月の子






  〜 Moon Child 〜
 act.4



















2人が一緒に暮らすようになって、三ヶ月ほどたったある日。
エドワードが熱をだした。


「エド…、大丈夫かい?」
「うん〜、ちょっと風邪ひいちまった、かな」


今迄の生活で、いやこの数年間エドワードが体調を崩すという知らせは余り聞いた事が
なかった。
いつも元気で、何か体調が悪いと言う時は『食べすぎ』『トラブルに巻き込まれ負傷』
そういったケースが多かった。
一緒に同棲生活を送り始めて少々身体がだるい、熱ぽいなど、ありはしたが
珍しい事だ。


「エド、医者に診せた方がいいのでは?」


医者の言葉にエドワードは断固として首を縦に振らなかった。
医者嫌いだと以前から知ってはいたが、ここまで激しく拒否されるとは思わなかった。


「いい、診せなくてもそのうち治るから…。それより、アンタ早く仕事行けよ!」
「結構熱も高めなのだが…。ほら、アルフォンスも言っていただろ。身体が弱って
いると、だからエド」
「いやだ!ホント、治るからいい(怒)。仕事行けよ…」
「エド、私は心配なんだよ…」
「前は2人分の体力がオレの身体に備わっていたけど…。今は1人分だからだよ。
だから、前より風邪をひいたり体力がおちてダウンしたりするんだって、話しただろ」
「それは、聞いたが…ねぇ」


ロイは、あくまでも自力で治すと言い張るエドワードにこれ以上、強制することもできずに
呆れるようにため息をつく。


「仕方がないなぁー。風邪薬を飲んでゆっくり休んでるんだよ」
「わかってる、って」
「バイトには、連絡はしたかい?」


エドワードは、ロイと一緒に住み始めて暫くして、やはり家でじっとしているのが
嫌でそう長くはない時間だがバイトを始めた。
仕事は、読書好きということで図書館に勤めている。


「……まだ、です。すみません、電話してください」
―― !?まだ、してないのかね!!!はぁー、わかった電話をいれよう。
いいね!絶対に寝てるんだよ」
「そんな、怒んなくても…。はぁいー、寝てますよ!准将殿」


不貞腐れる彼の火照った額に濡れたタオルをのせるロイの姿は、軍司令部の面々が
想像できるような姿ではない。
大切な、かけがえのない人を甲斐々しく看病するロイの姿。
そんなロイの姿に不貞腐れつつも、喜びを感じるエドワードは満ちたりた愛情に
感謝し大人しくベッドの住人となっている。


ロイの帰りを心待ちに、じっと熱を発してだるい身体でベッドに伏して待つ。
彼の温かい掌が再び、頬を撫でてくれるのをじっと耐えて待っていた。




出勤間際に再度確認するようにエドワードの額に、こつりとロイの額が重ねられ
それから、ロイの頬はエドワードの紅をさした柔らかい頬にすり寄せてくる。
まるで、子供扱いだと、エドワードは憤慨していたが。
それでも、ロイの表情は小さな子猫を部屋に一人ぼっちにさせてしまう事を悔やむように
しょんぼりとしている。
一緒に連れて行きたい、と名残惜しそうに出勤していった。
出かけた後、エドワードは気付かれないようにロイの触れた全てに自分の手をあてがう。
彼の温もりを確認するように。


仕事を早めに切り上げて帰宅したロイは、エドワードの様子心配でたまらなかった。
1人でつらい思いをしてるのではと、内心仕事にも手がつかずに上の空だった為
ホークアイ大尉の銃で撃たれる寸前だった。

