人  間  兵  器    act.14
















額に何かのっている。でも、不快な気はしなかった。
そよ風が、頬を撫でていく。
心地が良い…、ずっとこのまま眠っていたい…。
ふと耳を澄ませば、ペラペラと何か紙が、めくる音が聞こえてくる。

誰だろう、この音はとっても心地よくてずっと続けていてほしい。
でも、誰だろう。

重い瞼をそっと開けてみると、ベッド横の椅子に座って何かを読んでいるロイの姿。
エドの気配に気がついたのか、優しい眼差しを向けて顔を近寄せてきた。


「ん…っ、すまない…。起こしてしまったか」


ぼおっとロイを見つめ返すエドは、まだ半覚醒の状態のようだ。
ロイは手の甲をエドの首筋にあてがい、熱を確かめる。そこは、熱を溜めてしめっぽく熱かった。
だが、あの高熱を出していた時より幾分下がっているように思えるのだが。


「先ほどより、幾分下がったようだね。良かった」
「…ロイ…」
「どうした…。まだ、眠っていてもいいんだよ。ここにいるからそれとも?」
「…少し、起こして自分じゃ、無理みたいだからさ…」
「わかった。そのままでいいよ。エド…。そうだな、目が覚めたついでだ、何か食べられそうか?」


エドは、ふと思い起こす。一体いつから食事をしていなかったのだろう。
しかし、今のところ腹が減るわけでもなかった。恐らくこの左腕に刺されている点滴によって栄養を
補給されているのだろう。


「……わかんない」
「そろそろ、食事を採ってもいいだろう。ちょっと待ってなさい。消化に良いものを作ってあげよう」


素直に、うなずくエドの様子にロイは、安心する。


「……うん」


いまだ、少しぼんやりしているエドに枕を背中にあて、もたれかけさせた。
だるそうに身体を委ねるエドの様子が扇情的で、思わずその白い首筋に顔をうずめたくなる衝動を
ロイは抑える事となったが。
こんな弱りきっているエドに、欲情してしまうとは。


「起きて、眩暈とかしないか?エド、気分は…」
「ううん…。大丈夫みたい、ごめん色々…」
「エド、君は何度も謝りぱなしだね。もう、謝る必要はないんだよ!」
「…ごめん」
「ほら、また…」
「あっ……///」
「少しは、元気が出てきたかな?しばらく、待てるね?」
「…うん、待ってる」


ロイは、エドの額に優しくキスを残すと部屋を後にした。
さりげなく額に残されたキスの感触に頬を染めるエドは、やっと下がり始めた熱が別の意味で
上がりそうで困っていた。


左腕は、だるい。 


点滴の為の針が、まだ、エドの左手に刺されている。
液体が、静かにエドの身体に注がれ続けていた、ゆっくり、ゆっくり、とぽたりぽたり。
寝室に1人っきりになったエドは、パタパタと窓際のカーテンが揺れている事に気付いた。
ああ、窓が開いていたんだ。だから、あの心地よい風が入っていたんだ。

やっと周囲の状態に気をまわすことができた。
……書類が、椅子にロイ忙しいだろうな、とかとりとめもない事を新鮮に感じ始めた。


久しぶりだ。外の世界は、こんなに明るかったんだ。
オレ…。


ぼんやりと流れるように揺れるカーテンを眺めながら、エドはロイが戻ってくるのを待っていた。
もう、暗闇の底ではない明るい光のある場所は、とても居心地が良くてせっかちなエドでも
いくらでもこの時間を…時を待つという行為が、穏やかに感じられる。




ガチャと扉が開く音がする。
それを、目で音を追う。
扉から現れたロイの姿を確認する。
そして、ほっと息をつく。
一連の動作が流れるように行われる。
そして、ロイの姿に安堵するエドだった。


「待たせたね。エド」
「ううん……」
「!?どうかしたのか…」
「…窓から入ってくる風が気持ちよかったから。つい、ぼうっとしてた…」
「そうかい、さあ…、スープを作ってみた。少しでも良いから食べてくれないか?」
「………へぇ…すごいや、ロイが作ったのかよ…」
「まぁな、味は保障するよ」


ロイは、サイドテーブルに温かい湯気がたつスープを置き、エドの身体を優しく傷に障らないように
ロイの胸に抱き起こす。


「起きてつらくないか、エド」


背後から優しく問うロイの声が、とても穏やかに耳に届く。


「…うん…何とか…」


本当は、身体を起こしているだけでも疲労は溜まり、傷の痛みは止む事を知らない。
その上、体内の熱によって頭の芯はぼーっとしていた。
だが、彼の…ロイの胸に優しく抱きとめられる事は、苦痛ばかりの痛感を温かい優しさに
変えてくれたから。このままで…、と思ってしまう。


「そうか、辛くなったらいいなさい。ほら、食べれるか?」


スプーンを左手に掴みはしたエドだったが、傷の痛みと体力不足でカタカタ震えてしまい、
うまく持てない。
思うままに、自分の身体を動かせないことに多少の苛立ちを表すエドにロイは、
そっと手を添える。


「大丈夫だよ。私が、食べさせてあげよう。左手は点滴の針が刺さっているからね…無理だよ」
「……えっ…自分で、できるよ!」


そうは、言ったもののエドの手はうまく力が入らずにいた。


「ほら、口をあけて」


その行為に頬が熱くなるのを感じる。熱が上がりそうなエドだったが従順に従うしかなかった。
唇の端が切れ、蒼赤く腫れていて中々大きく口を開くことができなかったけど、
ちょぴり恥かしげにロイの行為を受け入れる。


