月の子
〜 Moon Child 〜 act.7
「じゃ、今日 オレ、バイトだからさっ…留守番、宜しくウィンリィ」
「はいはい、いってらっしゃ〜〜」
「何か、気のねぇ返事だな!居候の分際で…」
早朝、この家の主であるロイ・マスタング准将を送り出した後、幼馴染達との会話から
本日は、始まった。
「…アンタもうちに、結構居候してたじゃなぁい!」
「へいへい…そうです!ウィンリィ様」
「あぁぁ、朝から…」
寝起きのウィンリィは、ボサボサ頭をガシガシとかき回していた。
うん?ウィンリィは、ちょっとした違和感を感じる。
朝から、ちゃかしているように見えるが、エドワードの様子に何か引っかかる。
「エド、アンタ調子悪いの?…顔色悪いわよ…」
「……そんな事ねぇよ…」
だが、まじまじとエドワードの様子を見ると、やはり調子が悪そうに見える。
身体が、だるそうに動いている?ため息をつきながら…?
そう言えば、マスタングさんも何かと、食事をもっと食べろと言っていたような…。
昨日も、こんな会話を2人していたような気がした。
実際エドワードの調子は本日、最悪に悪かった。
言い様のない眩暈に、吐き気に、頭痛に、気分が悪いと思われる状態が全て
体内で呻き合っていた。
取りあえず、立ち上がれない程という訳でなかったので仕事に行こうとしているのだが。
最近、ずっと続いている体調不良の為、なんだか慣れてしまったというか…。
だが、日に、日に酷くなっているのが判ってはいたが、何の病気かわからずとも
医者に診てもらう事を極端に嫌がった為に、ここまできてしまっている。
息苦しさから、ため息ばかりが漏れる。
そんな事を余り回転しない頭で考えていた。
「とにかく…じゃな…」
「あっ…うん…気をつけてね…」
いってらっしゃいと、手を振って見送ったエドワードの足取りはあまり覚束ないように
ウィンリィには、見えた。
トボトボと仕事先に出勤して、通常通りの仕事をしようとするエドワードに同僚は
一様に同じ質問をしてくる。
「…エド君、大丈夫?顔色悪いわよ…」
と、その度にエドワードは無理に作り笑いをしてかわしていく。
そして、何事も無いように普通に仕事をしていく。
無茶な事だったと、今更思うのだが、意地を張り続けた自分の不注意だからと
エドワードは、自分に言い聞かせていた。
「ふうっ……マジ、調子悪っ…うっ…」
手の甲を額に当てる、嫌な冷や汗が全身を伝っていく。
そして、激しい眩暈と一緒に吐き気を催し、近くの洗面所に駆け込んだ。
洗面所の蛇口のカランを捻り水を流しながら、咳き込み嘔吐する。
「ぐっ…うっ…はっ…えっ…おっ…え…」
腹の底から、胸の中からと、吐き気が治まらずに流れる水と共に胃の中の異物を嘔吐する。
身体が、カタカタと震えて立っていられずに洗面所のタイルに膝をついてしまう。
「ハハハ…なんだよっ…これ…っ」
余りの体調の悪さに思わず空笑いがでてしまう。
黄金の瞳は涙で潤み…苦しさにポタポタと涙が、理性とは関係なしに流れる。
空間が歪む。何なんだよと、自問自答するが。
只、最悪の体調としか言いようが無く。
「はっぁ…うっ……」
以前、治まる事がない吐き気に、胃の中の異物はもう、吐き出されてしまい
あとは、苦い胃液だけとなってしまっても嘔吐は止まなかった。
このまま、ここで仰け反っていても埒は明かず、気力で立ち上がり、仕事を
続けようと洗面所をでる。
壁つたいに手をつきながら、フラフラと歩く。
地面がフワフワと柔らかい、そんな感覚に身を委ねながら前に足を進めていくと
同僚の女性が、バタバタと走りながら背後から声を掛けてくる。
「エドく〜ん……、ごめんこの本、第一図書に持っていってくれる…うん?」
その言葉に、振り返り邪魔に落ちてくる金髪を耳にかける。
そんな、だるそうな彼の様子に、女性も心配げに声をかける。
「エドワード君、大丈夫?すっごく体調悪そうよ…?少し休んだら?」
「ははは、大丈夫だよ…ちょっと疲れてるだけ…この本?」
「うん……」
女性は、数冊の本をエドワードに渡した。
彼女から渡されたほんの数冊の本が、耐えられないほど重く感じられる。
本を抱えて目的地へと、歩を進めるが…。
現実味のない世界をフワフワ歩くようで、気持ちが悪い。
浮遊しているのか?
