人 間 兵 器 act.2
エドは、言われた会議室で書類を書き上げ
書類をロイ・マスタング大佐に提出して軍司令部を引き上げようとしたが。
ここで、悪夢がいや、現実が待ち受けていた。
本日、自分が向かった現場で一緒になった数人の軍人達と出遭った。
余り気持ちは、進まなかったが挨拶はと。
「お疲れ様です」
するりと、彼らを通り過ぎる予定だったのに。
しかし、連中はエドを直ぐには解放してはくれなかった。オレは、こいつらに何かしたかよ!
虫の居所悪そうだなと、思いながら。
また、あの視線を感じた。
粘りつく舐めまわすような視線と一緒に、敵意も感じられた。
「オイオイ、国家錬金術師殿だぜ。」
「いゃぁー、見事な腕前でした。さすが軍の戌だけある」
「アァーもう、終わりですかぁー。やっぱ、おつむのできが違うからなぁ」
「さっきは、お疲れさんでした。国家錬金術師殿…」
「ふ〜ん。遠目でしかさっきは、見なかったけど。いやぁー、綺麗な顔してるなぁ。君」
にやにやと、嫌な言い方だ。
エドは、とにかくその場を無視して立ち去ろうとしたが、その時の行動が彼らの勘に
さわったのか。
それとも、意図していた事だったのか…。今になっては、それは、どうでも良いことであったが。
1人の男が、エドの右手を掴み上げた。
「まぁ、まぁ、そんなに逃げなくても取って食いやぁしませんよ!おや、右腕は機械鎧ですか…?
もったいないなぁー。綺麗な身体が台無しだぁ!」
「はなせよ!」
「どんな手を使ってなったんだか、国家錬金術師殿」
こいつらの意味している事が、とても不愉快だった。難癖をつけてやがって、言いがかりだ!
エドは、ギリッと連中を睨み返す。
「――!?何が言いたいんだ!あんた等は…」
くすくすと笑い声が、響く。そして、どいつかが、いらぬ言葉を吐き出した。その言葉が、
今から始まる惨劇の序章に過ぎなかったのだが。
「おい、場所変えようぜ!国家錬金術師殿にお似合いの場所にな!」
「そう、人間兵器には、なぁー!」
エドはその場にいた数人に無理やり、人気のない一室に連れ込まれてしまった。
逃げ出そうと思えば、逃げ出せたのかもしれないが。そうは、できなかった。
【人間兵器】この単語が、ぐるぐると言葉が頭をよぎる。
兵器だから…?何なんだよ 、オレは、エドの頭で自問自答が繰り返される。
エドの身体は、部屋に連れ込まれ投げ出さる。エドは連中を睨み上げた。
きつく黄金の瞳で。
だが、それでさえ彼らにとっては格好の餌食のようである。
「どんな手を使ってなったんだが」
「あぁー。例の後見人で、なんとかって大佐じゃないのか…」
「男の癖に、綺麗な顔してんじゃん。垂らしこんだんじゃ、ないのか…」
「は、はははは!」
エドは、自分の後見人であり、一応尊敬もしている彼を「ロイ・マスタング大佐」を愚弄されたのが
我慢できなかった。
そう、思った瞬間、立ち上がり、連中に殴りかかっていた。
己の目的の為に、必要であった機械鎧の鋼の右手で、決して人を殴る為に装備したのではない。
鋼の右腕。
だが、機械鎧の右手は鈍い音をたて、相手の顔にヒットした。
「つっいってぇー!何、しやがんだ!このガキ、なめやがって!」
男は、殴られ血がにじむ唇を押さえエドに向かって指をさして言った。
「人間兵器の分際で、味方に傷を負わせていいと思っているのか!」
エドの心に稲妻が走った。
味方。どこに、そんな人間がいるんだ。どこに…。
ここにいる人間の誰一人として、エドワードの事を味方、否、人として見ているだろうか。
この場には、いなかった。
【人間兵器】としての国家錬金術師しか、いなかった。
その言葉に怯んだエドの鳩尾に容赦ない拳を叩き込まれる。突然の攻撃に身構えることも
できずに、エドの身体は二つ折りになり床に膝をついた。
「うっ…くっ…うぇ…ゲホッ…」
吐き気と苦痛に身を悶えさせている身体をさらに、引き起こされ頬を強打され床に叩きつけられた。
「うっ…くっ…」
口の中から血の味が…、鉄の味がする。
一体どこが、出血したのだろう。
ぐらつく頭を振りながら、それでも彼らに再度殴りかかろうとするが、多勢に無勢。
その上、最初のダメージが強かったせいで、エドの攻撃は虚しく終わってしまう。