寝室に急ぎたどり着くと、穏やかに眠るエドワードの姿に安堵する。
彼を起こさないようにそっと、呟く。


「エド、ただいま…」


そっと頬に、首筋に、掌をあて彼の熱を確かめる。
今朝よりずいぶん熱は下がっている。安心するロイの気配に眠っていたエドワードの
瞼が、ふるふると揺れる。


「……うっん」
「エド、起こしてしまったかい?」


ぼっーと黄金の瞼を重そうに開けるエドワードの前にロイの顔が現れて
びっくりするエドワードだったが、彼の黒曜石の瞳に安心して
目を擦りながら微笑みかえす。


「うん、お帰り…」


ロイは、少し心配そうに眉をよせながらエドワードに具合を尋ねる。


「つらくはないかい…」
「うん、何だかすっきりしたかな…?寝てたから」
「そうかい。それは、良かった」
「今何時?」
「あぁ―、夕方の6時を回ったとこかな?」


その言葉に、びっくりして跳ね起きようとするエドワードをそっとベッドに
寝かしつけ言う。


「まだ、横になってていいよ!」
「えっ…、何も用意してねぇよ。マジで、よく寝た!やばー」


時のたつ早さにびっくりして黄金の髪をかきあげる、さらさらと金色の髪が肩から
落ちていく、その様にどきっとしてしまう。


「いいよ、今日ぐらいゆっくりしてなさい。夕食ができたら起こしてあげよう」
「えっー、ロイが作ってくれるの?」
「たいしたものは、作れないがね」


エドワードは嬉々とした表情を露にした。
どうしたことだろう、不思議そうに彼を見つめる。私は、何か変な事を口走っただろうかと。


「オレ起きる…」


ごそごそとベッドから起き出そうとするエドワードに、ロイはため息をつく。
どうして…、こう大人しく寝ていくれないのだろうかと。
そんなに、自分の手料理に心配でもあるのかと、反面がっかりしてしまう。


「じゃー、リビングのソファーで大人しくしてるんだよ」
「うん、わかった」


まだ、しっとりと熱の籠った背中に腕を回してエドワードの身体を起こす。
大人しく、その腕に身体を預けるエドワードはまるで子供のように小さくロイの腕に
納まってしまう。
男性にしては細すぎる身体。女性にしては骨ばった身体。
どちらとも言いがたい中性的な身体の構造に、庇護欲が湧き出る。


しめった熱い身体、肌蹴たシャツから覗き見える白い滑らかな肌にロイは欲情を
感じてしまう。
そっと首筋に顔を埋め熱くしっとりする肌に口付ける。
いけないとわかっていながらも、そして、本人が誘っているわけではないが妖艶で麗しい姿。
甘美な性情のエドワードに情欲してしまう。


「あっ、ロイっ…駄目、っ」


エドワードはロイが欲情している様に気付き、やんわりと拒否する言葉を告げる。
熱ぽっい身体に焔を炊きつけられるようで、このまま流されてしまうわけには
行かなかった。
はっと…、ロイの方も弱っているエドワードに自分の欲求を求めてしまった事に
気付いてしまい自分を恥じてしまう。


「すまない…。エド、君の姿につい…」


自分も欲しいのだけど、今の状態では身体が恐らくついてこないだろう、と自分も
わかっていたから。
でも、欲しかったのは事実、ロイの欲情をその一身に受けたかったから、その問いに、
うっとりした表情でエドワードは応える。


「うん…。オレも欲しいけど、今日は…」
「そうだね。また、身体の調子が良い時にお願いしようかな?エド」
「うん…、ごめんな」


2人は抱き合うだけで、本日の欲情をどうにか抑える。
抑え難い欲情・性欲であったのだけど…、急ぐことはなかった。
ずっと一緒にいられるのだから。
本日の晩餐は、エドワードの体調を回復させる為にロイは別の意味で手料理に腕を
振るう事となった。
それに、応えるようにエドワードも一生懸命にロイの手料理を頬張る姿がマスタング家の
食卓でみられたが、これまたロイは心配事を1つ増やしてしまった。
今度は、腹痛でも起こさなければ良いのだがと。








































まだ、まだ…甘い展開。
そして、必須パタン(病気エド)を襲うロイ!
未遂にしました♪
子作りは別に、枠とってますから、はい。
次回、「子作り編」…。
しかし、只今早朝 9時…暑い、そしてこの話も、甘い、熱い…。

桜 美由紀 2005/8/12











   
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