足が重くて進まない、抱えている本が鉛のように重い。
世界が、回りぐらぐらしてきた。
エドワードは、渇いた頭で冷静に思った。
しまった…限界…。
力を失った身体は、糸が切れるように膝から崩れていく。
バサバサという音を廊下に響かせながら、エドワードは倒れていった。
静まり返った廊下にその音は酷く響き渡り、エドワードと逆方向に歩いた女性は
振り返って彼の名前を叫んだ。
「エド…君!!!」
昼も過ぎ、時刻は午後の3時をまわっていた。
午前中から、セントラルの街で色々機械鎧の部品などを物色しに出かけていた
ウィンリィは、重い荷物を抱えながらマスタング家へ帰宅して、一服する。
喉を潤す為に、冷蔵庫の中を拝借して冷たい飲み物を手にソファにー座った所に
一本の電話鳴り響く。
広い部屋に木霊する電話の音に、ビクつくウィンリィだった。
「もう…何よ!人がやっと…お茶飲んでるのに…って、この家、誰もいないんだった」
電話に出ても良いものやら、う〜んと考えている彼女だったが
あまりに、響き渡る音に嫌気がさし、電話の受話器を手にして一気に表情が
豹変する。
「はい…?えっ……ホントですか?直ぐいきます!」
心臓によくない、内容だ。
一瞬彼女の頭をよぎった言葉は、だから言わんこっちゃ無い!
と、手厳しいものであった。
思わず再度、内容を聞き返そうかと思ったが、身体の方が先に行動してしまった。
電話の内容は、エドワードが倒れたと…。
ウィンリィは、エドワードの仕事先へ、取る物も取り敢えずに駆け出した。
タクシーを拾い言われた場所へ駆けつけた時には、日も暮れ始めていた。
「すみません!あの〜」
彼女は、図書館の受付で、しどろもどろに尋ねる。
受付の女性が、素早く気付いてくれてエドワードの所へ連れていってくれたが、
彼の様子を目の前にして愕然としてしまう。
ウィンリィは、休憩室のソファーに横たえられたエドワードの傍に寄る。
力なくソファーに寝かされ毛布をかけられたエドワードの顔色は、紙のように白く
乱れた黄金の髪が顔にかかっていて更に、儚げに見える。
苦しいのだろう眉を寄せて瞳を閉じ、ぎゅっと苦しさに耐えるように毛布を
握り締めている指先は白くなっている。
カチャリとウィンリィの後から部屋に入ってきた人物が、説明を始める。
「ごめんなさいね。エド君、最近体調悪かったみたいで倒れちゃって…さっきまで
もどしたりしてたけど…何か、凄く悪そうなのよ…。もう、起き上がれないみたいで…」
「すみません…、ご迷惑かけちゃって…」
「いいのよ…、こちらこそ無理に色々仕事頼んじゃったり…最近忙しかったから…」
エドワードは、頭上で会話する声が聞こえる。
聞き慣れた幼馴染の声が、朧に耳に届き、声の主を見ようと瞳を開けようとする。
うっすらと黄金の瞳が開くが、瞳の奥はチカチカと未だに点滅している。
ぎゅっと…再度強く瞳を閉じて、もう一度開く。
視線の先には、心配そうに覗くブルーの瞳と目が合った。
「ウィンリィ……?」
「エド……、心配したよ…?わかる…」
「うん…ごめん、ちょっと…限界…」
「うん、わかったから…家に帰って休もう…」
「うん……」
ウィンリィが、そっとエドワードの乱れた髪梳いていく。癖のない綺麗な髪を優しく
撫でていく。
それに、安心するように、そっと…息を吐くエドワードの弱った姿に、ウィンリィの胸に何かが
ひっかかり…それが何かが、確信できなくて胸の中で螺旋していくウィンリィだった。
「すみません…電話貸して貰えますか?」
「どうぞ……、ちょっとこの状態で帰るのは?無理じゃないかしら…」
