雨  rain U



















「君達…!オレだけ、だ!アルフォンスは関係ない!」


雨の所為だ。
いつもは、このぐらいでは切れたりしないのに。やっぱり頭がぐるぐると回り続ける。


悲鳴と共に…。


その言葉を吐き出した、と同時だった。
ロイはエドワードの胸倉を掴みソファーの背に身体を叩きつけた。
彼の瞳は、恐ろしいほど黒かった。暗闇の黒。


「軍の戌の分際で、私に意見するのか!」

ぐるぐる回っていた頭が、更に回転する。
もうー!なんだよコイツは…、あたってくるなよ、と回転しない頭が訴えるが抵抗する事も
言葉を返す事も、せずにエドワードはただ、黙ってロイを睨み返した。
何をするのも、うざいから。
だから、唯一の抵抗手段として鋭く黄金の瞳を大きく開けて睨んでいた。


――― !」


ロイの表情が固まる。無言の反論に更なる怒りを感じたのか、ロイは一気に彼の服に
手をかけ始める。
一体、何事だと更にエドワードの瞳は大きく見開かれるがロイは、そんな事も構わずに。


「じゃー!軍の戌らしく。腰を振って貰おうか…」


まさかこんな言葉が彼の口から出るとは思いもしなかった。
小汚く歪んだ顔はいつものロイ・マスタングではない。誰だ…?オレは知らない!
こんな人、知らない…。
だんまり、を決め込んでいたエドワードの口から。


「ちょっと…!アンタ、何考えてんだよ。やめろよ!何、怒ってんだよ!アンタらしくないー」
「私らしくない…?いつになく冷静だよ。私は、私自身は…」
「違うよ
――!何か、あったのかよー」
「君に言う必要はない!」


ぴしゃりと、そう言い終るとロイは、エドワードをソファーの上で後ろ向きにさせズボンを
脱がせる為にベルトに手をかける。


「や、やだ
――!こんなの、やだ――!」
「うるさい!」


エドワードの頬は、3発ほど容赦ない力ではたかれる。只でさえ頭痛がしていた頭が更に
揺れたと同時に力も…、抜けた。
この威圧的なひと言を言った後は、もう会話らしいものは何も交わされる事はなかった。
ロイは拒絶の声を出すエドワードの唇を自分の腕で塞ぐ。そして、事務的にズボンを下ろし、
脚を開かせていた。


「うっ、…ん」


くぐもった声が微かに出るだけだった。抵抗しようにも中途半端に下ろされたズボンや上着が
抵抗を妨げる。
下着が引きずりおろされ腰を高く持ち上げられる。その格好に、やっぱりオレは「軍の戌だ」
と、フラフラする頭で思考がよぎる。
咽かえるような血の匂いと痛み、悲鳴、絶望。
あの「雨の日」が繰り返し映像となって自分の脳内がみせる。観たくなくても、観せられた。
人間の脳の構造は、こんな時に何故…。そして、人間の精神とは脆いものだ。
忘れたいと思っていても可能にさせてくれない。
ロイの長く太い指が乱暴に押し入ってくる。身体の些細な抵抗など気にもせずに
押し入ってくる指の感覚は、気味の悪い異物感と痛みを与え続ける。


「いっ…、うっ」


やめてと頭は繰り返すが言葉にならず。そして相手に伝わる事もなく宙を彷徨っていく。
絶望だらけの頭から、少しだけ相手の様子が伺えた。呼吸がひどく荒くなっていると…。
オレ、何かこの人にやらかしたっけ。いつもは優しいのにな…、あれは蜃気楼の幻だったの
だろうか。
だが、現実は…。

乱暴に身体を掻き回したロイの指よりも、もっと固く太いものがいきなりエドワードの
後孔に押し当てられる。
エドワードは恐怖に呻いた。
ぐいぐいと無理やり押し入ってくる感覚に頭の芯が白くなっていく。
激しい痛みが襲ってくる。その痛みは、エドワードの身体の中心を貫いて往復し始める。
一体いつになったら、この責め苦から解放されるのだろうかと頭の芯が真っ白に
なりながら考えた。


