月の子
〜 Moon Child 〜 act.6
ロイ・マスタング准将の恋人の噂。
「やっぱ…、本命ができたらしい?」
「何々、ホントなのかー。」
「噂では、すごい美人らしいですよ?」
フュリー准将は、機械を組み立てながら皆の話に加わる。
手を休めることなく話をする彼は、生真面目な正確らしい。
「オレにも分けて欲しい。セントラルに来て長く続く、彼女がーいない!」
ハボック中尉はタバコを咥えたままうなだれる。この話を聞いて更に仕事を
する気が失せてしまったような、深いため息が漏れる。
「そうー、金髪の美人らしいぜ!」
うん?金髪の美人の言葉に、ロイ・マスタング准将の部下達は一斉にとある人物に
注目した。
「金髪の美人!!!」
「まさか…!ホークアイ大尉!?」
まぁ、彼女なら准将のお眼鏡に叶う逸材であるだろうと、皆納得して頷き始めたが。
当の本人は、我関せずと、黙々と仕事をこなしていく。
皆の視線を一辺に受けているが、この噂。真なのか…?皆が首をかしげる。
「どうも、彼女と一緒のところを目撃した軍人がいるらしい…」
「えっ、ホントか…?」
「それで、それで…」
「長い金髪で、すらっとした体系で、モデルでもしているような綺麗な子らしい」
「うーん、物的証拠がそれだけでは、少なすぎる!」
「やはり…、大尉?」
連中の噂話には、語らずに仕事を続けるホークアイ大尉、本人もまさか自分の事を
噂にされているとは、露とは知れずに准将と別件で日常会話を交わしていた。
会話内容は、あまり人に知れるとまずいらしく小声で2人は、何かを話している。
また、その様子に連中は要らぬ妄想を巡らせていた。
『やっぱり、できてるのか?この2人…』
そんな事をよそに彼ら2人の会話はまったく違った内容である。
「彼は、元気ですか?」
「いや、ちょっと最近体調を崩し気味で、なあ…」
「まぁー、そうですか?どこか…」
「以前に比べて、身体が弱くなっているんだが。それとは別のように思うのだ…」
「医者には?」
「否、あれは医者嫌いでね!心配ないと言って、バイトに通っている」
「そうですか。近々時間がありましたら伺わせて頂いても?」
「ああー、あれも喜ぶのでな!それと、明日から幼馴染のウィンリィ嬢が
うちに来る。一週間ほど、こちらに滞在するとか。あれには、ちょうどいい気晴らし
なるだろう。どうも体調がすぐれないようだから」
「まぁ、そうですか、私も会いたいですわ」
「久々に我が家もにぎやかになるかな」
楽しそうに、2人が会話をするのでやはり、軍部連中は怪しがるのであった。
そんな事とは、まったく気付かず2人は、会話を楽しんでいる。
明くる朝のマスタング家の食卓では。
いつものようにエドワードが朝食の用意をしてロイを送り出そうと朝の
ひと時を過ごしていた。
「エド、食欲は?」
「う、う〜んっ…。あんま食べたくないんだよ。なぁー」
「朝食は、きっちり採った方が身体には良いんだよ」
「わかっては、いるんだけど…」
「風邪かね?」
「うーん、そうかなぁー?」
「ちょっと、続くようだったら医者に診て貰いなさい」
「それは、い・や・だ!」
頑なに医者を嫌うエドワードに呆れるロイだった。
彼の気持ちは判らないでもなかったが。
2つの性を持つ彼の身体を好奇な目に晒される事を忌み嫌っているのだろう。
ロイは、仕方なくエドワードの額に自分の額を合わせて熱があるかどうか図ろうとする。
熱は、無いようだが。
いや、ある、ようでない。これを微熱というのだろうか。
やはり、風邪なのかとロイ自身も判断に悩む。
上目遣いに、ロイの怪訝そうな表情を見つめるエドワードだった。
うんともすんとも言わない生返事を繰り返し、エドワードは目の前にある
皿の食事をもてあます様に、食卓についていた。
最近、『食欲がない。だるい』
この事は、ロイに伝えてはいた。
だが、職場で何度か吐き気を催したり、立ち眩みを起こして休むことがあった事は、
それはロイには言えずにいた。
言えば、何かとうるさいからと。本人も食欲不振による貧血だろうと
この時は思っていたから。
「あのさぁー。今日、ウィンリィが来るってバイト終わったら向かいに行ってくる」
「わかってるよ。ああ、ホークアイ大尉も会いたいと行っていたよ!」
「うん…、伝えとく。あいつも、会いたいだろうしさ」
「いいよ。久しぶりに君も会うんだろう?」
