月の子
〜 Moon Child 〜 act.15 後編
夜も更け辺りは静まりかえる。
家も、外もシーンと夜の音だけが響く。
ベッドサイドのランプの灯だけを残してエドワードは寝室の広いベッドに1人佇んでいた。
何をするわけもなくこの寝室の主を待っている。
漸く、ガチャリと扉が開かれた。主が戻ってきたのである。
入浴後の乾いていない黒髪を拭きながら、ベッドにまだ休んでいないエドワードに低いけど、よく通る声で尋ねる。
「どうしたんだい。先に寝ていなさいって」
「う〜ん。昼間、昼寝しちゃって眼がさえた」
「…だけど、横になっていたほうがいいよ。エド」
エドワードは、ベッドの上で両脚を抱え込んで膝に顎を乗せている。琥珀色の瞳はロイに何かを強請るように向けられていた。何か言いた気に…。だけど、きっかけが…。エドワードの口唇がパクパクと開かれては閉じられる。
そんな彼の様子に気付いて、ロイはベッドに上がり膝を抱えるエドワードを背後からふわりと抱きしめる。
ほのかな石鹸の匂いが、エドワードの鼻を掠めていく。
「どうした…エド」
「――、あの…」
背後から抱きつかれたので、ロイの瞳を見なくていいと思うと言えそうで。だけど、こんな事言ったらオレは、と恥ずかしさがエドワードの胸を駆け巡る。
「あの〜/// オレがいったんじゃないんだよ。…だから…そのっ」
「うん?」
エドワードの白いうなじに顔を埋めながらロイは、言葉を待っている。
「ジー様が、、、その〜安定期に入ったから…していいって」
「何を…?」
絶対コイツわかっているのに惚けやがって第一顔がにやけている。
もぉ〜、とエドワードの胸はバクバクしながらも言葉を必死に選んでロイに話す。
「その〜抱いてもらえって言われた///」
「………」
「身体の調子がいい時はやっていいて〜。その方がオレは、いいんだって身体のバランスに、ホルモンがどうのとかって…///。もう…」
あまりの恥かしさに思わず早口になってしまう。
あの診察室で、医師に言われたときも相当熱くなってしまったけれど、更に身体が火照ってしまった。
エドワードは診察室でジー様に言われた場面を思い出してしまった。
ジー様はこんな風に言いやがった。
『大事に抱いてもらいなさい』と、頭を撫で撫でされてしまった。
勘弁してくれーと、思い出したらもっと熱くなった。
ロイは、真っ赤になっているエドワードの横髪を掬い上げて耳元に囁く。
「では、エド。身体の調子はどうだい?今日は…」
ドキッとするほど艶のある声で囁かれ、エドワードの身体の芯が痺れる。そして、囁きながらロイの手はシャツのボタンを1つ、1つ、外していくエドワードの回答を待つことなく。
エドワードも流される自分に気付く。
「あっ、ロイ優しく…て、いわれた…」
恥ずかしくて、どうにかなりそうだ。
だけど、この感覚に身を任せるのは久しぶりで身体が自然と震える。
「いいよ。嬉しいよエド。君の身体をずっと抱きたかった…」
「……うん。ごめんっ、ずっとオレも欲しかった、から…」
「いいのだよ。それより恥ずかしかったのだろう」
「そんな、わかってんだったら―― ///」
「ははは…。君のそんな姿が、私を欲情させるな」
何となく言いたい事がわかってきたロイだったが、あんまり一所懸命にモゴモゴと言いにくい言葉を選んでいるエドワードが初々しくて暫く楽しんでいた。
エドワードがロイを望んで、身体が情欲している。それが、嬉しくてたまらない。
その証拠にエドワードの秘処はしっとりともう濡れ始めている。背後からエドワードの成長している胸に触れると小さな囀りが漏れ出す。
「あっ…、そこやっ…恥ずかしい…」
「恥ずかしがることはないよ。可愛いよ。エド綺麗な形をしているよ」
「気持ち悪くないの、いっ…」
「そんなことはないよ。エドは、エドだよ。痛いのかい」
「ちよっと、痛い…」
「すまない。優しく触るよ。エド」
ロイの掌は優しく撫でるように胸を弄び徐々に下腹部へ降りていき、ある一点でふと止まると優しく掌をあて、こう語る。
「ごめんね。ちょっとうるさいかもしれないけど…。そっとするから」