「そうですね!人を呼びます。私じゃ、エドを抱えられないから…」
その会話に、エドワードは嫌な予感がした。
まさか…アイツに電話するんじゃないだろうかと、たぶんそうだろうと、思ったが
一応、エドワードは弱々しくウィンリィに聞いてみる。
「……ウィンリィ…アイツ、…呼ぶのかよ?…はぁ…っ」
瞳を手で覆いながら、ウィンリィに尋ねる姿は、体調の悪さと体裁の悪さの両方が
彼の胸中で、葛藤しているようだ。
「そうよ…仕方ないじゃない…、アンタが意地張ってるのが…悪いんだから!」
「…………っ…更に、気分わる〜」
ウィンリィは、別室に電話をかけに出て行く。
ふうーと、重い吐息を吐くと同時に…。
「……うっ…」
少し治まりかけていた吐き気が、また催してきて手の平で口元を押さえ
もう、片手で胸を掻き毟るように掴み苦しげに嗚咽を繰り返す。
その様子に、部屋に残っていた女性が心配そうに背中を擦ってくれる。
「大丈夫?……エド君…」
もう、何度もこの言葉を聞かされていた。飽きること無く…だが、その問いに
頷く事も出来なかった。
もどしても、もどしても、嘔吐は治まらない。
もう、吐き出すものはないのに…嗚咽と一緒に、涙まで零れてくる。
「ハァハァハァ…うっ……」
こんな所、今、ロイが見たら卒倒するだろうとか、ウィンリィに見られたら
一生ネタにされるなど…少し、明るめに思考を持っていこうと…少しでも、
この苦痛から解放されるようにと…エドワードは願った。
「はい、外線から。えぇー、知っているわ。こちらに、繋いでください!」
淡々とした口調で、電話の交換を頼むホークアイ大尉。
「はい、こちら…あら、どうしたの?先日は、楽しかったわ!えっ…そうなの…
すぐかわるわね…!」
「マスタング准将、外線よりお電話です!」
内勤で、司令部にいた人物達が、素早く電話の内容に聞き耳を立てる。
どうもホークアイ大尉の知り合いからの電話らしい?…それで、…と。
一斉に司令部内は、静まり返る。
緊急の仕事でもないのに、この部署はどうして、こうも私的な事に首を突っ込むのだろう。
まだ、こちら配属になって間もない者達は、この奇怪な行動に首をかしげる。
そんなに、他人の事が気になるのか!と、激を飛ばしたい事この上ない連中だ。
「誰だね?」
その問いに、ホークアイ大尉は上司の傍により耳元で囁く。
また、急接近する彼らの行動を、嬉々として視線を送る連中を尻目に
ロイの表情は、厳しいものに変わる。
そして、すぐさま受話器を手に取った。
「もしもし、私だか…!何…!わかったすぐに向かう、そこにいなさい。いいね!」
短い会話が終わり電話は、切られた。
早い…。
バタバタと机の書類を片付ける准将の姿に、唖然とする面々だった。
「ホークアイ大尉、私は早退する。後のことは頼む!」
「はぁ、…どうされたのですか?」
その後の会話は、また2人こそこそと耳元で囁いた会話。
どうせ、俺達は仲間には入れて貰えないんだ!と…、変な方向へと考える司令部の連中。
これで、また色々憶測が、この連中の間で交わされる事となるのだが。
ロイは軍服の姿のまま、エドワードの仕事先に現れた。
息を切らして、いかにも走って来ましたと…言わんばかりだ。
予期していなかった事が、起こった為である。
今迄、こんな事は一度たりともなかった、いつもエドワードは、元気で…という概念が
ロイの胸にあったから。
それは、とくに2人で暮らすようになってからもである。
多少の風邪は、ありはしたが、まさか倒れるなどとは想像もつかなったから。
「すまない…ここに…、エドワードが…」
