TAKE OUT!から始まる恋。
act.2
カランカランと、心地よい鈴の音が来客の訪れを知らせる。
店内は、黄昏時の赤みがかった黄色の照明で照らし出さている。落ち着いた雰囲気で薄明るめに
おとされた照明の灯りが時間をゆっくりと感じさせてくれる効果を出している。
いつまでも、夜の闇へと更ける事のない世界。
数組の客人がそれぞれに話を咲かせテーブルは、賑わっている。
まるで異空間に迷い込んだようだ。
「こっちだ。鋼の、」
キョロキョロと物珍しそうに辺りを見回すエドワードをロイは、いつも慣れ親しんでいる
テリトリーへと案内する。
「アンタ ――、いつもこの席で食べてんの?」
「まぁね。ここが、一番落ち着くのだよ。時間に追われる事もなく…」
「ふう〜ん。まっ、いいじゃん/// この店…」
「――― !?」
いつも、やる事なす事、全てにおいて反論してくる彼の言葉に、幻聴が聞こえたのかと
思ってしまった。
だが、当の本人のエドワードはテーブルに左腕の肩肘をつき頬杖をついてロイの視線から
逃れるように、そっぽを向いている。頬が桜色に染まっているように、いや照れているように
見えるのは、自分が都合のいいように解釈している所為なのだろうかと、ロイは思う。
いまだに、腹の探りあいが続くテーブルへ店主が、にこやかにオーダーを聞きにやってくる。
「いらっしゃいませ。マスタングさん。今日は、珍しいですね。お連れの方と一緒とは」
「///ああ…。まあ…、、、職場関係でな…」
何とも、曖昧な返答で店主からの質問をロイはかわしていく。
何故なら、どう答えようもなかったからである。
こんな少年を誘って食事をする事になるとは思ってもみなかったから。だが、誘ったのは自分。
「そうですか。随分とお若く、可愛らしいお客人ですね」
エドワードの肩が僅かにピクリと反応するのがわかる。いつものように怒鳴りつけるかと
思ったのだが、どうも今回は、場をわきまえているようだ。必死に自制心を総動員して抑えている
のが、その震える肩でわかる。その様子を見て取れるロイは、心内でくすりと笑っていた。
「………」
エドワードは、にこやかに2人が会話を交わしているのを尻目に相変わらず、頬杖をついたまま
なるべく自分の顔が彼らの目にとまらないようにしている。
そう、琥珀色の瞳と美しく鮮麗された容貌を隠していた。
そんな彼の思惑とは関係なく、店に入った瞬間から先客達は場違いな場所に現れた少年
エドワードの容貌と容姿に魅入ってしまっていた。
黄昏時の色に、似ている黄金色の少年の姿を。
だが、本人はそんな事とは露とは知れず。
「私は、いつもの、を。それと、君は…?」
ロイはエドワードにメニューを尋ねるが、相変わらずロイと瞳を合わせようとはせずに、短く
答える。
「アンタに、まかせるよ…」
「そうだねぇー。では、彼には店の本日のオススメと―― …」
彼は、店主に慣れた口調でオーダーしていく。その後も、ロイとエドワードは相変わらず、
お互い瞳を合わせずに、会話を続けていく。
「よく、来るんだー。この店」
「…、まあ。そうだね。よく、来るな。落ち着くのでな」
「いつも――、独りなのかよ…」
「そうだね。この店は、ほとんど独りだな…」
「ふ〜ん、―― 」
やはり、会話にぎこちなさが出てしまう。何を話していいのやらとロイもエドワードもお互いに
言葉を選んでしまうが。
「…あの、オレここに連れてきても良かったのかよ」
今までの、無遠慮な言い方とは違った珍しく、しおらしいエドワードの口調にロイ自身も
びっくりしてしまうが、そんな彼に気付かれないようにと、こちらも一生懸命に言葉を探す。
何故、こんなに気を使ってしまうのだろうと思いながら。
「別に、かまわんよ。私が、誘ったのだから。それよりほら、出てきたよ。ここの味は
絶品だから、さぁー、食べて見なさい!」
徐々に、テーブルに注文の品が並んでいく。どれも美味しそうな湯気と匂いを出しながら。
