【秘 密 結 社 act.4】











エドワードが去った室内ではヒューズがこの場を取り仕切っている。何故なら、ロイがエドワード欠乏症に陥って呆けているからだ。いまだ、デスクにペタリと片頬をくっつけて放心状態だ。
あ、よだれ発見!
メンバーの視線を浴びているなど気付く事もなく。既に、末期状態である。
「お〜い♪ロイいつまで呆けてやがる」
ヒューズの言葉にピクリと反応するや否や、やっといつものロイに戻り奇声を出す。
――何ィ…、呆けてなどいない!」
それでも、不貞腐れるロイの表情で相当ダメージが大きいとメンバーは判断した。そこをヒューズはうまく利用して第三段階へと進める。
「おまえも仕事終わったんだろう。なら今日は寝るぞ!」
「ああ、そうだな。私も疲れた。仮眠室に行くとしよう…」
確かに疲れた。
安息の地であるエドワードとは、まともに会話もできずにいたから。
ロイが席を立ち、この軍会議室を出て行こうと扉を開けて一歩二歩と歩いていくと、何やらゾロゾロと自分の後を追う足音がする。まあ、気にせずに目的地に向かっていくが、やっぱり後をゾロゾロとついてくる。
バッと振り返ると会議室から数名がそのままロイの背後にいる。
その数名とは、ヒューズ、ハボック、ブレダ、ファルマンの以上4名である。
何やら彼らの顔は、にやにやと笑っている。
実に気分が悪い。何なのだ!こいつ等は。
と、思いながらも自分がいつも使っている仮眠室へと行こうと廊下を右へ曲がろうとすると何と、この連中がロイの両腕をとり左側へと連行した。
「オイ、何事だ!私はいつもの部屋に行くのだ!離さんか―!」
大佐という威厳はこの場では通じないようだ。強引にロイは彼らにある部屋へと連れて行かれたのである。



「貴様ら何故私は4人部屋の前にいるのだ!説明しろ!」
いきりたつロイの肩をドウドウと叩くヒューズがにこやかに詳細を説明する。
「あのな、ロイ。こんな事件後だ。おまえを独りにする訳にはいかん。いつ何時、スカーが襲ってくるかもしれん。ここは俺達がおまえを護衛する意味でこの4人部屋の仮眠室で今日は過ごせ」
「なぬ…。う〜ん、それをいうなら鋼の、の警備をもっとだなあ。いやいや、国家錬金術師を一ヶ所に召集して護衛させた方が安全性は良いのではないだろうか。ヒューズ!」
ロイの口元がにやりと自信満々に上へ引き上がる。彼にしてみれば、何としてもエドワードの傍に行きたいが故だ。
そんなロイの不敵な表情に、メンバーのこめかみに青筋を浮き上がる。
いかん、気付かれてはならないのであるこの計画は…。しかし、敵ながら天晴れだ。だからと言って引き下がるわけにはいかない。こちらにも「秘密結社」である意地とプライドがある。
「それは大丈夫スッ!ホークアイ中尉にアルフォンスも一緒の部屋ですからね」
「そうだ!そうだ!」
「それにまさか敵さんも女性用仮眠室にいるとは思わないでしょうから」
「ぬう〜…」
確かにごもっともな意見をヒューズや部下達に進言されてしまった。自分のことは何とでも対処はできるが、手負いのエドワードが気がかりだった。
それも部下達の機転によって安全な所へと身柄を確保されている今、ロイの出番は悲しいがなかったのである。
「仕方がない…」
ロイが渋々了解したことによって、メンバーの顔は気味が悪いほどにっこりとロイに微笑を返している。
まんまとロイは「秘密結社」のメンバーによってエドワードと引き離されかつ、自分の身柄さえも監視される晩となった。
本人が気付いてないのだから、それでOKなのである。