勢いよく、事の次第を尋ねる姿に、受付の女性はあたふたとしている。
それもそのはず、軍人がそれも、その階級は…トップクラス、軍服の飾りが物語っている。
事情をよく知らない女性は慌てる一方で、中々次に進めないでいる。
その間、イライラが頂点に達しようとしていたロイは、どうにかこうにか部屋に
案内された。
しかし、彼は目立つ存在だ。
その容姿は、淑女を虜にする。また、軍人の階級の高さに皆の視線を一心に
受けていたが、そんな事ロイには、まったく関係のないことであったが。
愛しい大切な人が倒れてしまったという緊急事態に、彼の気持ちは焦っている。
そして、思わず扉を開ける手に力がこもってしまう。
凄い形相で、休憩室に入ってきた。
その形相と、まさかこんな人が迎えに来るとはと思いもよらず、その場にいた人は
唖然としてしまった。
しかし、約一名平常心で、受け応えるウィンリィの姿があったが。
「あっ…すみません、マスタングさん」
「いや、こちらこそ迷惑かけた!でっ…」
ソファにぐったりと横たわり、苦痛に耐えているエドワードの様子を見て、
ロイは辺り構わず跪き、力を失ってかたく瞳を閉ざしているエドワードの頬に
そっと触れる。
エドワードは、覚えのある手の感触にゆっくりと瞳を開いていく。
泪目の黄金色の瞳を数度瞬き、力なくロイの姿を確認して安堵するように
ほっと息をつく。
できるだけ優しくエドワードに声を掛ける、決して叱ったりしない。
本当は、我慢するのもいい加減にしろ、と言いたかったのだが…。
ロイは、目の前で、こんなに弱りきって疲れ果てているエドワードの姿を、見たら
その気も失せてしまった。
「エド…どうした。吐き気が治まらないのかい…」
その低く耳に届く聞き慣れた声に、そっと頷く。
もう、嘘をつく必要はなかったし、意地を張る必要も気力もなかった。
自己嫌悪に陥っていたエドワードは、素直に頷くしかない。
「………ごめん…っ…」
声は枯れていて、喋るのも億劫で、短く切れ々に応える。
視線は虚ろにロイを見つめてはいたが、瞼が閉じそうでたまらない。
「うん、わかった…帰ろう…」
寝乱れた軟らかい黄金の髪の頭をゆっくりと撫で、ロイはその場にいた女性に
視線を向け、ここで始めて挨拶と礼を述べる。
やはり、この外面がよいはずの男が、よっぽど慌てていたらしい。
「私は、国軍准将のロイ・マスタングと言います。今回は、エドワードが大変ご迷惑
をかけまして…申し訳ない。本日は連れて帰ります。恐らく2、3日仕事の方は
休ませると思いますので…ご了承ください」
「…あっはい…わかりました。お大事に…」
と、女性はロイに言葉を返すが、心此処に在らずといった雰囲気だ。
ぺらぺらと話すロイは、女性にとって憧れの的となる存在である。
会話を交わした女性は、頬を染め浮かれている。
理想の男性に出会ってしまったというような瞳をしていたのだ。
用件を端的に話したあと、ロイはエドワードの背中と膝裏に腕をまわし、軽々と横抱きに
そして、大切そうに抱いて、この部屋をあとにした。
ウィンリィは、その場にいた人々に再度お礼を述べ、
憧れの王子様のような存在の人の後を、ちょこちょこと追っていった。
王子様は、それは、それは大切にお姫様を抱きかかえて、待たせてあったタクシーへと
乗り込んでいく。
当のお姫様であるエドワードは、ぐったりと王子様の胸に抱かれているが、車に揺られながら
マスタング家へ帰宅する途中も、エドワードは嘔吐しようとする。
彼の具合の悪さに、ロイとウィンリィは心配を募らせる。