店主は馴染みの客に、いつものように接している。その2人の姿に軍司令部で見る事のない
ロイ・マスタングの姿がここにあった。
そして、その遣り取りを横目で探りみるエドワードがいた。
彼に気付かれないように注意しながら。何故、こんなに気になるのだろうか。
エドワードの胸に謎が残る。
「ほら、来たよ。遠慮せずに…」
「///…。遠慮なんて最初からしてねぇーよ!オレ、すっげぇー、食べるんだからなー。全部
アンタの奢りだから、来てんだからな!後で、払えません〜なんて、言うなよ!」
「大丈夫だよ。何を、そんなにムキになっているのかね―!?君は…」
「うるせぇー!」
テーブルに並べられた食事のどれから手を付けていくべきか悩む。問答無用にロイに、色々と
難癖を付けていたいくせに、いざとなると手が出せないでいる。
彼の戸惑っている姿をしばらく、ロイは見ていた。
何故、そんなに彼の行動、仕草に気を取られてしまうのだろう、と思いながらも。
どれから手に付けていいやらと迷ってしまっている彼にロイは、オススメの皿をまず、彼に
食べて貰おうと。
「これから、食べてみなさい。素材が良いのは申し分ないのだけど、それ以上に人手間かけて
味付けしてある。絶妙な味わいがあるのだよ。この肉はね…」
先程までと違って、ペラペラと滑るようにロイの口から料理に対する褒め言葉が告げられる。
何となく、いつも軍司令部で話すロイとは違った雰囲気にエドワードは戸惑いながら勧められた
料理を口に運んでいく。
「美味しいや…」
素直な気持ちを言葉に出す。味の事を色々言葉で表現する以前に、一言「美味しい」の言葉が
エドワードの口から零れる。
彼のその表情に満悦するようにロイは、テーブルに出された様々な料理を彼なりに説明を
加えつつエドワードに勧めていく。
次第に、彼らのぎこちなかった会話がなくなっていく。ありのままの姿をお互い微妙に
曝け出し始める。
お互いが、今まで知らなかったいや、わからなかった、知ろうとしなかった一面に気付き始める。
そして、2人のなかでお互いの認識が変わり始める。
「アンタは…、食べてんの?」
「ああー、食べているよ。それより、君の食べっぷりを見ているのが、楽しいねぇー!」
「えっ、そうかよ。別に、普通だよ!」
「いや、そんなに美味しそうに食べる人間の顔を見るのは、誘った者として光栄だねー」
「へへっ、そうかー!」
自然と、視線を合わせていく2人。
いつからかは、そんな事どうでも良くなってきた。
ふと、気付けばエドワードの琥珀色の瞳は、ロイの手元を興味深く捉えていた。
彼の瞳に良く似ている琥珀色のグラスの中身に。
「なぁー、アンタ。それ何、飲んでんの?」
いつもの物をと、頼んだロイの手には琥珀色に光るグラスが握られている。
「ああー、これかね。ここに来た時の私の楽しみだよ、これは」
カランとグラスの器の氷と硝子が重なり合う音が響く。
綺麗な音色が、エドワードの耳に届く。その音が、何かを合図する音色のように、彼の好奇心を
かきたてる。
「ねぇー、オレにも、飲ませて…」
エドワードの桜色に上気した口唇から、ぽろりとその言葉が紡がれる。
「何を言っているのだね?君は、子供じゃないか…」
「うっさいなぁー!!!子供、子供言うなよ!一応、ちゃんと自活してんだよ。オレ…」
「だが、未成年だ。ははは…!」
「もう、――― !」
と、エドワードがロイの視線からプリッとそっぽを向ける。
その表情が、ロイの心に何を告げたのか…。今となっては、全ては後の祭りだけれども。
それでも、変わりつつある自分の心境に戸惑いを感じながらも彼に対して思う。
もっと…、もっと…、彼が変わる様を見てみたい、変えてみたいと。
それは興味本位だったのかもしれないが、確かに自分は思ったのだ。
「ほら。飲んでみるかい?」
「えっ…!?」
こっそり、自分のグラスをエドワードへ渡す。エドワードは悦んで受け取りグラスを口にするが