そして、傷つくのはエドの身体ばかりだった。
何度も、何度も、殴られ蹴られ、それでも起き上がり床に叩きつけられる。
言いようのない悪意を込められた拳に、殴打され続けた。
攻撃はエスカレートしていく…その場の異様な不陰気が此処にいる人間をそうさせるのか。
エドの機械鎧の右腕を掴み上げ、男の1人が言った。
「あぁーやっぱ、この右腕で殴られたから、すごく痛いですよ。さすが、人間兵器だ!」
「これじゃ、こっちの身の安全を確保しなくちゃいけないなぁ…」
「――!?」
エドは、これから起こる事を只、じっと待つしかなかった。
身体が思うように動く事ができずに、繰り返される暴力に歯をくいしばるしかない。
切れた唇からも血は流れ落ち、床を点々と汚していく。
「おい、その辺にパイプないか、鋼の錬金術師殿には、お似合いの攻撃をしてあげなくっちゃな。」
「ちょっとや、そこらの攻撃には耐えてもらわないとなぁ。その為の訓練さっ…」
「あぁぁぁっー。そうだな、人間兵器なんだから、体はってもらわないとなあ!」
この人気のない部屋には、軍で使われなくなった会議用机や椅子、その他色んな物が
押し込められていた。
その中にある鉄パイプが、鈍い色を伴って連中の目につく。
もう止められない彼らの惨劇は。
「あぁぁぁー、ちょうどいい、これじゃないとなぁ…!」
連中の1人が、喜々として見つけ出した鉄のパイプをエドにみせつける。
そして、パイプは男の腕によってエドの身体めがけて大きく振りかぶられた。
殴られると判り、エドはとっさに機械鎧の右腕で身体をガードした為、
ガキンっと金属と金属のぶつかり合う激しい音が、この部屋に鳴り響いた。
男は、その衝撃に痺れる手を驚いたように見たが、次の瞬間には気味の悪い笑みを浮かべ
再び殴りかかった。
しかし、何度もガードできるはずもなく、エドの身体はやむなく、鉄のパイプの餌食になった。
一際、大きく振りかぶられ思いっきり身体を殴打された。
その瞬間、鈍い骨を断つような音が、エドの身体に響いた。
「うっ…くっ…あうっ…」
エドの身体は九の字になり床に倒れ臥す。
吐き気と、激痛がいっぺんにエドの身体を駆け巡り、呼吸をする事さえ困難になってしまった。
内臓は軋み激しい嘔吐きは治まる事を知らず、エドの身体に留まっていた胃の内容物を嘔吐した。
「ぐっげほっ…うっ…」
エドは、床でのたうち回るしかなかった。
その姿を見ても彼らの攻撃がやむ事はなかった。何度も、何度も、凶器に強く殴打され続ける。
それでもエドは、かけがえのない人を傷つけられた思いの方が痛かった。
ロイを、ロイの事を愚弄された痛みに比べれば。
そして、【人間兵器】と言われる自分。
選んだ道は己、自身だが、決して【 】何か、じゃない!
オレは。
激痛と吐き気に、ぐらつき、血に濡れる視線で連中を睨みかえす。
絶対に譲ることはできないこの思いを守るために。
そんな些細な反撃も彼らには通じなかった。
エドの身体はボロ雑巾のように全く役を成さない。
もう、起き上がる力もなく血で汚れた床に倒れ臥していた。
荒く息を吐き続けるエドの乱された黄金の髪を鷲掴みにされ顔を上げさせられる。
「あっう…っ」
「おい、…俺達にも味見させてもらおうぜ!国家錬金術師なった、身体をなっ…」
「…!?」
エドの身体は硬直した。何故、こんなことになってしまったのか。
嫌な、予感がまさか!?
見下ろす連中の瞳からは、言いようのない黒い嵐が渦巻いていた。
畏怖・嫉妬・嫌悪・憎悪・羨望、様々な負の感情の瞳。
エドの身体を冷たいもので、身体中がしびれていった。
男が、抵抗できないように両腕を床に押さえつける。
もう、そんな事をしなくてもエドの身体は、満足に動くことはできなかったが。
そして、誰の手なのか判らない無数の手が、エドの服を乱暴に引き剥がしていった。
身体全体で抵抗をすれば、容赦なく殴られ叩かれる。もう、身体の痛感が痺れて麻痺していた。
ちょっと、両手を合わせれば良いのに…。
だが、それさえ出来ないでいた。肝心な構築式である己、自身の意識がぐらぐら
と、白身かかっていたから。
連中の狂気は始まったばかりだった。
to be continued
次回
更に、エドは過酷な状況に陥ってしまいます。
そろそろ、助け出さねば…(悩)