自宅に到着してからエドワードを、ゆっくりできるベッドへ寝かせるが、
体調は依然として回復する気配がなく、つらそうにしているエドワードの背中を
優しくさすってやるロイの姿をウィンリィは見ていた。
ウィンリィは、ソファーに座って静かに彼が、この部屋に戻ってくるのを待っていた。
少し、彼に話したいことがあったから。
だが、これは自分の予想なので…と色々考えあぐねていたのだが。
静かなリビング、いつもはエドワードが騒々しいぐらい声を立てていたのに。
今は、主をなくして静かに静まり返っている。
ロイが寝室から出てきて、リビングのソファーに腰を下ろす。
何とも言い難い表情をして。
「エドの様子は…?」
「今少し、眠っている。だが、どうも眠りが浅いようで…」
「図書館の人と少し、あなたが来る間、話していたんですが…エドかなり前から体調
崩してたみたいって…」
「ああ…私も、気になっていたのだが…。エドは、医者に診せようとしないから…」
ウィンリィは、密かに心に思う事をロイに話すべきか、タイミングを考えていた。
言うべきか、どうか?いまだに、考えていたが意を決して話してみた。
「あの……私もよくわからないんですが、エド…妊娠してるんじゃないかって」
その「妊娠」という言葉にロイは、困惑した表情を露にする。
彼女は、今何と言ったのだろうかと、もう一度、その言葉を聞きたかった。
だが、頭の中が色々混乱して、何が、どうしてと…。
そうだ!エドは、わからないと良くいっていた…、何が…ぐるぐる色んな事が思い出される。
「あのー。部屋で、エドに聞いたんです…。生理ちゃんときてるかって…思わず…」
「………そしたら、、、エドは何て…」
ロイは、身を乗り出すようにウィンリィに聞き返す。
彼にとって、エドの妊娠はどういう存在なのだろう?とウィンリィは思っていた。
邪魔な存在なのか、それとも願っているのか奇跡を…本人にしか、わからない…。
今は、それを聞くべきか、どうかさえ判断に悩む問題だ。
「不順だがら…わからないって…それだけ…」
「……そうか」
その時の彼の落胆ぶりは、後世に伝えられる程だった。
その表情に、ウィンリィは聞いてみても良いかなと…。ふと、心に何かが、浮かび上がる。
だから、思い切って彼に尋ねてみた。
まだ、何も確証がない雲の上のような話だが。
「あの……マスタングさん、エドにもし、もしもですよ…子供ができたら…本当に
もしもですけど…嬉しいですか…?」
本当に、くどい程、雲の上の話をするので、ウィンリィは何度も「もしも」と言う言葉をつける
が、しかし…彼からの返答は…。
しっかり受け止めた言葉が返ってきて彼女の方が、びっくりしてしまった。
「ああ…嬉しいよ、産んで欲しいと思う正直な思いだ!だが、私は多くは望まないよ…」
その時の彼の表情は、すごく素敵だった。
今迄見た、出会った男性の中で一番だとウィンリィは見とれてしまった。
思わず自分の頬が赤く染まるのが判る。
夢が叶ったような少年のような眼差しだ、とウィンリィは思う。
ウィンリィは、エドワードの身体について今まで深く話す事はなかったが、
自分の知ってる情報を彼に、話しても良いだろうと判断した。
「そうですか…、エドの身体の事…知ってますよね?」
「もちろんだよ…」
「未知なんですよ…。ばっちゃんが言ってました。」
「未知?」
「エドの身体、すごく柔らかくなったと思いませんか?そう、女性らしい丸みを
帯びたと…」
思い当たる節があるロイは、片肘をつき顎をのせ考えてみた、
男性にしては、細い身体。女性にしては、骨ばった身体。