*          *          *



「おまえ達、まだやる事があるのか…」
ロイが呆れた声で言う。
さあ今日の疲れを癒すために就寝しようとするが、部屋はまだ爛々と明かりが点けられている。これでは、ゆっくり眠ることもできない。
「ああ…。ロイ先に寝ろよ…」
「大佐邪魔しないで下さいね。俺ら忙しいんですからファルマン准尉、欠乏症発症の場合てのは、規約何番だった、け…」
「規約Jですよ。ちなみに本日は規約Nも適用されていますよ」
「マジかよ。准尉俺でも気付かなかったぜ…。やっぱり規約が全て頭の中に入っている奴と一緒だと後の作業が楽だな」
「そうすね…。ええと、規約Nがと…」
「??????…」
一体こいつらは何をやっているのだ。本日の勤務はもう終了したはずだ。それに本件の報告書も私があの会議室で全て回収したのに、何の報告書を書いているのだ。
ロイの頭には謎のマークがいくつも現れていた。
それもそのはず彼ら。
「秘密結社」のメンバーにはエドワードと接触した場合、その報告書を提出しなければならないのである。
一体誰に?もちろん、それは実弟アルフォンス様に、だ。
この報告書は軍内で提出する書類より非常に厳しくチェックされる。
それでも誰一人、この業務を嫌がるものはいない。
皆、日課のように日報を綴っていくのだ。その際、重宝がられるのは、ファルマン准尉である。全ての規約が頭の中に一言一句欠かさず記憶されているので、報告書を書くときは彼に色々相談すると仕事がはかどるのである。
だから、本日。
ヒューズはこの部屋割りで、彼を一緒にしたのである。
メンバー内でも画策はあった。
熱心に何やら書類を書いている連中に呆れながら、ロイはベッドから降りトコトコと部屋を出ようとする。
と、厳しい声がロイの行動を遮った。
「ロイ、おまえどこに行くんだ!」
「ああ、ちょっと便所だ…」
「いかん!俺も一緒に行こう」
「はあ?何を言っているのだ、ヒューズ!連れションなんて勘弁してくれ」
「うっ…」
確かにそうである。何が楽しくて大の大人が連れションなどするものか。
そこでヒューズはこの場で、会議を催した。
「ロイちょっと待ってろ。そのままだ!すぐ終わるからな」
「ちょっと、何故待たねばならないのだ!」
と、反論するが律儀なロイはしっかり待っている。


またまた、この4人部屋の仮眠室で「秘密結社」の会議が行われる。
「どうする」
「このご時世ついて行くのが良いかと…」
「さすが、ファルマンと言いたいが」
「おい、東方司令部の智将!どうする」
「んんん…。あまり監視しすぎるのも大佐に我々の存在を気付かれる恐れがあります」
「中尉が一緒だったら、エドの奴もそう勝手はしないだろう」
「もう後は寝るだけすよ。エドの奴も…」
「では、ロイを単独で便所に行かせよう!一応戻ってくる時間があまり遅いようであれば、直ちに身柄確保という事で」
「了解!」
ヒソヒソと行われていた会議が終わり。
会議内容をロイに報告する。
「ロイ、行ってよおーし!なるべく早く戻って来いよな。スカーに会うとマズイからな」
「何故私は、便所に行くにもおまえ達の許可がいるのだ!」
「まあまあ、そう怒りなさんな。今日は特別だ…」
「大佐ここで立ち話より早く行ってくださいよ!俺らまだやることがあるんすから」
「くそ!言わずともわかっている」
この連中の態度にムカつきながらも足早に部屋を出る。
少しは自由というものを与えてくれよ、と内心プンプン腹を立てながら。


しかし、ここで誤算が発生したのだ。
もうエドワードとロイが出会う事はないだろうと思っていた「秘密結社」のメンバー達だったのだが、この後2人は遭遇することになる。
同時刻にエドワードも同じ事をホークアイとアルフォンスに言っていたのだ。
そして彼らもロイ同様に単独でトイレに行かせたのだ。
あくまでもホークアイが一緒について行くと言い張った。
だが、エドワード自身「トイレ問題」は重要であって、あまり立ち入ってもらいたくない。
それを意地でついて来ようとするホークアイにちょっぴり嫌気がさして強引に部屋から出てきてしまった。
規約H
「エドワードに"両性体の身体"の件で意見しない。本人が嫌っているから」
(実弟アルフォンスもしくはホークアイ中尉が意見、又は注意を促すのみ)
これがあるので、アルフォンスもホークアイもあまり強くは言えない。
まさか、ロイと遭遇することないだろう、と彼らもちょっとばかり油断していたのだ。



