TAKE OUT!から始まる恋。
act.6
……温かい。
人肌のぬくもりを感じる。
久しぶりのぬくもりだ。
うっすらと、朝焼けの光が部屋に零れ始める。
ちゅん、ちゅん、と小鳥のさえずりが、かすかに聞こえるような。
う、うん……。
温かい。やわらかい。この…腕?
むくりと、顔を上げてみるとそこには、考えられない事実が瞳に映し出されていた。
何、なんだよ ―!!!
た、た、大佐の顔がまじかに、ある。
この胸、む、胸…裸。脚が…、あ、あしが絡み合っている ―!?!
オレも裸…。
この場に誰か入ってきたら、何も言い逃れできないな。
あまりに素敵な現状に、涙が浮かぶ。
ははは…、そうだった 〜。オレは昨日大佐と――。
呆れている反面、心臓がドキドキしている。
太鼓のバチで直接、自分の胸を叩かれ音を無理やり出されている感じだ。
だけど、だけど…。
その胸に、ちょっとばかり思う。
このまま…もうチョット、という気持ちがあるような無いような。
本の少しの時間でエドワードの頭はフル回転して昨日の晩、何がここで起きたのか身を持って確認してしまった。
記憶が走馬灯のようにくるくる駆け巡る。
まだ、目覚める気配がない彼に気付かれないように、そっと身体を起こすと。
「――アッ、いっ…」
身体を裂き貫くような鈍痛がエドワードの身体を支配して呻き声が漏れてしまう。エドワードは左手で思わず漏れ出す口唇を覆う。
その痛みに耐えるように片目をつぶり、痛みの場所に近い腹をおさえる。
ああ、現実を突きつけられるように身体は正直だ。
ゴソゴソと隣でやっている気配に眠りから醒めそうな声が、ロイから漏れ出す。
「うっ……ん」
低いテノールだ。
そして、このテノールが昨晩耳元で熱い吐息を吐き出していた。それを思い出してエドワードの頬が赤く染まってしまう。
だが、とにかく彼が目覚める前に早く、早く。
ここから出なくちゃ。
ここから逃げなくちゃ。
この事は忘れなくちゃ。
思う事はそればかりで…。
エドワードは痛む身体を示唆してベッドから、そっと降りる。ペタリと床に膝をついて、慌てる彼はキョロキョロと服を探し出すのだが。
ない…。なぁい〜、どこだよ。あ、あーもう、そうだ。バスルームだ。
もう、情けないやら泣きたいやら…。
慌てまくるエドワードの様子を実は、彼より早く目覚めこの状況をどうしようか、と思い悩んでいた。ロイは、今の彼をちょっぴり笑いながら薄目で見つめていたのだ。
* * *
ロイ自身も、目覚めて見れば。
金色の長い髪が真っ白いシーツに映えるように流れている画に、まず自分の目を疑ってしまった。そして、その小さな頭をかき抱くように自分の腕が、胸が…、寄り添っていた。
その上、自分の身体が違和感を感じることなく抱きしめている。それに、どうしてこの子…鋼の、がしっくりと自分の胸に納まっているだ。
この私の、極上の胸に。
極上の女、専用の胸だったはずだ。極上の女とは、まあ自分の気に入った女性のことだが。
それなのに、何故この子が。
鋼の、が!?
手放すことが、突き放すことが、何故かできなかった。
このまま、このまま、もうしばらくと思ってしまう。
そっと彼の金色の前髪を掻きやってやると、桜色に色づく頬とひっそりと伏せられた睫毛が
ロイの瞳に入る。
「綺麗だ。睫毛まで金色なのだ…鋼の、は…」
思わず口から出てしまう声。
その声は、彼を起こさないように小さなものだったけれども。たしかに、言ってしまった。
しかし今、傍であたふたと慌てている彼をどうしたら良いのだろうか。このまま、知らんふりをしても良いものだろうか。
あああ…、どうしたら。
だが、顔を合わせても恐らく気まずい空気が、漂うだろう。
が、しかしこのままと云うのもどうだろうか。
確かに、私は彼を抱いてしまった。そして、彼は私に抱かれたのだからと。
ロイは色々迷った挙句、背後からそっと彼の名を呼んでみた。
「……鋼の、…」
「―――― !」
びくりと彼の背中が痙攣するのがわかる。
やっぱり、気まずい。
だが、あえてロイは彼に声をかける。
エドワードは、床に落ちていたバスタオルで身を隠し、そのまま振り返ることなく背後の人間に慌てるように言葉を返す。
「あ、あ…オレ、…か、かえる…。わ、わりぃー…」
震える彼の声がこの事実を受け止めているようで、いないようで。
表情が伺えないので、どう判断したらよいものだろうか。
だが、彼はバタバタとこの寝室を後にしてしまった。彼のよろつく足取りが気にはなったが、ロイはエドワードの背中を見送るしかできなかった。
彼が、その後どういう行動をとったかは、浴室からの騒々しい音でわかってしまう。
思わずクスクスと笑い声が出てしまう。もし、今彼が目の前にいるのならば、こんな事はできないだろう。
だから、今だけ彼の慌てぶりを笑っている。ロイ自身も笑える状況ではないのだから。
エドワードは激しく慌てた音を立てて、ロイの自宅のドアを閉め出て行ってしまった。
独り残された、寝室では。
ロイがベッドの上で片膝を抱えて悩んでいる。
どうしたものか、と。
「はぁ ――――― 」
深いため息が、彼の寝室に浮遊する。
なかなか、先に進もうとしない話です(汗)
桜 美由紀 2005/12/10
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