TAKE OUT!から始まる恋。
act.4











アパートの鍵をガチャガチャと開けるロイの姿を、横目にエドワードは壁に身体をだらしなく
預けている。
ロイ・マスタング大佐の部屋。
そこは、階級とはあまり関係のない極普通のアパートであった。酔っているようなのだが、
しっかりロイの住まいの外観をチェックしているのである。好奇心満々で辺りを物色している
エドワードにロイは声をかける。
「ほら、入りなさい。鋼の、」
先に部屋に入るように、ロイは顎でしゃくる。
そんな、横柄な態度に噛み付くこともなくエドワードは素直に部屋に入っていった。
今の彼の行動は、本当に単なる好奇心から成り立っているように思える。
「おーじゃーまーしま〜す♪」
取りあえず、リビングへと進む2人。
「おい、鋼の、水だよ。飲みなさい!はぁ、しまったな…」
「おー!サンキューすっげぇ〜喉、乾いてぇ〜何がーしまっただよ―!」
「だからだよ…」
「どうもねぇーよーだ。うにゃ〜」
渡されたコップの水をあっという間に、飲み干しながらエドワードは饒舌に喋っていく。
彼の妙な語尾が気になりながら、ロイはため息を漏らすのであった。
もう何も考えずにこのまま、彼を寝かしてしまおうと。その方が、絶対良いと思うロイだった。
そうでないと先程の路上の件を蒸し返してしまいそうで、己に自信がなくなってしまったからだ。
何の自信にと、問いたいところだが。彼は少なからずも先程の行為をしっかりと覚えている。
それは理性をもってのことだ。相手のエドワードは、といえば。ロイからして見ればかなり
謎であった。何を考えているやら、感じているやら。
「鋼の、もう今日はシャワーを浴びて寝てしまいなさい」
「えぇ
――、何でぇー!オレェー、もっと大佐と話したいー!ほらぁ、あの錬金術の構築方法が〜」
小さな子供が駄々をこねるように彼は、我が家のソファーでバタバタと足をバタつかせる。
その態度が可愛らしくもあるのだが。おっと、いかん、いかん。ロイは今、自分の心の中で
思ってしまった言葉を慌てながら手で掻き消すが、やはり耳を疑うような返事が返ってきた
ことに動揺が隠せなかった。
これは彼が酔っているからだ。私の知っているエドワード・エルリックではない。
ここにいるのは、只の酔っ払いだと心に言い聞かせるのだった。
―――
独り空中で何やら手を振り回しているロイの背後から、酔っ払いの声が再び聞こえる。
だがそれは、あの口がまめっていない先程までの言葉ではなく、トーンをおとしたいつもの
彼の声が、独り言のように告げる。
――ホントだよ。オレ、アンタと話したいと思った。それだけ…」
「………」
ロイからの言葉を待たずに、エドワードは先程ロイが説明してくれた浴室へと消えていった。
その後姿をロイは、目で追いつつも何も言葉が返せない。
完全に調子が狂ってしまった。
いつからだろう。そんな事わからない。ただ、彼の琥珀色の瞳に
――
ロイは、それ以上考えるのをやめた。この歳で一体、この感情をどうしたら良いのか
わからずに、気付かずにいる。

今迄こんな機会は、数多とあったはずだ。機会とは女性相手なのだが、それなりにうまく
対応してきた。女性達は魅力的に私を誘惑し、そして私もその好意に甘え、甘い蜜を頂く。
どの女性達ともうまく付き合ってきた。だが、ただ1つ欠けていたものがある。
それは、どの女性にもむさぼるような欲求を感じた事はなかった。そして、付き合うことに
躊躇うことも悩むこともなかった。
だから、この現状を悩んでいる。私は…。
そして、酔っ払っているはずと思い込んでいた彼が実は、しっかりしていたのではと。
私は一杯食わされたのか。そう思うとこの感情は何なのだ、と考えずにはいられない。
この苛立ちをどうしたら良いのやら。
女性相手ならば、まだしも。相手は男性で、それも少年だぞ。

浴室の方から水音が聴こえ出したのを耳で確認してロイは、サイドボードからボトルを
取りだしグラスに注ぐ。自分の中で駆け巡っている不可解な感情を消すためにと思ったのだが。
琥珀色のウィスキーと琥珀色の瞳の少年がシンクロしてしまう。
「はぁ
―――、」
そこで盛大な長いため息をついてしまうロイだった。
そして、何気に時間は過ぎていく。
ふと気付けば、浴室へ行ったきり戻ってこない少年が気になる。まさかやっぱり酔っ払って
寝てしまったのかと、思いロイは浴室へと足早に行く。