「ロイ、赤ちゃんに言っているのか?」
「そうだよ」
にこやかに、お腹の子に向かって微笑みかけるロイにエドワードの胸は張り裂けそうに、嬉しくて、この男を愛して良かったと改めて思った。ふと気付けば嬉しさのあまり涙が零れてしまった。
「ロイ、ありがとうな。赤ちゃんを愛してくれて」
背後にいるロイに顔を寄せ、エドワードは愛情を込めてロイに口付ける。
角度をかえ、何度も何度も深く舌を絡めあって口付けを交わしていく。ロイの掌はエドワードのパジャマと下着をするりと脱がしていく。細く白い脚が露になり、その柔らかい内股を撫で蜜が流れる場所へとたどり着く。
「大丈夫かい…?」
「う、うん。久しぶりだから…」
欲望を象徴するように、ロイの幹がエドワードの背後で熱く雄々しく成長しているのがわかる。それにちょっぴり戸惑ってしまう。ロイがオレに欲情してくれているのが嬉しい。
だけど、それが恥ずかしくて。
それでも抑えられない欲情に素直に従うエドワードだった。
ゆっくりとロイの掌は、エドワードの内股を滑りその中央へと導かれていく。エドワードの少年の証はもう既にそそり立ちロイの掌が優しく上下してやると涙を垂らして濡れていく。
久しぶりの熱い快楽にエドワードの口唇からは絶え間なく鳴き声が漏れる。少年の証と、少女のようにまだ小さな柔らかな胸。両方をロイの掌が愛撫していく。身体はロイの胸に反り返るように預けていく。
「あ、ああ…。もう駄目…ロイ」
「エド綺麗だよ。ほら、もうこんなに濡れている…」
「う、う〜ん。ヤダよ。そんなオレ恥ずかしくてこの体勢ヤダ…、見える」
エドワードがいやいやと首を振る。
そう背後から抱きすくめられているので自分の失態がありのままに見られている。そんなエドワードが愛らしくて堪らなかったが、ロイはゆっくりと彼の身体をベッドへと仰向けにする。エドワードの恍惚とした表情がロイの黒真珠の瞳に映し出される。顔も身体も薄紅色に色づいたエドワードの色気はロイの禁欲生活で堪っていた欲望を吐き出したくて我慢できなくなる。まだまだ、ゆっくりと身体を解して十分に快楽を与えてからと思っていたのだが、自分の方が性急になってしまう。ロイはエドワードの右手を自分の欲望の証に触れさせる。熱い肉棒がドクドクと脈打つのがわかる。
「あっ…え、すごい熱いよ。ロイの…///」
「すまない、君の中に早く入りたがっている。いいかい…」
「///あ、うん…。オレも欲しい…ロイが」
返事の変わりにロイはエドワードの桜色に濡れた口唇に自分の口唇を重ねる。始めはそっと重なるだけ、そしてゆっくりと口腔の中に舌を侵入させていく。ロイの両手は彼の両脚を大きく広げさせていく。内股をなぞり、その中央でしとどに濡れている秘処にゆっくりとロイの長い指を1本から2本へと中に入っていく。その中は熱くとろけそうだ。くちゅくちゅと音を奏でながらエドワードの秘処はロイの熱くそそり立つ物を待っている。
ゆっくり指を抜いて。
「エド、大きく息を吐いて。辛かったらすぐに言うのだよ」
「あっ、あん…。うん〜」
「ゆっくり入れるから…」
そう言うと熱く猛々しい物がエドワードの中にゆっくりと侵入していく。ロイはエドワードの金色の小さな頭と肩を掻き抱いた。大切な人をこの手に。
そして、エドワードは満たされていく。熱い、でも、とても気持ちが良い。久しぶりだというのにその場所はしっくりとロイの熱い物を飲み込んでいく。
時間を掛けて全てを納めた後に。
「動いてもいいかい。エド…」
「あ、あん…。うん、ロイの入ってる?」
「そうだよ。君の中に居るよ」
汗で張り付いた金髪の前髪を優しく梳いてやりなが、額にキスをする。そして、ゆっくりとロイの腰は浅く深く律動を繰り返していく。濡れるその場所がロイの欲望を包み込み離そうとしない。きつく、滑るように締め付けるエドワードの秘処が堪らない快感をロイに与え続ける。エドワードは快楽を感じるだけの動物のように小さな喘ぎ声を漏らし続ける。
必死にロイの背にしがみ付き、自分の屹立した物が更なる快感を強請るように恥ずかしそうにロイの身体に摺り寄せられている。