だが、最近柔らかくなったと…。とても綺麗で艶かしくて少し丸みを帯び、さらっと
しているが、しっとりする肌は男の欲求を増幅させ、濡れる身体が欲望を
やんわりと包み込む。
夜の情事の事を思い出すと、こちらまで身体が、火照ってくるようで…。
ウィンリィの熱心に問う表情をまっすぐに見れなくなってしまう。
「///…たしかに…。そうだが…」
「昔、まだ10歳だったかな。その位の時にエドを街の医者に診せたことが、
あったんです…。先々、大事なことだろうからって…無理やり、まぁ色々見世物ぽく
…凄く嫌な目にあったらしくて…それが元で医者に身体を診せるの極端に
嫌がるんですよエド…」
「……そうかい、だからか…薄々感じていたのだが…」
ウィンリィは、自分の膝に手をぐっと押しあて意を決して話す。
「医者は、まだ、現段階では判らないとの事だったそうです。この意味判りますよね…
マスタングさん、ゼロじゃないんです…。だからって思って…」
「ありがとう。ウィンリィよく話してくれたね。感謝するよ…。そう、ゼロではないか…」
「はい…」
2人は、静かにテーブルの上の冷めたコーヒーを見つめていた
飲むために用意されていたコーヒーは、2人の話をじっと聞くように佇んでいる。
どうしたものだろうかと…。
兎に角、医者に診せなければエドワードの体調は回復しないだろう事はよく判っている。
暫しの沈黙のあと、ロイはウィンリィに声をかける。
「明日、病院に連れて行こう…。だが、私にもどこの医者に診せていいやら…と」
「そうですね。とにかく医者に診せないと…でも、誰か信頼できる医者は、いませんか?」
「ううん……率直な話、私もこの手の病院は苦手で……」
天井を見上げるロイであった、総合病院が良いのだろうか?それとも産婦人科か?
最初から産婦人科?というのも…エドは絶対抵抗するだろうし…。
「あの…どなたか、経験のある方とかに聞いてみるとか…?」
「そうだねぇ…経験、ううん……やはり、私の周りには、その…///。」
「はぁ、そうですね。あっ!います!グレイシアさんに相談してみるのは?」
2人とも目の前に路が開かれつつある。
そして、目を輝かせる。
「そうだな!彼女なら…さっそく連絡してみよう。ありがとうウィンリィ…」
「いえ……結局、病院ですね!」
一先ず、明日の予定が決まりつつあった。
もう、夜も遅くなり明日に備えて2人は休むことにする。
ロイは、寝室に戻り、寝苦しそうに眉をよせ眠るエドの耳元にそっと呟いた。
「明日、病院へ行こう。エド…」
彼が眠るベッドに添い寝するようにロイは、もぐり込み彼の身体を優しく包んだ。
少し熱ぽい身体を丸めて眠る、エドワードを包み込んで…。
夜中に何度か苦しく喘ぐ彼の背中を擦りながら、ロイは彼の眠りを見守って
夜を過ごした。
さて、やっと「エドにロイ・マスタングの赤ちゃんを産ませよう」企画内容に…
入ってきました。すみません(汗)早くーと、待ってた方…。
一応、「全16話」に設定してみました。ほぼ、書き終わったのですが…
他にも色々書きたい「エピソード」があって…どうしようと考え中です☆
「月の子 7&8話」ちょっとシリアス系なので壁紙をブルーにしてみました。
さて、どうなる次回…です!
注意:桜、赤ちゃんを産める年齢ですが、経験がありません(汗)
なので、医学的内容はアバウトです。?と思ってもスルーしちゃって下さいませ。
桜 美由紀 2005/8/19
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