一口、口にしたエドワードの顔からは、何とも言い難い表情が現れる。
味というより、熱いものが舌を通り越して喉から胃へと流れ込む。そして、流れた先である胃が
かぁー、と熱く感じる。
「―― う、これ――って、美味しいのかよ?」
「はははー、ほらね。まだ、君は大人の味がわからないのだよ!」
「何だよ!子供、扱いするなよ!何、飲んでんだよ、一体それぇー」
「ウィスキーだよ。この色と香りが堪らないねぇー」
ロイは、エドワードからグラスを奪い取ると美味しそうに味わって飲む。
その姿に競争心を燃やすように、エドワードも他の酒を強請り始める。それにロイが再度未成年
だろう、と念を押しても彼についた焔はやまない。
とうとう、ロイは彼のためにオーダーを入れる事となる。内心、冷や々ものだ。
出された飲み物を嬉しそうに、眺め味わうように飲むエドワードの姿は、言い知れぬ何かが、
ロイの胸中に焔を燃えたたらせる。
何なのだ、この感情は。感情を言葉で表しても良いのだろうかと。
「あっーこれ美味しいや、甘くて…」
「そうかい。君の口にあってよかったよ。だが、内緒にしていてくれよ。とくに、ホークアイ
中尉や、君の弟、アルフォンスには…」
「びびってんの。そうだねぇー、尻に敷かれてるもんなぁー!中尉にはね!」
「失礼だなぁー!それを言うなら君の弟君の方もだろう!」
「えっ――、うっせぇーなぁ…」
2人、それぞれに合った酒を飲みながら気ままに色んな話題を話していく。時間は緩やかに
流れていく。余りの心地よさにその流れに気付く事はなかった。
ロイとエドワードは、楽しそうにテーブルを囲みながら話を弾ませる。
緩やかに流れる時間の中で、ふとロイはエドワードを見つめている事に気がつく。
頬杖をつきながら、琥珀色の瞳がロイの顔を見つめている。
それは、黒曜石の瞳がエドワードの顔を見つめているということ。
お互い気付かない間に。
お互いを見つめている。
琥珀色の瞳は、自分の手に持っているグラスの液体のように、キラキラと揺れながら
ロイの顔を妖しいほど、艶かしく映し出しているように見える。
そして、薄く形良い口唇が桜色に艶やかに光っている。何か物欲しげに、薄っすらと開いて
いる。
彼の琥珀色に揺れる瞳はどのように自分を映しているのだろうか、とさえ考えてしまう。
語っていた口を閉じて自分の容貌をうっとりと見つめているロイに気付いたのか
エドワードが、そんなロイの瞳を遮るように言葉を出す。
「何―っ、みてんだよ―――!うにゃ〜」
「!?…、君ねぇ――、うにゃーとは!はあ―、しまったなぁ…」
少し、舌足らずに言葉を紡ぐ彼の様子に酔いがまわっているなと思いつつも。
彼の桜色に上気した容貌を見つめ続けるロイ。
その様子を、ウザイと言いながらも陽気に会話を弾ませるエドワード。
そんなエドワードに思わずロイは、思うままの言葉を贈る。
「君は、少し酒を飲ませた方が、可愛らしいよ…」
ロイから、可愛らしいと言われた事に腹を立てたのか、それとも気恥ずかしさを覚えたのか
先程までロイの瞳を見ながら話していたエドワードの視線が少し、逸らされてしまう。
彼の逸らした顔には、明らかにほてった目元が色っぽく桜色に彩られている。
ロイの胸に嬉しさが湧く。何故、彼にと思いながら。
「かわいい ―― 、とかいうなよ…///」
か細くだが、反論するエドワードの言葉が更にロイの心に何か灯らせてしまう。
ふと、何を思ったのか…。
いや、何が浮かんだのだろう…。
数刻の後、ロイは彼を連れて、この店を後にする。
すみません。エドに酒を飲ませてしまいました。良い子のみなさん、飲酒は20歳からです。
保護者も(ロイ)守りましょう。
桜は…(笑)です!ほぼ毎日飲んでます↓だから、浮かんだ「ネタ」なのです。
只今、ロイもエドも微妙な感じ。
桜 美由紀 2005/10/22
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