「………///」
「っ…口の中滲みていたっ…」
「仕方ないよ。どうだ…?」
「………っ痛いけど、おいしい」


勧められるままにスプーンを口に運ばれる。一口、美味しかった。
何とも言えない位に温かい、ポタージュスープだった。
二口目をスプーンから啜ると、口から喉に、お腹に温かさが満たされる。
今迄で一番に美味しかったと思う。 


「よかった…。君のそんな顔を見られて。さぁ、もっと」
「うん美味しいよ!こんなに美味しいと感じることはなかった。いつもアルの傍で…
ちょっと戸惑ったりしてたから。アイツは食べられないから、オレだけ喜んでいいのかなって、
いつも思ってたから。ロイ、美味しいや…」
「エド…。アルフォンスは、そんな事気にしないよ。逆に君が美味しそうに食べる姿を
見ていたいんじゃないかな?」
「………そうかな…?」


物思いに考え込み始めてしまいエドは、スープを飲むこと暫し、忘れてしまっていた。


「君の今の目標は少しでも、身体を回復させる事だよ!さぁ、もう一口、口を開けて」


エドは、手元に温かい湯気をあげているスープを見ながら、一滴の涙が頬をつたっていった。
その様子に、ロイが心配そうに覗き込んだ。


「…どうした エド、具合が悪くなったのか?それとも、痛むのかい…」
「ううん…、そうじゃなくて…」


なんだか、ロイの温かさを知った。そして、アルの温かさも。
だから…。
涙ぐんでしまった。


ロイの言葉通り、今自分が出来ることは身体を回復させる事だとエドは心底思った。
ゆっくりと勧められるスープを味わいながら、感謝する。
全てに…。
余り多くはない量のスープをやっと飲みおわったエドは、ロイの胸に身を委ねたまま
暫しの時を過ごす。

ロイの胸は、今飲んだスープのように栄養を自分の体内に与えてくれるような気がした。
背後からは、ロイの優しい手が小さな黄金の頭を撫でてくれている。
あの黒い嵐とは、正反対の明るい世界での穏やかな時間…2人で過ごす時間。


「……エド、アルフォンスに会わなくていいのかね?」
「………っ、うん…アイツ心配してた、だろ…」
「あぁ…、まだ早いようなら、しばらくしてアルフォンスをここへ呼ぼう。君は1人じゃないよ!」
「うん、わかってる…。もう、ちょっとしてからアル呼んでくれるかな? まだ、身体きついや!
――― ごめん。ロイっ…なんだか、お腹一杯になったら眼がまわってきた。何だか、
ぐるぐるしてる…」


エドは、だるそうに顔を俯き生身の左手の甲で自分の額を覆った。


「エド…!?貧血を起こしているのかもしれない。急に、食事をして身体がびっくりしているんだよ。
ちょっと横になろう。いいね、エド」


エドは、ロイに身体を支えられてはいたものの、起きてはいられない程の浮遊感に気分が、
悪化してきた。
心臓の鼓動が、自分にでもわかるほど凄い音を奏でている。ドクドク…と。


「………やば…っ…」


ぎゅっ瞳を閉じて眩暈に耐えるが、目の奥でチカチカと光がフラッシュしてしまい
ロイの腕を強く掴んだ。


「エド!?大丈夫か?ちょっと待ってなさい。タオルを持って…!?」


ロイは、ベッドに横たえたエドのそばを少し離れようと立ち上がろうとしたが、
エドの手にしっかりと引き止められてしまった。


「………だい…じょ…ぶ。だから…しばらくすれば…治まるから、ここにいて…ロイ…」
「エド!? あぁ、すまない。ここにいるよ…君のそばに…」


その言葉に安心したエドは、握り締める手の力を緩めてベッドに身体を預けた。
体調の悪さを変わってやりたくても、どうすることができない。ただ、エドが願うままに
傍にいてやることしかできないロイだった。
せめて出来ることは、黄金の小さな頭をゆっくり優しさを込めて撫でてやる事だけ…。
ゆっくり撫で、黄金の髪を梳いてやる。
さらさらと黄金の髪は、ロイの指をすり抜けてゆく。


「…もう、ちょっと身体が回復したらアルフォンスに来てもらうようにしよう…エド」
「……うん…アルに…心配かけて、ごめんって…言わないと………」


しばらく間、体調の不快さに身を固くしていたエドだったが、時が経つに連れてゆっくり…、
ベッドの底へと、深く意識を沈めていく。
そして、漸く、浅く短い呼吸が聞こえ始める。


「…エド?…眠ってしまったのか、やはり身体は、休息を求めているようだね。お休み…」


眠りにつき、そして目覚めるこれを繰り返すことによって、
ゆっくり身体は、快方へむかっていった。ゆっくり、ゆっくりと…。
身体は…。






































































to be continued










お待たせしました!ちょっぴり更新遅めかな?
すみません…甘い〜〜…。
一応、切なく甘いストーリーを目指して(望)
甘いですかね?自分では…上手に批評ができない未熟者なので
次回は、少しばかり?暗い感じに…拍手の話と連結するかな?
でも 予定です あくまでも…