「うん、まぁねぇ!アイツ、ウルセェーんだから、お宅訪問とかいって…」
「いいじゃないか!君の楽しそうな顔を見るのも私には、一興だよ、エド」
「サンキュー!あっ、アンタそろそろ出かけないと間に合うのかよ?」
「そうだった、ね。では、いってくるよ。エド」
ロイは、愛しい人を胸に包んで出かける。
「/// いってらっしゃい…」
毎度の事なのに、いつもなれてくれない愛しい人は、恥ずかしそうに送り出す。
また、それが初々しくてロイの眉は垂れ下がる。
絶対に、部下達には見せられないマスタング家の朝の光景。
何もかわらない平凡な朝の日常だった。
* * *
「ふぅぅぅう…やっと着いた!セントラル駅…やっぱり長かった…」
長い金髪を頭上にまとめて結い上げた、ブルーの瞳のウィンリィは背伸びをして
セントラル駅周辺で、待ち人を探している。
久しぶり会う幼馴染のエドワードを…。
半年以上も前にアルフォンスに叱咤されるように、愛しい人の元に忘れ物を
届けに行ったエドワードは、そのまま故郷のリゼンブールには帰らずに、
愛する人と一緒に暮らしている。
「まっあ…ちょっと、ひやかしてやるか!」
ウィンリィは、そんな勢いで彼らの愛の巣に突入しようとしていた。
目的は、ちゃんとあったが。
機械鎧の仕事の為、一週間ほどセントラルで部材や機材調達する為だ。
やはり、都会の方が選りすぐれた部品、道具などが手に入る為、時よりこうやって
セントラルを訪れる事にしていた。
と、エドワードはどこへやらと辺りを見回す彼女だが。
そこに、声を掛ける人が1人いた。
自分より少し濃い色の長い黄金の金髪を背に流し、すらりと長い手足に白い肌、整った
綺麗な顔立ち、何人をも引き付けてやまない金の瞳に彼女は、思わず見とれてしまう。
「エド?……」
「ウィンリィ、こっちだよ!」
以前、ぼっーとエドワードの姿に見とれるウィンリィに何んだろうと、不思議そうに
エドワードは彼女を見るが、どうも視線が違うような感じがするのだが。
「よかった…お前、迷子になるんじゃないかって思った!」
「………エド!久しぶり…びっくりした…」
やっと、まともにエドワードの姿を実感したウィンリィは、何やら慌ててしまった。
「へゃ…何にさっ……」
「う〜ん、まっいいわ!さあ、連れてって、あんた達の愛の巣へ…!」
「はぁ……!!!」
呆れた返答を思わずエドワードは返す。
勘弁してくれよ…そういう事は、…と頭を抱えるエドワードの姿に彼女は嬉々と
していた。
「アンタ達、うまくいってるんでしょ?」
唐突な言葉に、うまく返答できずに赤面してしまうエドワード。
「///…まぁ、それなりに……はぁ……」
「アル、心配してたのよ!…やっぱり行かせるんじゃなかったとか…」
「………もう、その話はいいだろ///」
「ふふふ…約一週間、楽しませてもらうわ。」
「勘弁してくれよぉ…」
ウィンリィの楽しい一週間の滞在が始まった。
が、彼女にも否、誰も予期していなかった事が、訪れようとは思いもしなかった。
嵐のように登場したウィンリィが滞在して
幾日か、たったある夜。
マスタング家に、ホークアイ大尉やグレイシアの一家が訪れた。
彼女らは、ロイとエドワード達が一緒に暮らし初めて暫くして、人知れずこの事実を
伝えた人々だ。
ロイの部下達・軍関係者には、この事実を話すと何かと五月蝿く、冷やかしの恰好の
餌食になる為にふせられていた。
久々に会える事で、誰もが楽しくその夜の晩餐を楽しむ。
面々が持ち寄ったディナーに食卓は、彩られ会話は弾んでいる。
庭に出でエドワードは、夜空を見上げていた。
「エド…何やっての!」
後ろから聞こえるウィンリィの声に振り返る。
「……星、見てんだよ…」
「ふ…ん、でもリゼンブールの方が綺麗に見えるわね!」
「まぁな…でも、この星空リゼンブールまで続いてるんだぜ!そう、思ったら
何だか、見方も違ってくるじゃん…!アルも見てっかなとかさ…」
「へゃ…アンタ意外とロマンチストなんだぁ…」
「///…もう、人が浸ってる時に…お前こそ、女の癖にデリカシーねぇーな!」
「ははは……、もう(怒)」
ウィンリィも一緒にセントラルの夜空を見上げる、決して故郷の夜空より綺麗とは
言えないが、エドワードと久しぶりに見る夜空は格別であった。
幼い頃は、3人でよく夜中まで星を見続けて首が痛くなって
次の日は3人一緒に、首を上に向かせたまま、学校に登校して笑いものになったりした。
