイは感じる。
ゆっくりと後孔を突き進み、ゆるりと腰を使い始める。自分の快楽を満たすように。
「あ、あ、あっ…、イャー。そこ、なんか変――」
エドワードの貌に変化が現れる。その表情にロイの欲情は増す。そして、彼は欲望のままに
腰を激しく揺らし、彼の中を掻き乱していく。
エドワードから忙しなく快楽の悲鳴が漏れ続ける。
「は、あーっ。痛っ、はぁー、いゃぁ…、あああ――」
「エドワード、いきそうか。う、一緒にいこう…」
「あ、う~ん。一緒…、ロイー」
黄金の髪を振り乱しながら、エドワードは激しく喘ぐ。そして、身体が堕ちる感覚を味わう。
どこへ堕ちるのだろう。
わからない…。
怖い…。
そう無意識に感じる彼は、ロイの肩にしがみつくしかできない。ロイの腰の動きに
あわせながら自分も快感の波に酔っていく。
ざわざわと自分の腰が甘く痺れる。
たまらない…。
堕ちる…。
自分の欲情の化身が涙を流す。
エドワードはひと際、高く甘い声色で啼きながら堕ちていく。
ロイは、官能の渦にのまれていくエドワードの貌をうっとりと見つめながら、2人は同時に
天へと昇りつめ激しい快楽を共有した。
ロイはエドワードの身体をしっかりと抱きしめたまま、快楽の余韻に浸っている。
このまま、溶け合っていたい思いを感じている。
ふと、胸の中にいるエドワードを見る。自分の胸にぴったりと密着するように頬を寄せている。
その頬には、薄っすらと涙の跡が。彼の身体は力を失い、だらりとロイの身体に身を任せ
黄金色の瞳は瞼に、伏せられている。
全てをロイに、預けている彼は…。
どうも、いってしまった…。天の彼方へとロイの愛しい人は。
失神したようだ。
そんな彼の様子に、嬉しさを感じる。気を失ったエドワードをそっと横たえ、自分の腕に
大切に抱き寄せる。ロイは満ち足りた気分で暫く彼の顔を見つめる。
それは、飽きることなく。
只、じっと見つめるだけ。愛しい彼が、目覚めるのをゆっくりと待つ。
すると、黄金色の長い睫が震え始める。
「う、う~ん…」
「気がついたかい。エド…、大丈夫か」
なんだか、驚いたような表情をしているロイの顔が目の前に現れる。そんな彼をぼんやりと
エドワードは見つめている。よく、事情がつかめていないようだ。
だが時が経つに、つれて徐々に覚醒していく。そこで、初めて自分が気を失った事実に気がつく。
それと同時に、一気に恥かしさを覚え真っ赤になりながらロイの胸元へと逃げ込む。
「何をそんなに、恥かしがっているのかい」
「あ、アンタが―――」
「よかったのだろう…」
「あ、あんまり…、は、激しくするから…」
「そう、言ってくれるな。これでも加減はしたつもりだ。大丈夫かい…」
「あ、あ…う、ん――」
やっとのことで紡ぎ出した声は、ひどくかすれていた。何回も咳払いして声を絞り出す。
それは、どんな風に自分が失態を繰り広げてしまったか、ありありと伝えてしまう。
大丈夫だ、と答えたが。
全身が痺れてしまったように身体中が快楽の渦の中にいるようで。まだ、全然感覚が
戻ってきてない。なんとか、落ち着かせるために、じっとこのまま時が経つのを待つしかない。
「君は、可愛いな!いつも私を驚かせる…」
頭上から降りてくる声に、ゆっくりと頭を上げる。そこで、穏やかに自分を見守るロイの
黒曜石の瞳にぶつかる。気恥ずかしさを感じるが、瞳だけをそっと逸らしながら。
「あ、アンタは気持ち…、良かったのかよ」
「十分だよ。君が一番だね…」
「――、オレは誰が一番なんて、ないから。ロイしか、知らない…」
「ありがとう。君は私の大切な人だからね。そうであってくれて嬉しいよ」
エドワードは、ロイの言葉にまだ震え続ける生身の左腕をそっと彼の腰へと回す。まるで、