どのぐらい長い時間続いたのだろうか。ふっと気が付いた時には、激痛に耐え続けている
エドワードの身体を背後から抱きしめてくる腕があった。
その腕は、狂おしいほど力強く抱きしめていたエドワードの身体を…。
矛盾している。だけど、それだけでもエドワードにとって救いだった。触れられる腕が
熱く感じる。人肌を感じる。
ロイがやっと、欲望を吐き出す寸前にエドワードの耳元で、ひと言呟く。


「すまない…、エド
―― …」


その言葉と同時にエドワードの意識は彼方へと…。




ぼんやりする頭が覚醒を始める。
最初にエドワードの目に入ってきた光景、それは天井だった。


「あっ、う、いたっ…」


気付けば、服を直されソファーに寝かされていた自分に薄ら笑いしてしまう。
ふっ、情けねぇ…涙もでねぇーや、と自分の今の状態に呆れてしまう。暫くの間、ぼっーと
天井を見つめていた。天井から降り注ぐ光を生身の左腕で遮るように上げてみる。
腕は、ゆっくりと動く。身体中ズキズキと痛むが、感覚を取り戻すべくじっとしていた。


――――


すると人の気配を感じる。気配がする方へ顔を傾けてみるとそこには、自分をこんな状態にした
張本人がいた。その彼はエドワードが、横たわるソファーの下に座りもたれ掛かっていた。
彼のこの行動にエドワードは、びっくりした。
何んでいるんだよ、と出て行ったとばかり思っていたから。だが、そんな彼に言葉をかける
気にもなれずに、エドワードは痛む身体を無理やり起こしソファーから立ち上がる。
そして、ロイを見下げる。
ロイの顔は、何かとっても思いつめた表情をしている。彼を見下げながらエドワードは、
たった一言だけ彼に言葉を放つ。


「帰る…」


エドワードの掠れた声は、シトシトと降り続く雨のようにこの部屋に浸透していく。
彼の声にロイは、はっとするようにエドワードを見つめ返した後悔という表情を
ありありと浮かべて。
ロイの今の顔を見たくなかった。
どうして…。それは自分の非力さを思い知ってしまうから。
大佐、頼むからそんな顔でオレを見ないでくれとエドワードは目を背ける。


「すまなかった…。エド、雨が
―――


言い訳をする情けなさからエドワードの顔を見ることができずに視線を逸らしてしまう。
お互いが視線を合わすことができない。
だけど、エドワードは雨の言葉に反応してしまう。


「雨、かよ…。オレ、だって
―――


エドワードは、言葉の続きを途中で区切る。そして、ロイの視線から逃げるように
この執務室から出て行った。パタンと静かに扉が閉まる音だけをこの部屋に残して。
外は、まだ雨…。
このどんよりとした街並みに降り続く。いつやむとも知れず、降り続く。
その雨の中をエドワードは1人濡れながら街を歩く。フラフラと力なく、痛む身体と心を
引きずるように歩いていく。
この雨の中。遠い記憶の…、あの雨の中。
ロイに犯されながら狂気の映像が浮かび上がっていたが、泣けなかった。
あの時、泣けていたら何か変化しただろうか。
だが、この降り続く雨の中で泣けなかった涙が頬を伝っていく。今頃、この雨雫と一緒に
地面に堕ちていく。
一滴の涙は、水溜りへと円を描いて波紋を映し出す。
この雨で、この罪を流してはもらえないでしょうか。お願いです…。助けて…。




その晩。エドワードは熱を出した。


















end
rain after …

このサイトの初エロです。
その当初、いえ今も模索中ですが、全然書き方やら描写がわからずに悩んだ作品です。
しかし、書きたかった!エド無理やり犯される話。度々私の作中に登場する必須アイテムです。

雨の日、結構憂鬱になる事は多々あるのでは何気ないひと言に傷つき、傷つけたりと。
救済編として「雨 rain after」 2人の気持ちが少しでも晴れますように、と思いを込めて。


桜 美由紀 2005/10/12 改新版。







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