「はあ、うざい!今日は何かすっごくアルや中尉がかまってくる…」
ブツブツ文句を言いながらトイレの洗面台で感情のまま手をバシャバシャと洗うエドワード。
ここは男子トイレ。
少しばかり、ここで涼んでから帰ろうと思っていた。
トイレは涼んで良い環境ではないのだけど。それでもアルフォンスとホークアイがいる部屋よりマシだから。
まあ、そんな偶然が重なり合ってついに2人は出会う事になる。
自分一人が使用するつもりでいた「トイレ」を開ける奴がいた。一人になりたかったエドワードは明らかにムッとなった。
誰だよと、半分不機嫌になりながら扉から入ってくる人物を見ると。
「鋼の、…」
「あ、大佐…」
ロイは便所の戸を開けた先にまさか、エドワードが居るとはまったく思ってもいなかった。
ああ、金色が眩しい。
驚きのあまり、暫く呆然とするロイは急に我に返り奇怪な行動を起こす。
まず後方を確認。廊下を確認。よし、誰もいない。
そう思うと、ガチャリと便所の扉に内鍵をかける。
これで安心。一息ついて、やっとこれでゆっくりエドワードと正面から会えると顔が思い切り緩んでしまう。
エドワードは、変な行動をするロイを呆れて見ていた。
「おい、大佐!アンタ今日めちゃ、変!だけど…」
「そう言わないでくれたまえ。エドワード…」
ロイは両腕を広げてエドワードを抱きしめにかかる。それを阻止しようと、ロイの胸を左腕で突っぱねる。
「ウッ…、そんな逃げないでくれたまえ。久しぶりなのだから」
「くっ、もう〜」
半分諦めて大人しくロイの胸に片頬を寄せる。
実を言うと、この2人既に付き合っているのだ。もちろん「秘密結社」の連中、アルフォンスには内緒でだ。
その上このロイ・マスタング大佐「秘密結社」のメンバーが隠し続けるエドワードが両性体であることも、既に知っている。
恐るべき男だ。一体いつの間に。いつから。それは秘密事項だそうだ。
「エドワードよく顔を見せてくれ。ああ、機械鎧が…。痛まないかね」
「あ、うん…。ちょっとな。薬飲みに来たところ。アルがいる前じゃ飲みづらくてな…」
「そうかい。もっと早くに助けに行く予定だったのに、何かと邪魔が入って…」
「別にいいってよ!これぐらい大したことじゃないし…」
「いや、今日はどうも外野連中が私に付きまとって君に会うこともできずに…」
「う、ううん。確かに今日はうざかったな…。何でだろう。やっぱスカーの所為」
「まあ、そうだろうね」
そう結論図ける2人。
「秘密結社」が、彼ら2人が接近する事を頑なに阻止していることなど気付いていなかった。
その点は、「秘密結社」のメンバーも救われるだろう。
それでも2人は、誰にも気付かれないように、ひっそりと愛を育んでいた。
毎回その時間わずか、数十分である。
それほど「秘密結社」の監視は厳しい。
そして、今日もやっとその短い時間を死に物狂いで手に入れたロイだった。
貴重な時間を濃厚に使おうとロイがエドワードの桜色の口唇にキスしようと。エドワードもその雰囲気に流されそうに瞳をそっと瞑った瞬間。
はっと!?何やら感じた。
せ、背中がぞくり。さ、寒くないのに鳥肌が。
ロイもエドワードも勢いよく個室の方に視線をやると。
そこには。










次回にて最終回と言ってたけど、長くなったのでここで切ります。すみません(汗)
続きます。
さあ、ロイにとって敵か味方か。
ロイを虐めるはずが、エドワードに会わせてしまった(汗) それでも、ひどい扱いだ!

桜 美由紀 2006/1/5




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