そんな思い出を思い浮かべながら彼女は、エドワードに話しかけた。
「エド…今、幸せ…アンタ…?」
その問いに、上を向いていた顔を庭の芝生に目を落とす。
恥ずかしかった、そんな問いを彼女にされるとは思わなかったから。
でも、アルフォンスと自分の苦悩の道を最初から最後?まで、知っている彼女からの
問いに重みを感じる。
ただの幸せではない…と。
この幸せには深い意味が…全ての事が含まれていると。
「うん…オレ、幸せだよ…こわいくらいな///」
「そう……良かった…」
だが、エドワードには、1つ胸にしこりがあった。
別に望まれはしなかったが、心に少しのしこり、ほんのちょっぴり…。
全てを知るウィンリィに、ちょっとだけもらした。
「……でも、ロイに何も…返せない、与えられない…」
その言葉に、彼女はふっと笑いかける。
「いいじゃない…!それでも…」
「今、こうやって…アルとオレの肉体が戻ったのも…あの時アイツに会わなかったら
叶わなかった事だと思う…。なのに、オレこれでいいのかな…て不安なる」
「それでも、いいじゃない!今が、幸せなら…ね。」
その楽観的とも言える彼女の言葉に、エドワードは少し救われる。
そして、はにかんだ笑顔を彼女に送る。
ウィンリィは、エドーワードの微笑を見てうっとりと見つめた。
彼は、こんなに綺麗な穏やかな笑顔を向けられるだと…。
これじゃぁ…マスタングさんが、手放したくないのも判るなと思う。
「エド…アンタ、すっごく綺麗になったよ!女の私が言うんだから保証書付ね!」
「何、言ってんだよ!別に綺麗とか言われても嬉しくも何ともねぇよ!」
「ううん…綺麗だよ!エド…ねぇ、ちょっと…抱きついてもいい?」
「ちょっと、、、、何言ってんだよ!」
ウィンリィの突拍子もない申し出に慌てるエドワードだったが
彼女は勝手に勢いよく、エドワードに抱きついてきた。
その時、彼女の感覚に、はて?と疑問点が…幼い時から知っている身体は
どこへやら…?
柔らかい身体つきにウィンリィは、エドワードの身体の変化を感じた。
ロイ・マスタングの愛情と共に彼の身体は変化していったのだろうと…。
求められる性へ求める性へと変化していく。
「エド、アンタ……マスタングさんとちゃんと…Hしてる?」
「///はあ、、、ウィンリィ!?もう、勘弁してくれよ……」
「ねぇ……どうなの!」
彼女が上目遣いに、言い寄ってくるこの質問に何の意味があるのだろうか。
只の冷やかしだろうかと…頭を掻くエドワードは、耳まで真っ赤にしながら、
この幼馴染の質問に小声で頷く。
「……うん…」
「そう……気持ちいい?どんな、抱かれ方するの…?」
「ちょっと…もう、いいだろ…」
「エド!」
もう、彼女には叶わないなぁと…ボソボソと応え始めるエドワードは尻にしかれる
亭主のようだ。
「すっげぇいいよ…///大事に抱いてくれる。壊れものでも触るように…
やさしい///…」
「そう…よかったわね。アンタの身体を大事に抱いてくれる人で…安心した」
そっとエドワードの身体から体を離しエドワードに笑いかける。
恥ずかしくて、彼女の顔を見ることができないエドワードは不貞腐れていた。
彼のそんな表情まで、美しく可愛らしく見える。
「さっ…皆の所に戻りましょうかね!エド…」
ウィンリィは、立ち上がりエドワードに手を差し伸べる。
以前とは、逆だった。
いつも彼女に手を差し伸べて導いているつもりだった、エドワードだが。
彼女も成長しているんだなと、その手を掴む。
そして、部屋に戻ろうと視線を移すとロイが、窓際で佇んでいる姿が視線に入る。
ロイの瞳には、この2人の光景がどう映ったのだろうか。
2人の幼馴染の男女の抱擁が…。
だが、ロイの顔は満面の笑みを浮かべて2人を迎えた何もかも、お見通しといった
表情で穏やかに。
今宵の夜空は、格別に美しさをましていた。
リゼンブールに匹敵するように星は瞬き、天から降ってくるように。
キラキラ、輝く。
ウィンリィ、マスタング家に乱入してきました。
しかし、彼女の登場で話は進みやすくなるかな?
幼馴染の2人の関係をちょっと書きたかった。美人、2人の抱擁。
まだ、甘いー。でも…次回は、いよいよです!
桜 美由紀 2005/8/17
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