先程の言葉の返答をするように。言葉では照れくさくて言えない思いを態度であらわす。
エドワードにとってもロイが、大切な人だと。
そんな、愛らしい彼にロイは微笑を浮かべずにはいられない。それは、先日もである。
あの執務室での出来事を思い出す。
「ありがとう、エド、万年筆。君は覚えていたのだね」
まさか、昨日のことを今頃。
それもこんな場所で言われるとは思ってもいなかった。
エドワードの顔は真っ赤に色づく。
「一応な、この前…。言ってたじゃん…」
そっけなく答える彼が、愛しいと感じる。心の片隅にでも必ずロイの事を思っていてくれる
彼がたまらなく、愛しいと。
「大事にするよ。私の大切な人からの贈り物だからね」
「う、うん。サンキュー」
再確認するように、抱きしめあう2人。
そう言えば、寝室に入ってからすぐに蜜月を開始したから、この寝室にはカーテンも引かれて
いなかった。
窓辺から月の明かりが、この部屋を照らしている。月明かりで見るエドワードの身体は先程の
情事で薄っすらと火照っている。そして、月明かりが映える美しい黄金の髪、その姿は美しい
天使のようにロイには見える。
誰にも渡したくない。このまま、私の傍へと。
だが、またすぐにこの子は旅立つのだろう。だから、今は。この姿を眼に焼き付けたかった。
離したくないが、お互いの目指すものの為には、仕方がないことだとわかっているから。
ロイはわかっているから、悲しい言葉を彼に聞かねばならない。
「いつまで、ここにいるのか。エド…」
悲しい言葉だが、できるだけ一緒に、この短い時間を共有するための言葉でもある。
「…、2日後。セントラルに行くよ」
エドワードとて離れたくないという思いは一緒である。だが、それができないことも
わかっている。
このような、人の思いを無情という。
だが、2人にはわかっているから。無情でも無情に非ず。
「そうか、ずいぶん急だな…」
言葉数の少ない会話の1つ、1つに大切な思いが詰まっている。
「私は、この万年筆を貰ったが。エド、君に渡すものがないなぁー」
ロイは何か、自分の代わりにと思える物を渡したかった。
だが見つからない、こんな時に限ってと。
色々と考えているロイに優しい笑みを浮かべながら彼は、ゆっくりロイの腕から抜け
身体を起こす。
それに、つられるようにロイも身を起こしエドワードを正面から見つめていると。
「オレは、ロイのその思いだけでいいよ。この胸に一杯あるから。ロイから貰ったもの」
エドワードは大切そうに、自分の胸を生身の左手と機械鎧の右手で包み込む。
この胸にあるから。大切なものいっぱい。
その姿にロイは。
私は天使を愛してしまったのか、と目の前のエドワードを見つめる。
白き翼と黄金色の髪、瞳をもった天使がロイの前に穏やかに微笑んでいる。
何か、衝動に駆られる。色んな感情がロイを駆け巡る。それは、言葉に表すことができない。
それほどの強い思いが、ロイの中に渦巻く。
だから、自然と彼は。
「エドワード…、抱きしめても良いかい」
ロイにしては、オドオドとした言い方にエドワードはきょとんと瞳を丸くする。
だが、彼の瞳は真剣で。エドワードは照れくさそうにロイに微笑む。
「え、今更…。何だよ――。でも、いいよ」
ロイは了解を得てから、大きな両腕で優しく大切に彼を抱きしめる。
今迄以上に。
そして、少しでも彼の願いが叶うようにと思いを込める。
ロイは天使を抱きしめる。
end
某有名、HN○大河ドラマを見て思いついた話です。
「私は、これをもらったが、代わりに君に渡すものがない」という台詞にくらりときてしまった。
桜 美由紀 2005/10/17 改新版。
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