浴室からは、先程から変わらずにシャワーの水音が聞こえ続けていた。
「おい、鋼の、まだ入っているか!いいかげん出てきたら…」
水音にかき消されてしまいそうで、大きめに声をかけるが、無言のままだ。
ロイは、再度声をかける。もしや、倒れているのでは、嫌な予感が胸を走り抜ける。
「鋼の…、大丈夫か!おい!」
やはり、水音しか返ってこない。ロイは、意を決して浴室の扉を開ける事にした。


その扉は、開けるべきではなかったのかも知れない。
だが、扉は開けられてしまった。
扉。
これは心の扉だったのかも知れない。後になって、思えば…。


「おい!鋼の、開けるぞ」
ガラリと開けた空間は、立ち込める湯気で視界を遮られてしまう。徐々に視界が白い靄の中から
形を現していく。
ザァー、ザァーと打ち鳴らすシャワーの熱気が篭る狭い空間の中で、タイルにペタリと
座り込んだまま動こうとしない金色の少年の姿があった。
その姿にロイは一瞬、目を奪われてしまう。
何も身に着けていない白い素肌。それとは、まったく異なる鋼色の機械鎧の右腕、左脚。
先程までは、綺麗に編み込まれていた絹糸のような金糸の髪は、無造作に解かれ水分を
吸い込み肌にピタリと密着している。
項垂れたまま、シャワーを浴び続ける彼はロイの存在に気付かないのか、排水溝に流れる
水をいまだに、眺めている。そんなエドワードの様子を時が経つのを忘れたようにロイは
見つめていた。

が、しかし我を取り戻したようにロイの手は、キュッキュッとシャワーの蛇口を止める。
それから彼は、手にしたバスタオルでエドワードの身体を覆った。
眼の毒だ
――
「鋼の、大丈夫か…」
頭から覆ったパスタオルでガシガシと拭いてやるのだが。彼の反応が乏しいのが不安になる。
もう一度、声をかけて見ようかと思ったら。
エドワードが、ゆっくり貌を上げ始める。その動きは、気だるげにゆっくりと。
そして、ぼんやりと声を出す。まるで、今までのロイの存在に気付きもしなかったように。
―― 、あ!わりぃ、大佐…」
とろんとした琥珀色の瞳が、ロイの瞳とぶつかり合う。
それが合図だった。
ロイは、自分が濡れるのもかまわずに、彼の視線と合わせる為に濡れたタイルに膝をつき
彼の頤に手を添え上向かせ、うっすらと開かれ濡れた桜色の口唇に自分の唇を合わせる。
啄ばむように浅く、そして徐々に深く。
そして、エドワードの熱く熱をもった口腔を絡めとるように、きつく吸い上げていく。
ロイの舌先に翻弄されるが、抵抗を示さない身体。
それに、気を良くしたのか更に、ロイの舌は彼の舌を絡めて蠢く。
濡れた音と、溺れた吐息が交互に浴室内に響き渡る。
「あっ…うん…あー」
アンバランスな両肩をしっかりと掴みロイは、胸に濡れたエドワードを抱きしめ口唇をむさぼる。
何故私は。
彼にこんな事をシテイルノダロウカ。頭では、疑問符が連なっていく。
だが、もう止められない。
この感情を欲求をどうしたら良いのか、溶鉱炉で滾る鉄の塊のように。
熱い…。
ロイは、エドワードの濡れた身体をタオルで優しく包み込み、両腕で抱え上げ浴室を出た。
とまらない…。やめられない…。

かたや、何の抵抗もしないエドワードも。
熱い身体をコントロールできない。
そして、胸にあるこのもやもや、をどうする事もできなくて。
時を忘れてしまうほどに、一心不乱にシャワーの熱い湯に打たれていたのだった。
この感情をオレは知らない。
知ったら、こわれる。
痺れる頭が気持ちよさを感じさせてくれる、そして、身を任せてしまう。
ロイの愛撫に。
抵抗しようと思えばできるのに。あの路地でも、だけどできなかった。
熱いロイの濡れた舌に、自分からも舌を絡めてしまっていた。
何故、オレは…。












本当に次は濡れ場です。大佐、性欲が〜欲望が〜とまりません(笑)暴走しています♪
何だかエドの方が大人なのかな。まぁー、お互い酒飲んでますからね!

両性体の場合。(反転)
次回、マスタング大佐びっくりするの…巻。になるのだろう。
あ、― 書きたいけどたぶん「act.6か7」ぐらいまでは、ストーリーは変わらないだろうな。
それでもOKですか?
な〜んて(笑)


桜 美由紀 2005/11/8




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