「ヤ、もう駄目…。ロイいく…」
「はっ…、いいよ。エド一緒にいこう」
2人は激しい荒波を泳ぐように岸へといく。激しく波打つ腰の動きにエドワードの腰も勝手に律動を繰り返す。荒波に揉まれる中でふと、ロイの手が緩やかに膨らんでいる下腹を摩る。そんな仕草の1つでも快感と嬉しさに変化していく。
エドワードはひと際高い声色で絶頂へ上り詰めると、それと同時にロイがささやかな呻き声を上げてエドワードの中に熱い体液を注ぎこんだ。
深夜の部屋に2人の熱い吐息が繰り返される。
ロイはエドワードのお腹に負担が掛からないように、ごろりと横に身体を移動すると。ゆっくりと呼吸を整えて。エドワードの長い金糸の髪を梳いてやる。
「エド…、大丈夫かい」
まだ、呼吸の整わない彼の背をゆっくりと摩りながら、一緒に2人の大切なお腹を撫でる。
「ハァハァ…う、ん…。大丈夫…」
「じゃあ、気持ち良かったかい」
「へ、///…うん。ロイは…」
「ああ、良かったよ。ちょっと理性が飛んでしまった…」
こつり、とロイの額がエドワードに合わさる。
するとにっこりとエドワードはロイに微笑を返し、ロイの胸にその額を摺り寄せていく。
「あのな、ロイにすごく大切にして貰っているのわかっているけど…」
「ん、どうした」
「身体で感じる事を忘れてた…」
「ああ…、こうやってかい」
「うん。だから今すげぇー嬉しい。オレ…」
「私もだよ。エドワード…」
ロイはエドワードの身体を優しく抱きしめる。
そして、彼の耳元で艶のある低い声色で囁くのであった。
「まだ、続きをしてもいいかい…」
その声色にぽっと赤くなりつつも、エドワードは彼の胸に表情を隠しながら、こくりと頷くのであった。
2人の熱い官能の逢瀬は時が経つのを忘れて続けられた。
* * *
朝日が、部屋に満ちる。
ロイにとって久々に清々しい朝がやって来た。
昨夜の余韻を残すかのように隣で眠っている愛しい人は、朝の陽光に白い肌をさらしている。
金髪の長い髪が絹のようにシーツに波紋をつくる。ロイはその輝く金糸の髪を優しく梳いていく。
しっとりと滑る髪触りにこちらまで気持ちよさを感じる。何度も何度も梳いてやる。
久しぶりの情事に身体が快感についてゆかなかったのだろう。
エドワードはまだ起きる気配がない。
ロイはそっと肩口にキスを残し、この眠り姫を暫くこのまま眠らせることにした。
気付かれないようにそっとベッドを出る。
そして、聞こえていないとわかっているが呟く。
「おはようエド。今日は「赤ちゃん」と一緒にゆっくり眠っていなさい」
と、朝の挨拶をして寝室の扉を静かに閉めていく。
「あれーっ准将、おはようございます」
「ああ、おはよう。アルフォンス」
寝起きのアルフォンスがボサボサの髪でリビングにやってくる。
リビングでコーヒーを飲み、新聞に目を通すロイはとても機嫌が良いみたいだ。この時間は
いつも朝食の支度をやっている兄の姿が見当たらない。
「兄さんは…、まだ寝てるんですか?」
ロイは、朝の清々しい太陽のようなすっきりした笑顔でアルフォンスに応える。
「ああ、起きてくるまで寝かせておいてやってくれ」
「ふう〜ん。―――あっ、わかりました」
アルフォンスは、妙にすっきりしているロイに何となく思い当たる節があった。それは、昨日エドワードが散々口を濁していた事と准将のすっきりした表情で昨晩2人の間で何が行われていたのか直感してしまった。
なるほど、とにやりと口元を吊り上げて納得するのであった。その表情は小悪魔のようだ。
その後、アルフォンスがどういう行動に出たかは言わずともわかるだろう。
「後編」お待たせしました。
安定期のH編です。甘いロイエドです!ですよね(汗)
長かった、というか進まなかったです。これを途中まで書いていたのは夏の暑いさかりだよ。
次回は「クリスマス編」か「パーティー編」どちらかです。
「パーティー編」の場合は、まったく書いてないので遅くなるな(汗)
桜 美由紀 2005/11/29
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